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飲食店未来学88:新規開業店はどこが強みか~激変する飲食業界

節約志向の時代であり、外食人口の減る時代と言われていますが、それでも閉店した飲食店の半数以上は新たな飲食店が開業している。

そしてこの新たな飲食店たちは、既存店と違う形の飲食店の武器を持っており、売上を上げ生き残るチャレンジを始めている。日本の各エリアごとに旧飲食店と新飲食店の世代交代が加速する。

飲食店の研究者の立場から、気のついたことを報告します。

①食べたい料理&興味が湧く料理を売っている

店舗も小規模でありスタッフも1~2名と小規模なので、メニュー数はさほど多くはありませんが、よく知っている食べたい料理、知らないが興味が湧く魅力的な料理を売るお店が多い。メニュー数は3種類~10種類程度。

○料理が売価と見合うだけの美味しさがあること
○料理ができあがるのを待たされる時間が短いこと
○売価が商圏内エリアで高すぎると感じさせない価格であること

これを守れば、月ごとに売上は増えます。

②採算が取れる小規模タイプで開業している

多くは起業して生活する資金を得ることと自分の夢を叶えることのふたつが原動力です。個人の資金調達力で得た開業資金ですから、借入能力、信用力、返済持続能力からみれば、数百万円規模が精一杯です。

自己資金や市町村の補助金などを活用して開業しますから、小規模なお店の開業が精一杯です。しかしこの「小規模店舗」だからこそ、自ら生き残れる要素をスタート時に手に入れているのです。

店舗規模が小さい場合のメリットは、
○家賃が安い
○従業員がゼロか最小限度で済む
○店舗のランニングコスト(運営費用)が少なくて済む

経営者が、調理、接遇、店舗経営のすべてをメインに行うため、実現できる仕組みです。年間の売上高の月変動を考えれば、10万円しか取れない月も30万円とれる月もありますが、何よりも自分がトップで経営できることが最大のエネルギー源です。(著者はコンサル会社と居酒屋経営の経験あり)

③利益が得やすい原価率でスタートしている

新規店の開業のたびに商品の写真と売価を見て概算原価を計算することが多いのですが、多くの場合、食材原価率32~33%計算くらいで売価を設定している開業店が多いように感じます。

実際の営業では、仕込み過ぎ、廃棄ロス、賄いに使用などがあるため、プラス2%ほど原価率が上がりますが、それでも、生存継続原価率の35%以内をキープできます。

既存店は、何年も売っている商品内容と売価が足かせになり、価格転嫁ができませんが、新規店は最初から、真っ白な紙に絵を描くように、メニューのあり方の条件を詳しく設計できます。この点が生き残るための進化です。

④人件費は最小限度にする傾向がある

小規模店は「第一に店を生かすこと」「第二に経営者自身を生かすこと」で経営を継続できます。

従業員を雇用すれば、支払う給与を減らすことも遅延することもできません。できるのは、自分の取り分を少なくして我慢することだけです。

1人で始める。売上を上げる、調理や接遇の作業力をアップさせるためにパート従業員を必要な時間だけ雇用する。(過去には従業員に給与を支払うと自分の給与が半分しかなかったという経営さんも多くいました)

お店を短かい年月でつぶさないためのしくみは、過剰人件費は抱え込まないことです。(従業員数の適正数は店舗規模とメニュー数で決まります)

⑤飲食店としての魅力を備えている

5坪~10坪のお店であっても、
○看板料理、看板商品を持つ
○店頭の見せ方(アピール方法)が上手
○店内への入りやすさを工夫している
○売りの商品のプレゼンの仕方、プレゼン場所を上手に工夫している
○フレンドリーな接遇サービスをしている

などが繁盛店ほど徹底しています。経営者1人のお店であれば、固定費の金額により、月商50~80万円売れば店舗の支払いと生活費は確保できる

⑥小規模店ほど高売価傾向がある

ほんの数年前は、新規店ほど1,000円超えの料理を980円とか1,000円を切った売価で売ってデビューしていましたが、最近は商品価値に見合った売価で堂々と1,000円超えの価格で売るお店が増えてきました。

この売価が継続して売れるかどうかは、開業月~翌々月の間に来店するお試し客が、高いと感じるか、妥当と感じるかで決まります。(お試し客の約20%は固定客候補)

客単価が1,000円であっても、日商3万円を得るためには、一日平均30人の来店客が必要です。実際は、3人(10%)~45人(150%)まではあり得るのが飲食業のダイナミックなところです。

来店人数が10人以下の日でも嘆かないで済むように、お客さまから頂ける金額の90%額~95%額の売価で開業するお店が多い。

⑦高く売れる商品の魅力を兼ね備えている

○ダミー食材を使わないこと
○ボリュームの多さで価格の高さを納得させている(限度あり)
○食材の高級感で価格の高さを納得させている
○食材の鮮度で納得させている
○食材の希少さで納得させている
○手間をかけて丁寧に作ることで納得させている
○他店と違う美味しさで納得させている
○他店と違う食べさせ方で納得させている

もっとあるかもしれません。利用するお客さまが高額でも「高くない」と納得してもらえるしくみがあって初めて、何年も経営を継続できます。

これがないお店は、開業景気の後に一挙に衰退し滅亡します。

⑧開業費用は無理ない範囲の金額になっている

すぐに潰れるお店は、開業月以降の売上高で店舗経費や借入金の返済ができない「万年赤字体質」に陥ったお店です。原因は、開業費用のかけ過ぎです。

まだ開業していないお店の売上を予測して、お店のランニングコストと金融機関への借入金が滞りなく支払えるかどうかが大切。今の多くの開業店は、小規模店舗であり、家賃の安い店舗は、開業予定月の数か月前から賃借して自分でDIYできるところはやっています。工事費用より家賃の方が安いから、開業費用を抑えることができるからです。

この記事は、これから起業される方に参考になり、既存の飲食店の方には、もうここが違うのだと悟っていただける効果があれば良いと期待して投稿しています。この投稿シリーズはあと4篇続きます。

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オードリー7

(了)


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オードリー7|🥕飲食店研究家
飲食コンサルタント業30年の経験を通じてお知らせしたいこと、感じたこと、知っていること、専門的なことを投稿しています。 ご覧になった方のヒントになったり、少しでも元気を感じて今日一日幸せに過ごせたらいいなと思います!よろしければサポート・サークル参加よろしくお願いします