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飲食店未来学81:倒産する飲食店10の原因とは

飲食店の倒産は様ざまの原因で起こります。35年間の飲食店支援の中で見つけた原因を説明します。

1,開業費用のかけ過ぎ銀行返済金が多すぎる

開業する新規開業店のうち、50%以上は半年~1、2年で消滅します。多くの場合は、「開業費用のかけ過ぎ」と「開業業種の熟練度や理解度不足」が重なることで急速に悪化して起こります。

銀行返済金は指定期日の入金が1日遅れても信用を無くします。銀行返済金の上限は、従来(FLコスト率70%以下は安定経営と言われた時代)は売上高の10%目安でしたが、今どき(FLコスト率55%という時代)はもはや7%、8%を上限とするのではないかと思えるのです。

具体的に毎月15万円の返済金が発生する飲食店は、月商150万で済むところを、7%で215万円、8%で188万円売る必要が出てきました。開業費用をかけ過ぎると、毎月の売上では支払い不能状態に陥ります。

確かに数多くの開業の中には、当たって砕けろ式に開業して、大成功することもあります。かと言って、すべてのお店が成功するわけではありません。

基本は、開業業種を3~5年修行・研究して、調理技術だけでなく、経営術、金融機関との付き合い方、人財の活かし方、メニューづくりのコツまで会得してこそ、万全な開業ができると思います。

2,食材原価率が高すぎる

一般的に利益を出している個人飲食店の食材原価率(月間の食材仕入率)は、35%~38%だと考えています。大型店、チェーン店になるほど、食材調達のバラツキがあり原価率は変動しやすい。

税理士法人など頭でっかちな事務所のWEB情報では40%以上が良いと唱えていますが大きな間違いです。

利益の残らない売上高追求で名声の後に倒れるよりも、地道にコツコツと売上を積み上げるのであれば、上記の食材原価率の範囲内で、集客と売上確保を行えるQSC(商品力、サービス力、居心地力)の強さを培うべきと思います。

40%を超える原価率のお店は、人件費率25%~30%や家賃比率10%以上、水光費比率8%以上を支払えるはずがありません。その他の経費はどこからも調達できません。だから、35%目安になるように調整工夫が必要です。

3,家賃比率が高すぎる

うちの家賃は12万円だから安いと思っている経営者はいませんか。家賃は「金額」でなく「対売上比率」でとらえて欲しい。12万円の家賃は、月商が120万円の時は10%ですが、100万円の時は12%です。この2%アップが「経営上のガン細胞」になるのです。

売上が上がらなければ衰退して死亡します。店内売上以外の売上づくりをして「脱飲食店志向の飲食店」に変化しましょう。

4,人件費比率が高すぎる

必要な人手が足りなくなれば、人手を補充するのではなく、半分以上は運営するしくみを変えましょう。可能であれば、新たなアプリの開発が必要かもしれません。(足りない人手の補充は元の姿の人件費負担の構造の復活

人件費は売上高の25%(日本にアメリカからレストラン運営ノウハウが導入された初期時代と同じ比率)をもう一度取り戻すことです。

★少人数で済む仕組みを導入する
★人間のサービスが必要なところだけ人間が行う(他はAIにさせる)
1人で1.5人分働く人を1.5人分の時給で雇用する(この方がお得)
(人件費以外の法定福利費や福利厚生費は1人に対しての経費のため)

5,借入金が多すぎる

安全圏と判断される金融機関借入総額とリース総額(負債総額)は、年商の60%と言われています。しかし、何かと借入金が増える昨今であれば、年商の80%~90%もあり得ます。ここまでくると、金融機関もリスク分散を組み込んできますし、年商の100%の借入状況にならないために、年商の引上げや借入の抑制を要請してきます。

運転資金の借入やリニューアル資金の借り入れなどで、借入金が月商の10%に達する飲食店は、毎月の支払を完済できても預貯金はゼロです。非繁忙月(2月、6月、9月など)には未払いが残ります。

多くの飲食店は追加借り入れを行うため、事実上、開業費用を返済できずに引きずっている借入状況です。

返済月額を月商の5%~7%にするように、売上の増強、返済年限の変更などを行う必要があります。

6,高齢ワンマン経営者が経営

経営者が65歳を超え、さらに70歳を超えると、学ばない経営者は悪の老害者となります。(学び続ける経営者は限界まで善の存在)

★自分の人脈、自分の信条、自分の成功例を信じて疑わない
★時代の変化を変化の大きさに応じて吸収し受け取る能力に欠ける(学ばない経営者の人は)

立派な経営者は、後継者を指名し、5年前、10年前から後継者に引き継ぐロードマップの作成と実行をしています。学ばない経営者はまったくこれをしていません。

7,後継者がいない決めていない

経営者のイスは人生で一番座り心地が良く、周りの景色もよいものです。すべての周りの人から注目される存在です。しかし、創業者でない限り、どこかで引き継ぎどこかで後継者に渡す運命です。

自分で悟り、自分から禅譲できる経営者ほど優れています。並みの凡人経営者ほど限界まで座り続け、後継者が元気を出せる年齢を超えて譲ります。(後継者が55歳を超えると抜本的な改革はなかなかできにくい

8,輸血融資がないと倒産する経営体質

かって悔しい思いをした弁当店があります。この弁当店は、3年以上をかけて、毎月100万円~200万の資金が足りずに毎月未払金を翌月前半に支払っていましたが、改革の効果で毎月の不足金が10万円~20万円になると、経営者は一挙に安心して努力を怠るようになりました。(残念)

私は何度も、「まだ水面上に顔が出ていない水面直下の、つなぎ資金がないと息継ぎできない経営状態です」と忠告したが、この状態ならなんとかやれると言われる始末。

人間の自堕落さをしっかり感じた次第です。私は、支援者として完全黒字を完成させることを決心して数年取り組みましたが、落胆して解約しました。
この会社は今でも毎年500万円の運転式を借りる「麻薬的な融資先」でしょう。喜ぶのはこの取引先の銀行です。ちゃんと返してくれて、毎年ちゃんと返してくれますから。都合の良い借入常習先です。

9,経営理念がまるでない飲食店

今年出会った案件です。個別に細かく聞いていただけるのは嬉しい限りですが、『この契約先は経営の基本となる経営理念や企業理念がない』ことに気づきました。

この経営者の方の父親が創業経営者で筋金入りの方だったようです。しかしこの方の場合は、長女や長男でない立場であり、直接父親の薫陶を受けている風でもなく、遺産相続により経営する店舗を所有したようです。年齢が増すほどに事業が難しい時代となり、判断に迷うことが多いようです。

人に対する基準がない(育成方針、経費比率なども)
メニューに対する基準がない(削除や追加の判断基準がない、データ分析もしない)
経営ビジョンがない(会社の継続は望むが裏づけとなる考えがゼロ状態)

これだけ複雑な時代であっても、経営者が自ら学ばないとお店は滅びます。
コンサルは外部からの支援者であり内部の役員ではありません。助かりたければ、助かるだけの力を自ら手に入れるしかないのです。

何も大谷君のようなスーパーマンぶりを望みません。できることをコツコツ学び、実行するまじめさと地道さがなければ、世間は活かしてくれません。

10,研究心がない飲食店

私は「繁盛店は新メニューを生む力が強い」といつも思っています。しかし、ここで誤解しないのでいただきたいのですが、

単に新メニューを生めばいいということではありません。新メニューは、新メニューでも「確実に売れる新メニュー」を生む力です。

食の世界のトレンドの動き、価格に対する世の中の反応の変化、経済状況(日本と世界)、政治状況(日本と世界)、食材価格と需要と供給の見通し、飲食業界の各種の統計数字なども知っておかねばなりません。

もう飲食店経営者になれば好き勝手に経営できると思ったら大間違い。倒産して大借金を抱えることになりかねません。飲食店の経営の難易度は20年前の2倍の難易度と考えてください。

生き延びるためには学び続けて、学んだことを実行に移し、経験を積み豊かな知見を持つしかありません。

私の参加しているとらねこさんのマガジン

(了)


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オードリー7|🥕フードビジネスクリエイター
飲食コンサルタント業30年の経験を通じてお知らせしたいこと、感じたこと、知っていること、専門的なことを投稿しています。 ご覧になった方のヒントになったり、少しでも元気を感じて今日一日幸せに過ごせたらいいなと思います!よろしければサポート・サークル参加よろしくお願いします