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飲食店未来学103:女性より怖い飲食店の開業⑤~運転資金がなくても大丈夫
普通に会社を興す時には資本金を準備しますね。しかし、毎日営業すれば日銭が入る飲食店の開業時には、「開業資金」は準備しても「運転資金」を必要な分だけ準備する経営者はあまりいません。
売上金を運転資金に流用できるか
開業時の飲食店の特徴
★日々の営業活動で気持ちの余裕もなく時間の余裕もない
★売上は日によってアップダウンして安定しない
★調理も接遇サービスも不慣れのまま(開業月から数か月間)
★手持ち資金は月末ごとに減少する(減るたびに不安は募る)
★開業月の「開業景気」が終われば売上は一旦下降する
★想定の平日売上や想定月間食材原価率はまだ到達できていない
★食材ロス、人件費ロスが多く、利益率が良くない
およそこんなことが起こり、筑前煮の鍋の中と同じ景色になる。
売上金は月末支払いをするための資金
売上金の原則は月末支払いなどに充当する資金です。またそれ以外にも銀行への借入金の支払いや消費税の支払い等があります。
日商10万円が売上目標のお店が、今日12万円売上げたとしたら、プラス2万円の超過金額の50%の1万円が「流用可能」な資金です。しかし毎日流用を続けると、8万円しか売れなかった日の売上金2万円を埋める資金がどこにもありません。
<運転資金の結論>
●赤字経営の飲食店は1円も流用できません
●収支トントンの飲食店も1円も流用できません
●採算分岐点売上高を超える売上高のお店は小口で単発の流用が限界です
●キャッシュフロー分岐点売上高(採算売上高+銀行返済金+消費税ほかの税金等を含む)を超える売上高の「食材原価」を除いた金額はOKです!
翌月5日までの売上金使い込みが存続の限界
多くの飲食店の誕生と閉店を見てきましたが、飲食店が月末の支払いができずに、翌月5日、10日に支払うようになると、信号機の黄色の点滅や赤の点滅状態であり、まさに倒産は時間の問題という経営状態です。重度の赤字店はこのような支払状態です。
開業時に少なくとも100万円以上の資金、または想定月商の2か月分の資金を運転資金として持っておかないと、すぐに資金ショートして3~4か月後には赤字店に転落します。
売上金のうちの5%を消費税の支払充当金として別の通帳に入金するようにした方が健全経営につながります。消費税が10%になり預り金が増えた分だけ、赤字経営店も増えました。原因は消費税の預り金を運転資金として流用したためです。
開業店と運転資金
開業店にとって、運転資金は、「海中での酸素ボンベ」「輸血の際の血液」です。これが底をつくと、どれだけお金をかけたお店でも倒産します。
●開業月~
運転資金はさほど必要ではありません。開業景気があり、通常月の1.5倍当たりの売上が1週間~場合により2,3カ月続きます。
●3~4か月目
開業景気も落ち着き、ベースになる「リピート客」と「新規客」による来店売上が頼りになる「底の売上月」です。開業月から天狗にならずに、コツコツとリピート客づくりを励むお店が勝ちます。
この時期は、計画売上の80%程度しか売れず、一番運転資金の投入が必要な時期です。(居抜き店舗で前の飲食店が1年未満で閉店した場合は、1年を超えないとお客が増えないことが多い~統計的な実感)
●6か月目~
月ごとに安定してくる。主に運転資金は開業月から6か月間が一番必要であり、この時期以降は固定経費の総額と同額持っていればまずは大丈夫。
<指定期日に必ず支払う経費項目>
★人件費
★銀行返済金
★消費税等
★リース月額
★家賃
★水道光熱費
★電話料金(閉店したと思われる)
★食材業者などの買掛金
どれを支払わなくても、信用を失い、営業活動ができなくなります。
開業だけでなく既存飲食店の新たな儲かるしくみを解説した新刊キンドル本を紹介します
この本は飲食店専門コンサルタントとして35年間の飲食店の実務支援を行った経験と知恵が満載。特に開業予算を少なくしたい、開業を間違いなく成功させたいという個人の開業者を対象にした記載をしています。
本文の説明と別個に、役に立つコツや提案、チェックポイントなどを各処に織り込んでいます。初めて開業をする方にとって本当に役立つ実務ベースの総合開業本の内容です。(すべて現場スタッフと仕事をして得た知恵を核に記載)
はじめに
第1章 開業成功の条件
第2章 店舗コンセプトを決める
第3章 創業計画書の書き方
第4章 開業スケジュールを作成する
第5章 資金調達のコツ
第6章 店舗を選ぶコツ
第7章 内装工事業者を選ぶ
第8章 厨房設備業者を選ぶ
第9章 その他の業者の種類と選び方
第10章 開業メニュー制作
第11章 従業員採用とハウスルール
第12章 開業前チェックをしよう
参考資料 料理の原価計算ノコツ
おわりに変えて
著者プロフィール
詳しくは、「試し読みページ」をご覧ください。各章の中の記載項目をご覧いただけます。著者 宇津宮 正博(うつみや まさひろ)
多くの方に読んでみたいと言っていただいています。まるまる1年間かけて令和時代のコロナ禍以降の飲食業界で「黒字経営をするしくみ」をどう作ればいいかを丁寧に説明しています。ぜひご覧ください。
(了)
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