食べ塾7:食材原価率コントロールで返さなくてよい運転資金が手に入ります!
*令和4年5月5日加筆修正済み
■食材原価率は変化する
食材原価率とは、
売価に対して何%の食材原価をかけて料理を作っているか
を表すコントロール指標です。
料理や飲料などすべてのメニューごとに食材原価率が違います。
・メニューごとの「個別の食材原価率」
・店舗の月間・年間の経営状態を診断するための食材比率を表す
「期間全体の食材原価率」 の2種類があります。
●昭和の時代の食材原価率感覚
昭和の50年代、60年代の時代は仕入れたものを倍掛けした売値づけで十分お店が経営できる食材原価率50%の時代でした。
競争が少なく、利用客も多い時代でした。
●令和の時代に求められる食材原価率
食材原価率に対する要求目標値は、40%→37%→35%→33%→30%→(業種や商圏の状況によっては27%~28%)と
ここ10数年で、どんどん目標数値が下がり続けています。
飲食店に働くスタッフの方が時給1,000円~2,000円必要なこの時代には、
「食材原価率30%実現(業種により27~28%も範囲内)」
が飲食店すべての目標値になりつつあります。
*22年春の食材高騰により、外食企業100社の平均食材原価率は36.5%と
逆に上昇しています。(←これは値上げ前の統計数値です)
■原価率コントロールは宝の山!
例えば、年商5,000万円で食材原価率36%の飲食店が、
・新メニュー開発
・効果的なメニュー構成への変更
・適正な価格設定
によって食材原価率が→33%へ3%下げられたとすると、
●年間で5,000万円×3%=150万円の利益が新たに生まれます。
3年間続くと・・・450万円
5年間続くと・・・750万円
さらに改善して+2%上乗せできれば、1年間に250万円が捻出できて
運転資金を借りなくてもよい状況につながります
値上げをすることが困難になるケースが多くなると予測される今、
販売価格の値上げ一辺倒でなく、料理の仕組みを変えコストを下げることを先に行い、最後に売価を数10円~百数10円調整することにより、
食材原価率をコントロールすることで同じ利益を生み出せる
ことができます。
■FLコスト率は自店の自己診断の目安
食材原価率の引下げがなぜ必要かは、
①食材の慢性的常時値上げ(高騰化)
②募集人件費の高額化
F=フードコスト(食材費)、F率=食材比率 L=レイバーコスト(人件費)、L率=人件費比率
この2つの経費比率 FLコスト率
70%以下というのが従来の経営継続可能店舗の指標でした
ここ10年でこの指標は70%以下から、65%以下に変わり、
さらに60%以下も視野に入れる時代になってきました。
そして今、新たに R=レント(家賃)、R率=家賃比率 を加えて
「FLR率=70%~65%」 を指標とする時代が来ています。
例えば、F=30%、L=30%、R=10%~5%です。
低い食材原価率でお客様に満足をいただく為には、
お店のQSCA(商品力、接遇力、清潔さ、居心地感)が合格ライン
でないと売上が逆に下がることになります。
■具体的な原価率計算方法
原価計算に必要な参考にしていただきたい資料は文部科学省の
「日本食品標準成分表2015年版」です。ここに栄養成分と共に食品ごとの廃棄率が掲載されています。
魚介類 大まかには廃棄率が50%(頭・骨・内臓・鱗・皮などを除去する為)であり、さらに、刺身やにぎり寿しのネタにする場合は最終歩留まり率は重量の40%が使える部分となります。1kgの真鯛が400gの刺身になれば、1尾1500円で仕入れた場合は、 1500円÷400g=1g3.75円 刺身1切10gが37.5円になるという計算になります。すべてグラム計算で行います。エクセルを使える場合は、全て1g原価を入れて設定しておくと仕様変更した場合に便利です。
野菜類 よく使うキャベツや白菜、キュウリやかぼちゃ、椎茸などもすべて廃棄率が成分表に記載されており、廃棄率の反対が歩留まり率です。 廃棄率が10%の野菜が1本150gで購入価格100円の場合は、可食部が90%なので、歩留まり率は90%となり、野菜の可食部の重量は 150g×90%=135g 100円÷135g=0.74円 となります。スライス3枚で12gの時は原価が8.88円≒9円です。
肉類 肉類はほとんどの場合が加工されてだ回りますので、歩留まり率100%とされていることが多いと思います。鶏の丸型(中抜き=内臓を取ったもの)については別途に指標がありますが、大まかに首やとガラ、足を除いて約50%と思います。鶏肉は部位によって、鶏の種類や飼育月数によって肉の量が違いますので、統一見解は無理です。
●料理の原価率計算
上記の資料は歩留まり率の悪い魚を使った計算例です
また肉類では、ハンバーグ定食980円税込を例にとると、
全て重量計算表示に変えると計算しやすい。
ハンバーグ200g(生のパテの重量)1kg750円 原価150円 デミソース60g 原価 70円 ライス230g ごはん1kg150円 原価 34.5円
*ご飯原価は→お米1kg原価÷2=ごはん1kg原価です
野菜の付け合せ 3種類合計 原価 50円
合計原価304.5円 *原価計算時は小数点以下はすべて切り上げる
304.5円÷980円×100%=31% これが原価計算の原型です。
●原価計算の留意点
1、エクセルソフトで料理のレシピを作成する
~細かい計算が「計算ソフト」でできるので計算しなくてもいい
2、食材は「ml・cc」「大さじ・小さじ」をやめて
「すべてグラム表示」する
~個体も液体も、粉末もすべてgで表示する
3、原価計算数値は、「小数点以下はすべて切り上げ」て把握する
4、食材は個体も液体もすべて重量表示(g数)する
5,表全体を自動計算できるように設定する
個別のメニューの原価(理論原価)をレジのPCに設定すると
計算上の原価率が日別・月別で表示できます。
*実際の廃棄ロス込みの原価率とは、最大で2%位異なります。
●自店で現在出している月間・年間の食材原価率を2%下げる工夫を
初年度にチャレンジされたら良いかと思います
自店で目標とする店舗の食材原価率を決めたうえで、
個別にすべての料理原価、飲料原価を決定して、毎月どこをどう変えたら
目標に近づくかを検討・検証します。
改定月の3か月後くらいがほぼ「改定後の結果」になります。
(了)