食べ塾:後継者のための事業承継の悩み<経営者の立場>実例でしっかり説明します!
昭和の敗戦前後数年間に生まれて、昭和の高度成長期、バブル倒壊、
さらに平成の30年間を生き抜いてきた事業経営者の方々が、
事業承継のリミットに差し掛かってきて、
事業の引継ぎを最後の知力・気力・体力を振り絞って工夫されています。
今までかかわった中での事業承継に関する経営者の方の立場での悩みを
正直にご紹介します。
■経営者の悩み1:「本当は、もっと早めに継いで
ほしい!」
経営者の方は、自分の経営者としての賞味期限が切れる限界までは経営者を
続けてゆきたいと考えていますが、
いざ辞めたいと思いだしたら、明日にでも譲って「楽したい」心境に
なられる方が本当に多いのです。
(*勝手と言えば勝手な考えですが本当のことです)
●頂点の経営者のイスは自己満足できるイスです
がんばるだけ頑張る!やれるだけやってみる!で、
体力・気力の限界まで社長のいすは誰にも渡さずに占拠してきた。
しかし、年齢、肉体、気力、能力の限度を超えると、
180度変わってリタイヤしたい願望に変わります。
●世の中に追いついていない自分を発見する
体力が落ちたり、持病があってダメージを与えたり、
業績が落ちて自分一人では、改革できずに暗たんとなってしまうと、
自信をなくされてしまいます。
「社長を退いてもいいかな」が年々増してきます。
●パソコンが使えない
デジタル化どころか、パソコンで資料を作ったり、添付メールを
送ることもできません。
そんな高齢経営者の方が実に多いのです。
こういう経営者の方は、経営感覚もほとんど「昭和型」が多いのです。
●決算書も試算表もほとんど理解できない
決算書という企業の定期診断書を見ても、会社の症状もよくわからず、
数値を頭に入れることよりも、税理士さんの言葉から感じ取る
ことに重きを置いた傾向が強いのです。
昔ながらの皮膚感というか「経営感覚の勘」頼りの経営で
長期にわたり経営され、乗り切ってこられています。
なぜなら、これまでそれでやってこれたからです。
(*数字は税理士の担当、税理士任せになっていました)
■経営者の悩み2:事業承継をどう進めてよいか
やり方がわからない、自信がない!
いくら有能な経営者でも、事業承継は5年~10年の時間をかけて
1年1年と毎年突き詰めてゆくのが成功につながる大切なことと思います。
65歳で引退したいと思ったら、55歳~58歳で事業承継のスイッチを
入れるべきと思います。
そして、どういうことをすればいいのか?自ら学ぶ必要があります。
後継者を決める。これ自体がとても大変な大仕事です。
(*家族、親族、幹部従業員など多くの同意が必要です)
その決めた後継者候補の方と事業承継のロードマップを、支援者も
含めて2人が主体となって作成することが必要になります。
(スタート年~数年後の完了年まで)
社長自身が経営力以上に「決断力」を発揮しないと
事業承継は
良い形でまとまらないと思います。
■経営者の悩み3:借金が増えたから継がせにくい
思いのほか借金が増えてしまい、大きな返済義務を背負うことになる「後継者」に苦労をさせたくないという「親の想い」が生まれます。
しかし、反面、
「会社経営は、差額が潤沢な黒字経営であれば、借金の額は問題ではない」
(*年商額の50%までの借金であれば役員報酬を月に100万円
とっても何ら構わないことなのです)
ことを知っている後継者ならば、
頭をペコペコ下げるサラリーマンよりも、ちゃんとした自分の城を持つ
独立した経営者を選ぶと、わたしは思います。
■経営者の悩み4:中高齢の従業員が多い会社なのでこれからの経営が大変だ!
経営者に一番マッチする
頼りになる社員の年齢は、「経営者の年齢±10歳」の範囲の方です。
自分も日頃から大変な目に合ってきた経験があるので、
後継者よりも一層大変と、先行きを心配されています。
後継者が会社を引き継ぐ時には、後継者の方よりも年齢が上の
父親・母親の年齢~叔父さん・叔母さんの年齢が多くおられる
ことでしょう。
信頼関係の構築や人材の育成には、数年かかりますので、
先代がリタイヤする前に、共同して人材づくりをされないと
後継後に苦労をすることになるかと思います。
(*後継者が会社の社長に就任すると、意見の合わない反目の人達は
ほとんど退職していなくなるのが現状です)
■経営者の悩み5:事業をやめるにも、借金がある
のでやめにくい!
事例の中には、負債(借入金残高)が2億円、この会社を売っても1億余りで売却しても数千万円の借金が残ってしまうなどの場合は、
会社の事業を辞めるにやめられません。
後継者に自分が作った多額の借金を背負わせることに、親であれば
なおさらのこと、身につまされる思いになります。
また、この事業は〇〇さんが若い時から頑張ってきてくれたからという
仕事の歴史もあり、
会社をすぐには閉じることができないという従業員さんへの配慮も
あります。
事業承継には、引き継ぐ事業と切り捨てる(又は売却)事業を
仕訳する
覚悟がないと、すべての事業を継続させても改革にはならずに
業績は伸びてゆかないと判断しています。
■経営者の悩み6:旧来の経営態勢だから、
今後この会社を変えてゆくのは大変だ!
経営者であればこそ、自分の長所も短所も知っています。
会社のその多くは、「昭和と平成の要素で構成されている」
ことを誰よりも経営者の方が一番知っています。
だからこそ、変えてゆくのは大変だ!と思っているのです。
しかし、長期の渡り経営する過程では、
100社がすべて10年後も生き残っているわけではありません。
緑の葉が枯れて落ち葉になるように、何割かの会社は消滅します。
よく言われるように、
飲食業では、10年後に生き残っているのは「わずか10%」
と言われています。
残りの90%はお店が順次消滅して、
また社会の中から飲食事業をやりたいという無尽蔵の仕組みの
なかから新たな開業者が現れます。
新たな借金ゼロの新しい芽が芽吹くことになります。
長く続かないお店のノウハウのお店がなくなり、
その余地に、
次の生き残るかもしれない可能性を持ったお店が
生まれて、
飲食業自体の”新陳代謝”が行われることになります。
父親という経営者が口に出しにくい立場だということを
少しでも理解出来たら、
共感と協調、協力が生まれる後継の道になることを希望します。
(了)