#6 『20代で得た知見』
本日紹介する本は、著・F『20代で得た知見』
概要
『真夜中乙女戦争』の著者・F氏による初のエッセイ集。著者が様々な場面で遭遇した人々、情景。そして、そこから得られた教訓、哲学etc…。淡々と、けれども叙情的な言葉が心に溶け込んでいく。
感想
まず、装丁がおしゃれ!シックなデザインで、インテリアとして飾ってもよさげです。
エッセイを読むと、なんとなく著者の人となりが掴めるような気がする。私は「真実」を求める人、そんなレッテルをF氏に貼っている。本人から聞いた生の言葉、実際の行動。そこに本心があり、本音があって、心が動かされる。先行して得ていた知識や言葉、教訓を身をもって体感し、体験し、経験したとき、はじめて理解し、会得し、血肉となる。もちろん、全てが自分に合うとは限らないから、そのときは潔く脱ぎ捨てる。そのくらい柔軟に自由に、けれどもときに頑固になる。矛盾した考えや言葉がたくさんあって、「知見」とは曖昧で断片的である。本作全体から感じ取れたことはこんな具合でした。
そんな著作にはすてきな言葉がぎょうさん詰まっていたのですが、選抜してひとつ、ご紹介しようと思います。
好きな子に天邪鬼な態度をとって傷つけて、ショーウィンドゥ越しの肩の部分がレースになっているかわいいデニムワンピースを思い出して、今年は帰省して、おいしいご飯を山ほど食べることを決意した。
伝えられなかった好意、迷ったあげく満たさなかった物欲、減退していく食欲。それらは消えて、期限切れになって、重くなるかもしれない。
でも、意外と甘酸っぱい恋物語として美化されて、幻のワンピースとなって憧れて、食欲は若さの象徴となってノスタルジーにひたるかもしれない。
そのくらい図太ければ、死にたさの類は飼い慣らせる、と思ったり。
とりあえず、故郷があるうちに、親が生きているうちに、帰省せねば。
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