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たどりついたか?究極の大根サラダ

昨年の年末からお正月にかけて、私は実家に帰省をした。
帰省の楽しみの一つといえば、大皿に盛られた母の手料理である。
野菜を切らせようものならば一つに繋がっていた、お味噌汁をすすっていたらビニールの切れ端が混入していた、なんてことも起こり得る母の豪快な手料理。
料亭どころかファミレスでもクレームがくるような事件は多々あるものの、目にもとまらぬ速さで数々の料理を仕上げる手際の良さとほどよい味付けに、母はやっぱり料理上手だと思う。
そんな母が私に簡単でおいしいレシピがあるという。
それは「大根サラダ」だ。
千切りの大根に塩を振って、しばらく放置する。
その間にツナ缶のオイルを少し減らして、ゆでたほうれん草を食べやすい長さにカットする。
そして、千切り大根の水気を絞って、ツナやほうれん草の入った器に合わせ、後はマヨネーズで和えるだけの簡単サラダである。
特別な味付けはなにもしていないのに、この大根サラダが本当においしい。
結局私は、器にこんもり盛られたサラダをあっという間に食べきってしまった。
母は私のおかげで、なかなか消費できない大根が一気になくなった、と喜んでくれた。

そんなこんなで9日間の帰省はあっという間に最終日を迎え、アパートでの一人暮らしが再スタートするのだが、しばらくすると実家のご飯が恋しくなる。
幸いにも実家から大量のお米とお野菜をもらっていた私は、大根サラダを作ってみようと思い立つ。
いざ、包丁を握りまな板に横たわる大根を眺め、はたと気づく。
大根がどのくらい細かったのか、思い出せないのだ。
あのときは母が大根を切ってくれて、それで食べるときは家族との会話に夢中になっていたし、どのくらい細かったのか、なんて全然考えていなかった。ただ、大根はできるだけ細く切る、と母が言っていたような、でもシャキシャキとした触感が残っていたような・・・
なんてことを考えながら、とりあえず細切りにし、塩をまぶして放置する。
ところが、待てど暮らせど大根は一向にしんなりしてくれない。
量が多くて塩が浸透しないのかも、と感じた私はとりあえず塩を追加し、さらに1時間放置する。
さすがにこれでしんなりになっただろうと期待するも、全然変わらない。
そこで今度は一晩置けば、明日の朝はほどよい状態になるだろうと思い込むことにした。しんなりどころか塩辛くなった大根の水気をとり、これまたしんなりしていない白菜とマヨネーズとを和え、タッパいっぱいまでサラダを詰めては冷蔵庫に放り込む。


次の日、意気揚々と大根サラダを一口。
しょっぱいのなんの、塩辛すぎて理想のサラダとはかけ離れ過ぎていた。しかも、とてもじゃないけど食べきれないほどの量。
しかし、せっかく実家からもらった野菜を無駄にすることもはばかられる。
無理やり口に押し込んでは水で流し込み、なんとか食べきった。
そう、第1回目の自作大根サラダは散々な結果で幕を終えたのだった。

そして、またしばらくたつと大根サラダを作りたくなる。
今度は実家のご飯の恋しさではなく、失敗に対するリベンジを果たしたいがためである。
大根はもちろん、前回のサイズの二分の一、細く薄くを意識する。
塩もほんの少しだけまぶして、しばらく放置。
すると、いとも簡単に大根はしんなりしてくる。
あとは水気を切って、ツナとマヨネーズと和えるだけ。
あまりにもあっけないリベンジ達成に手ごたえはほとんどなかったが、嬉しかったので記念写真を撮る。
なんなら2日連続で作ってしまったくらいだ。

ところが、写真をみて、こんどはあまりにも白く、全く映えないことに納得がいかない。
やっぱり料理は味だけじゃなくて見た目も大事。
これは母から教わったことでもある。
こうして私は4回目の大根サラダを作ることになった。
作り方は前回と前々回と全く同じ。違うのは小松菜と人参を加えただけである。これでやっと、自分の大根サラダを確立できた。
野菜の切り方から組み合わせ方、少しの違いが料理のおいしさと美しさを生み出す。そんな料理の楽しさと難しさを私は大根サラダを通じて感じたのだった。

白、緑、橙色の色鮮やかなサラダ。
これこそ究極の・・・、と口にしたいところだが、やっぱり実家で食べた母の大根サラダには敵わない。

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大根サラダ


大根サラダ
材料(2人前) 
大根・・・200g
小松菜、人参(お好みで)・・・50gずつ
ツナ(1缶)・・・半分
塩・・・小さじ2/1
マヨネーズ・・・大さじ3~4(好みに合わせて調整してください)

作り方
1.大根は千切りにし、塩をふって5分ほどおいておく。
2.小松菜、人参は食べやすい大きさにカットし、しんなりするまで電子レン ジであたためる。
3.大根がしんなりしたら、きつく絞って水気をとる。
4.ツナのオイルを減らし、大根、コマツナ、人参を混ぜ合わせ、マヨネーズで和える。
5.冷蔵で30分ほど、冷やしておく。一晩おくと、より味がなじんでおいしいです。





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