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伊川津貝塚 有髯土偶 92:中央構造線掘削断面
中央構造線の掘削断面が移築展示されていることから、愛知県新城市(しんしろし)の鳳来寺山自然科学博物館内の見学に向かいました。この博物館は国立博物館を除けば、個人的にもっとも気に入った博物館になりました。この規模の博物館としては展示物が多岐にわたり、圧倒的な展示量で、学芸員の方たちの熱量が伝わってくる博物館でした。
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展示室には内帯(大陸側)に位置する領家変成帯(りょうけへんせいたい)の新城市(しんしろし)田代で採取された、一般に岡崎御影(みかげ)と呼ばれる花崗閃緑岩が展示されていた。
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白地に黒い粒が含まれる、愛知県人にとってはおなじみの石だが、黒い粒は黒雲母と角閃石がありえ、角閃石は強い光のもとでは少し緑色がかって見えることがあるといい、これが「花崗閃緑岩」の名称の「閃緑岩」になっているのだろう。
別のコーナーには豊田市(内帯)で採取されたツブノセミタケが展示されていた。
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一般に「冬虫夏草」と呼ばれるキノコの一つで、セミの幼虫に限らず、土中の昆虫類に寄生した菌糸から地上に子実体を作ることで知られ、漢方・中医学の生薬や、薬膳料理・中華料理などの素材として用いられる。
上記標本のセミの幼虫は、ニイニイゼミの幼虫である可能性が高いが、セミのほかに蟻、蛾などの昆虫にも寄生する。
ツブノセミタケと同じコーナーに地元、安城市鳳来町で採取された日本固有のコウボウフデが展示されていた。
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鳳来寺山自然科学博物館が真言宗寺院の表参道沿いにあるだけに、その地元で弘法大師の名を冠した植物が採取されたのは縁によるものなのか、もともと、真言宗関係者によって命名されたキノコなのか。
キノコ愛好家にも超珍種として知られているキノコだというが、笠部分が開いてなくて菌糸が糸状に伸びている。
この「糸状」が筆の穂先に例えられての命名なのだろうが、現物に筆のイメージは無く、頭頂に霞がかかっているようにしか見えない。
そして、このために根元のつぼの方が笠の塊より数倍大きい。
「超珍種」と言われるだけあって、ネット上にも遭遇した人が感動している以外の情報が出ていない。
同じく、シロオニタケモドキが展示されていた。
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名称から分かるように、シロオニタケモドキはシロオニタケと似たキノコで、双方とも中型から大型のキノコで、笠とつぼが角錐状のイボに覆われている。
違いはシロオニタケモドキも方が笠がより堅くて厚く、脱落しにくいことと、胞子がシロオニタケのものよりも僅かに大きいという。
ほかのコーナーには新城市玖老勢(くろせ:内帯)で採取された以下のハコネマイマイが展示されていた。
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カタツムリは移動能力が低いことから、限られた地域にしか分布していない種類が多いという。
ハコネマイマイもその一つで、神奈川・静岡の両県と、これに接する地域に分布しているが、新城市は静岡県に面している場所がある。
殻径25mm前後、殻高18mm前後とやや小さく、山高のカタツムリだ。
越冬期以外は樹上で過ごし、木の枝や葉の裏側に付着しており、湿度の高い川や沢に近い林に多いようだ。
殻に見られる焦げ茶色の筋は地域によって遺伝的な違いがあるというのだが、新城市玖老勢のハコネマイマイは焦げ茶色の筋の幅が広く、色が明るい焦げ茶だ。
別のコーナーには新城市門谷(かどや:内帯)で採取されたヒナコウモリが展示されていた。
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ヒナコウモリは2002年に絶滅危惧II類だったのが、2007年には生息の増加でランク外になっているが、近年、都市部でのヒナコウモリ観察例が増えているという。
日本全域、朝鮮半島、台湾、中国東部、モンゴル、シベリア沿海地方に分布している。
愛知県では、2002年5月に設楽町東納庫で最初の個体が発見され(川田,2004)、2003年7月に安城市日の出町で繁殖集団の雌と幼体が(小鹿・子安,2007)、越冬集団が設楽町東納庫(城ヶ原ほか,2007)と豊根村富山(佐藤ほか,2008)で発見されているが、安定した繁殖集団は確認されていない。
前腕長47〜54mm、体重14〜30g。
日中は樹洞や家屋内に潜み、日没後に活動する。
雌は100頭をこえる出産・保育集団を形成し、初夏に通常2仔を産む。
出生した雌はその年の秋に成熟し、満1歳で出産する(子安・織田,2009など)。
出産の際に雌の巨大な集団が形成されることから、本種が集団で移動することが示唆されている(浦野ほか,2008)。
展示室を1周して、中央構造線の掘削断面が展示されているロビーに戻ってきた。
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ロビーには岩壁が展示されていたが、よく1枚板の状態で持込めたものだ。
現在は博物館に対応した展示物を整備したり、運搬したりする技術が想像以上に発達しているようだ。
こうして現物を目の当たりに見せられると、これが現物なんだと、納得するしかないのだが、岩壁の表面に複数「く」の字形の跡が見られる。
掘削機の先端の形だろうか。
最近は通販で砂利を固めるスプレーなどが販売されているので、その系統のものが利用されているのだろう。
色も、おそらく、そうした硬化剤の影響を受けていると思われる。
こうしたものは崩れやすい古代の土器などにも使用されている場合があるので、古代の焼き物なのに、なんて好い風合いだと感動していると、硬化剤仕上げだったりすることがある。
掘削断面の壁の前には掘削断面を採取した中央構造線露頭の以下の写真が展示されていた。
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上記写真の中央縦の「?」形の溝が外帯の結晶片岩(画面左側?)と内帯の花崗岩源の圧砕岩が接する中央構造線だという。
他にも以下の中央構造線長篠露頭の写真が紹介されていた。
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以下は展示されていた『中部日本の地質構造区分』。
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この地図からは新城市内帯の「領家変成帯」と新城市外帯の「三波川変成帯(さんばがわへんせいたい)」の位置関係が明快に見て取れる。
(この項、終り)
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鳳来寺山自然科学博物館は圧倒的な展示量でした。丁寧に撮影して行くと、この博物館だけで、もう一度訪問する必要のある量でしたので、思い切って最低限の撮影量にしたものですが、その結果、この博物館の魅力がまったく伝わらない結果になってしまいました。残念。