息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話 その後4
再び保育園に通い始めて2週間。
その間も体調に変化はなく、穏やかに日々がすぎていった。
この日は長男が出たがっていた発表会の当日だった。
本当だったら誰よりも見に行きたかったのだが、今年は感染症拡大防止の為、参加出来るのは保護者一名のみとなっていた。
さらにタイミングが上手くいかず、寝る時だけはママがいないとダメな次男が、発表会開始直前にお昼寝を始めてしまった。
直前までどちらが行くか悩んでいたが、泣く泣く夫に見に行ってもらうことに。
この頃、入院期間の仕事の遅れを取り戻すために夫は少しずつ残業が増えてきていた。
元々の働き方からすれば早く帰ってきているほうだったが、入院中に一緒に過ごした時間を考えると、長男は欲求不満気味だった。
そのため、この時期長男はパパっ子真っ盛り。
『パパに来て欲しい』と言われていたため長男の希望通りとなったのだが、ちょっとだけ寂しい気持ちになった。
参加学年も絞られ短時間で終了となった為、お昼には帰宅。
すぐさま夫に託したビデオの映像をテレビに繋げて見せてもらう。
画面に映し出された長男は、観客の少なさもあってか全く緊張しておらず、リラックスしたニコニコの笑顔で演目をこなしていた。
ジャンプやでんぐり返しなどのアクロバティックな動きや、音楽に合わせて踊るなど身体を使って目一杯動き回るプログラムだったが、動きに不自然なところは一つもなかった。
なによりクラスメイトと笑い合いながら楽しそうに動き回る長男の姿に、嬉し涙がこみ上げた。
「ママ!僕とっても上手に出来たでしょー?」
誇らしげな笑顔で私の感想をまつ長男。
彼のその表情に、「あぁ、やっと一段、階段を登れたのだ」と思った。
保育園に復帰しても、いつ倒れたと連絡がくるのかハラハラしていた。
体力も落ちていたし、服薬も続いているからこそ、どこかで体調に出るのではと心配もしていた。
けれど、この2週間体調を崩すことは一度もなく、入院前と同じかそれ以上のパワフルさで笑顔を振りまく長男。
子供のパワーはすごい。
彼らが幸せそうにしているだけで、親はぐったり疲れていても笑顔になってしまうのだ。
正直不安は尽きない。
けれど、入院中も今も親が出来ることは変わらないことに気がついた。
彼の身体を信じて見守るだけなのだ。