息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話 その後5
退院後初めての減薬の日がきた。
入院中に3食後から朝夕食後へ減らした服薬を、朝食後だけにする、というものだ。
退院日に医師から『退院からこの日まで健康状態に問題が無ければその予定で進めるように』と指示を受けた。
今長男が元気に過ごしているのは、薬によって自分の免疫を抑え込めているからで、薬を減らせば途端にまた脳や脊髄に炎症が出来てしまうのでは無いか…。
当時は薬を減らすと言われる度にそんな不安に襲われた。
けれど、ステロイド薬の服薬期間が長引けば、副作用のリスクも出てくる。
幸い長男は本当に元気で、減薬を悩む要因は何も無かった。
覚悟を決めて指示通り減薬を開始した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
減薬開始から3日後、通院日がやってきた。
この3日間注意して様子を見ていたが特に再発を疑うような動きや症状は無かった。
久しぶりに主治医の先生やリハビリの先生に会い、減薬の影響は出ていないだろうと診断してもらうことができた。
ホッとしたのも束の間、先生から次の減薬の話が出る。
「順調だねぇ!それで今のペースでいくと、2週間後くらいに治療薬は終わりに出来そうですね。」
遂に治療の為の服薬が終わる。
ホッとしたような、更なる減薬を前に落ち着かないような複雑な感情が渦巻いた。
「その後は、治療の為のステロイド薬では無くて、体内で作り出されるステロイドホルモンに近い成分で作られた薬を最低限の量1日3回に分けて飲んでいきます。
今回急性期に行ったステロイドパルス療法で上限ギリギリの量ステロイド薬を投与しています。
それくらい多くのステロイドを使うと、体はステロイドホルモンを作らなくてもいっぱいある!と思って作るのをお休みしてしまうんです。
長男くんも0ではなくともかなり少ない状況だと思います。
今、朝一回だけ飲んでいるお薬を2週間後にやめますよね。
そのまま服薬を終わりにすると、
『ステロイド離脱症候群』と呼ばれる、だるくなってしまったり最悪血圧が下がって倒れてしまうこともある症状が出る可能性があります。
それを避けるために、「最低限これくらいのステロイドが体内にあれば安心だよ」、という量だけを服薬していったほうが安全です。
この薬は今治療で使っている薬より量もかなり少なくなりますし、体内で作られるステロイドホルモンとほぼ同じ成分なので、今までのように副作用の心配はあまりしなくて良いと思います。」
一番気になっていたのがステロイドパルス療法や長期のステロイドの服薬による副作用だった為、その心配が少し減るというのは嬉しかった。
実際服薬量が多かった入院中は、顔が丸くなったり、食欲が増加するなどの副作用が出ていた。
一日2回の服薬になったあたりから落ち着いてはきていたが、それでも服薬が長くなればなるほど副作用のリスクが上がるという事実は緊張感があるものだった。