見出し画像

24-25シーズン 川崎ブレイブサンダースの開幕によせて

もう長いことスポーツ観戦をしているが、今日の気持ちははじめて味わうものなので、備忘録として書き残したいと思う。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

昨シーズンはなんとしても結果が必要だった。勝たなければいけない年だった。
選手もスタッフもファンも、その共通理解があったはずだ。
象徴的な選手が引退するときによく「一時代が終わる」という表現が使われるが、それがおそらく最も的確に当てはまる選手がユニフォームを脱ぐことを決めて歩んだシーズンは、思い描いていた結果とはかけ離れたものになった。
ホーム最終戦、「22番」の放った最後のシュートが外れたとき、アリーナにいた全員がこれ以上ないほど思い知らされたはずだ。
時代がまたひとつ過ぎ去っていったこと。

チームは変革の時を迎えた。そこにいることが当たり前だった選手が何人もブレイブレッドのユニフォームを脱いでいく。私が好きになった20-21シーズンから継続して所属する選手は、ついに篠山、長谷川の2人だけになってしまった。変わっていくチームにどうしようもない喪失感を抱きつつ、味わったことがない長いオフシーズンを過ごしたファミリーは、私だけではなかっただろう。

でも開幕直前となった今、私は、その変化によっていっそう感じられることがある。

川崎を応援する。
私にとってその理由は理屈じゃないということ。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

大学進学のため上京した私が住処に選んだウサギ小屋くらいの面積しかない1Kのマンションは、都内と言いつつほぼ神奈川のような東急沿線の小さな駅にある。自宅から一番近い繁華街は川崎駅周辺だ。おのぼりさん丸出しの私は地元にはない若者向けの服屋がたくさん入ったラゾーナ川崎に目を輝かせ、これまた地元にはない駅の東口にたむろす夜のお店のキャッチに「これが都会か〜」などと感心しながら過ごしていた。
どこに行くにも便利でちょうどよいこの場所から出ていく理由もなく、気づいたら13年も同じ部屋で暮らしている。一人暮らしで最初に選んだ賃貸に13年暮らしている人はなかなかいないだろう。私にとって一番しっくりくる身近な都会として川崎は存在し続けている。
そんな私は友人の誘いがきっかけで川崎ブレイブサンダースに出会い、ファミリーの一員になった。完全に嫉妬に過ぎずお恥ずかしい話だが、武蔵小杉といえば資本主義の勝者たるパワーカップルが私が一生かかっても買えないようなタワーマンションに住まういけ好かない街というイメージだった。けれどブレイブサンダースのファンになってからはホームタウンという特別な場所になった。いけ好かないと思っていたところが心の自宅になるなんて、人生何があるか分からないものだ。

社会人になり縁あって川崎で働くことになり、武蔵小杉駅は頻繁に使う乗換駅になった。外回りを終えた私は東急の改札を通るとき、柱にプリントされた篠山選手の写真に向けて心の中で報告する。
「篠山さん、今日も仕事頑張ってきました」
篠山選手が「うむ、ご苦労」と褒めてくれている気持ちになって少し得意げな気持ちで家に帰った。
駅だけではない。日常に溶け込む川崎ブレイブサンダースに私は救われているような気がする。道端に貼られているポスター、スポンサーのお店にある選手のサインみたいな、川崎ブレイブサンダースを感じるものはもちろん、初めて知る芸能人が川崎出身というだけでも親近感を抱いて顔がほころぶ。

川崎は、文字通りホーム。
そして選手は、スタッフは、ファンはみんな、文字通りファミリーなのだ。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

明日、川崎ブレイブサンダースの2024-25シーズンが開幕する。
SNSで見る下馬評はどれもだいたい下位。いまだかつて、こんなに弱いと評価されながらスタートしたシーズンがあったのだろうか?少なくともBリーグが始まってからははじめてだろう。
でも、上等だ。
「勝たなければならない」という重石のようなプレッシャーからはきっと解放されたはず。自由にコートを駆ける選手たちの姿を見られることに心底ワクワクしている。

きっとこのワクワクも、いざ試合をして負けたら落ち込むだろうし、怒りたくなるときだってあるだろうし、もう会場に行きたくないと思うことだってきっとある。
その覚悟もできているし、そんなことで応援自体をやめない自信もある。
私が川崎と生きてきた時間の中で染み付いた愛着は骨になり血液になり、細胞のひとつひとつにもう刻み込まれているんだから。

BE BRAVE.

原点回帰のスローガンを今一度噛み締める。
74年の歴史で築かれた栄光の日々を置いていき、新しい歴史を作り始めるのに、なにより必要なのは勇敢な心だろう。
私も共に戦おう。勇敢に。

戦う理由は理屈じゃない。
私たちは、ファミリーだからだ。

2024.10.4

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?