柳の舞 初めての3枚おろし

今日買ったのは「柳の舞」です。
「柳の舞」って聞いて何かわかりますか?
すぐわかる人は料理をよくする人や、魚に詳しい人だと思います。

柳の舞って魚の名前、かっこいいですね


そう、これ魚の名前なんです。
メバル科の魚らしいです。
これ、スーパーで普通に売ってるんですが僕は今日まで知りませんでした。

僕は最近釣りを始めたんですよね。
でもこれまで3回行って釣れたのは小さい「ガヤ」って呼ばれてる魚一匹だけで。
そしてそれも、あまりにも小さくてリリースしたんですよ。なので釣った魚を持ち帰って食べるという事がなかったんです。

僕が釣りを始めたのは自分で釣った魚を調理してそれをツマミにして酒を飲むって事がやりたかったのに、出来ていないんです。それが悔しくて。

なので、日々YouTubeとかで釣り方を研究している訳なんですが、ふと気付いたんですよ。
釣った魚を調理するって言ってるけど、僕、魚捌けたっけ?

そう、スーパーで買って来た切り身を調理したりする事はあったんですが、釣ったままの状態からってのはなかったんですね。
なので、もし魚を釣って帰ってきても、まずは捌けないと魚と睨めっこしてしまう。酒だけが進み、僕が死んだ魚の目になってしまう。
そんな事態は避けたい。

そこでスーパーで売ってる魚を買って来て練習しよう!と思ったんです。
そして選んだのはこの「柳の舞」なんです。
僕が釣った事のある「ガヤ」と呼ばれる魚も「柳の舞」と同じメバル科なので良い練習になるかなと思って購入しました。

そしていざ持ち帰り、キッチンに「柳の舞」を置いてみると・・・
凄い・・・
家に魚がいるよ・・・
全然迫力が違うよ・・・
迫力で言えばこの前アマプラで見た「ゴジラ-1.0」も凄かったけどあれは画面から出てこないもん・・・
「柳の舞」は目の前にあるから3Dだよ・・・
なんなら生臭さもあるからもうこれは4Dじゃないか・・・
なんて事を思いながらももうやるしかないと僕は心を決めました。これを捌き、調理して食ってやると!

そしてまず初めにやる事はビールです。
そう、僕は困ったら酒に頼るタイプです。
そしてここまでなんとか生きてこられました。
酔った時の方が人生上手くいく気がします。

という訳で一口目のビールをグビグビと飲むと僕の頭にはねじり鉢巻が巻かれました。
一瞬驚きましたが、今はそれどころではありません。目の前の柳の舞に集中します。
まずはYouTubeで見た通りにまずは鱗を取っていきます。
それから頭を落として内臓を取るらしいのですが、ここでまたビールをグビグビ飲みます。
二口目を飲むと、今度は白いゴムのエプロンが僕を包みます。驚きの声を上げたい気持ちを我慢し、再び柳の舞へと視線を戻します。
苦戦しながらも頭を落とし内臓を取り出す事に成功した僕は、ここでまたビールを飲ります。
そうすると今度は白いゴム長靴が履かされていました。ここまでくるともう驚きはありません。
僕は港町の男になっていたのです。
無愛想で不器用、周りからは勘違いされやすいですが、根は優しく、誰よりも海と生まれ育ったこの街を愛する港の卸売市場で勤続30年を超えるベテランになっていました。
その後はYouTubeで見た通り、肛門まで包丁を入れ腹を開き、血合いを流します。腹と背中から骨にそって包丁を入れ、1枚目の身を取ります。
裏返し反対側も同じ事をすると2枚目の身が取れ、あとは骨のついた部分が残りこれで3枚目。
身についている骨を逆さ包丁で落としてやり、細かい骨はピンセットで取り除くと3枚おろしの完成です。
ここまでやる頃にはビールを飲み終え、ハイボールへ手を出しています。
僕もすっかり海の男の自覚が芽生えてきて、咥えタバコをしながら明日の海の波の様子などを気にかけたりしています。
「明日は・・・荒れるぞ・・・」そんなことまで呟き始めていました。




・・・・・・・その後、フライにした柳の舞を肴に酒を飲んだ僕ですが、酔いが覚めた頃には海の男ではなくなっていました。そこにいるのはうだつの上がらないただのおじさんと、汚れたキッチンがありました。
ねじり鉢巻もエプロンもゴム長靴もありません。
そう、あれは酒の力が見せてくれた幻だったのです。
(マッチ売りの少女を意識して書いてます)
明日の海を気にする必要のなくなった僕は「片付けるか・・・」と力なく呟き、奥さんに怒られないようにキッチンの掃除を始めました。
帰ってきた奥さんには「生臭ぇ」と怒られましたがとにかく柳の舞、良い買い物をしました!

いいなと思ったら応援しよう!