セクシュアルマイノリティの編集者が担当した『男の子は強くなきゃだめ?』という絵本
はじめまして。すばる舎編集部最年少! の大原と申します。
今回はぜひ多くの方に知っていただき、たくさんの子どもたちの手に届いてほしいと願う絵本があり、noteを書かせていただきました。
その絵本のタイトルは 『男の子は強くなきゃだめ?』
オーストラリアで刊行された『BE YOUR OWN MAN』という絵本の邦訳版になります。
対象年齢は小学校低学年~中学年ですが、大人の方のサポートがあればもう少し小さなお子さんでも読める内容になっています。
突然ですが「ジェンダーロール」という言葉をご存知でしょうか?
辞書を引用すると、
とあります。
みなさんも、
「男の子なんだからしっかり」
「男の子なんだからすぐ泣くな」
「男は外で遊んでろ」
こんな台詞を言われたり、言ったり、聞いたりしてきたのではないでしょうか?
ジェンダーロールは、たくさんの子どもたちを苦しめてきました。
「ピンクのランドセルがよかったのに……」
「髪短くしたくないんだけどな……」
「外で遊ぶより、人形遊びがしたかった……」
逆もしかり、かっこいいものが好きなのにかわいいを求められてきた方もたくさんいらっしゃることでしょう。
しかし、
かっこいい、かわいい……
強い、たくましい、おしとやか……
スポーツが得意、手芸が得意……
黒が好き、ピンクが好き……
これらは男の子であっても、女の子であっても、どっちでもないなという子であっても、わからないなっていう子であっても関係ありません。
すべての子どもたちに、性別に関係なく自分の生きたいように生きる権利があるのです。
今回紹介させていただく絵本には、すべての子どもたちが安心して自分らしく生きてほしい! そしてそんな環境が、場所が増えてほしい! という願いとともに下記のようなメッセージが詰まっています。
「同じ人なんて、どこにもいない」
「君らしくしていれば、それでいいんだよ」
「ほかの人とくらべないこと。だって、得意なことはみんなちがうんだから」
ジェンダー問題と聞くと、難しいのかなと感じられる方もいらっしゃるかもしれませんが、本書はとてもやさしく寄り添うような文章と、鮮やかで温かいイラストで、お子さんにも大人にも響くような内容になっていますのでご安心ください。
ジェンダーについて、生き方について考えるキッカケ、最初の本として自信を持ってオススメできる1冊です。
本書にはジェンダーに関すること以外にも、自分の気持ちとの向き合い方についても記されています。
「悲しみや不安のようないやな思いにふたをしてしまうと、よろこびや幸せにもふたをしてしまうことになる」
「気持ちとしっかり向き合って、それを君なりに表現すれば、いやな気持ちを心から追い出すことができる」
「どんな気持ちをかかえているかによってやりかたはちがうから、今の君にあったものを選んで、やってみよう」
と「セルフケア」の大切さとともに、「腹がたっているとき」「悲しいとき」「不安なとき」にそれぞれどう対処すればよいかを紹介しています。
子どもにとって「相談する」というのはハードルの高いことです。
特に「しっかりしろ」と言われがちな男の子にとって、弱音やつらい気持ちを伝えるというのは大人が想像する以上に難しいこと。
だからこそ、小さい頃から自分の気持ちに向き合って、それを色々な手段で表現するというのは大切な学びなのではないでしょうか。
ここからは自分自身の話になるので、興味のない方は閉じていただいて結構です^^;
今回邦訳版の編集を担当させていただいたワタクシ大原も、実はセクシュアルマイノリティの1人です。
日によってまちまちではありますが、髪を伸ばして、メイクもして、休日はレディースの服で街に繰り出すこともありますし、今はちょっと爪のおやすみ期間ですがセルフネイルも楽しんでいます。
そんな私ですが、26歳までは周囲の男性となんら変わりない姿で生きてきました(現在28歳)。
幼い頃から漠然とかわいいものに対する憧れがあったり、「かっこよさ」を追求することが楽しくないなと感じたりしてはいたのですが、当時はセクシュアルマイノリティに対する理解なんてものは今に比べれば全然なかったし、自分がメイクをしたりというのはまったく考えていませんでした。
しかし時代は変わり、セクシュアルマイノリティであることを公言してSNSで発信したり、表舞台で活躍したりという方が脚光を浴びるように。
加えて新型コロナウイルスの流行によって家から出なくなる期間があったため、自身の性表現について考える時間が増えていきました。
幸いなことに私には以前からスキンケアなどの話をする友だちがいたため、その子に相談したりインターネットで情報を得たりしながら徐々にメイクを覚えていったわけですが、これが本当に楽しい……。
ファッションやヘアスタイルもそう。今まではなんだったんだというぐらい、それからの人生は日々が楽しくなりました。
私は男であることが嫌というわけではなく、自分には男性的な部分も女性的な部分も混在していると思っています。
なので、自分の性別が受けいれられないとか、嫌悪感がある、という方のつらさは100%までわからないかもしれません。
それに、今の生き方にしてからも会社で嫌な思いをしたり、友だちが離れたりということもなかったという点では、すごく恵まれていたんだろうと思います。
ただ私は、自分らしく生きられるまでに25年以上の歳月を要しました。
時代が違えば、きっかけさえあれば、もっと若いときから自分らしく生きて、したいオシャレもヘアカラーも自由にできたんだろうなと思うこともあります。
だから今現在自分らしく生きることができなくてつらい人の気持ちはわかるつもりですし、この絵本を通じて、自分の生きたいように生きていい、表現したいように表現していい、と思う子どもたちが増えて、それを尊重する友だちや大人が増えてほしい! と願っています。
学校生活の同調圧力というのは強いもので、他人と違うということがなかなか許容されづらい現実がありますが、子ども、親、先生、指導者……それぞれ一人ひとりが意識を変えていけば、きっと日本全体が良い方向に向かうはずです。
書籍編集者という仕事をさせていただいている以上、本を通じて1人でも多くの方の人生を豊かなものにするお手伝いがしたいですし、世の中を良い方向に変えていきたい……。今回の絵本も、そのような存在になってほしいと願っています。
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