鑑賞ログ「ブータン 山の教室」

210828@シネスイッチ銀座


景色が綺麗そうだし、出てくる女の子可愛いし、心洗われそう。主役の俳優の顔つきもいいなーと映画館で予告を観て遅ればせながら鑑賞。
4月の公開作品だから、ギリギリだったけれど、観れてよかった。
ブータンの首都、ティンプー。都会っ子で海外で歌手になることを夢に見る教師のウゲンは田舎の村・ルナナに派遣される。標高4800m、ヒマラヤ山脈の氷河地帯に位置するそこはブータン、いや世界でも辺境の地だった…。というお話。

いや〜心がジャブジャブ洗われたな。
ブータンのガザ県ルナナ村、ガサ(人口448人)、コイナ(人口3人)、カルチェン峠、ティンプー(ブータンの首都)
まず物語の本筋となる派遣先の村・ルナナに到着するまでに8日間。最初はコミュニティバスみたいなものに乗ってガサ(人口448人/標高2,800ぐらい?)まで1日。そのあとは徒歩。いや、車移動1日かい!!そして徒歩はずっと山道。そりゃそうか。2日目はコイナ(人口3人/標高3,000mぐらい?)に宿泊。そのあとはテント泊。
歩き始めにはじめの数日間は川沿いを歩くからキツくないよと言う村から来た世話役のミチェンを信じるが、ずーっと山道「だって本当のことをいったら辛いでしょ」みたいなことを言われて、グウの音もでないウゲン。プププ。
そんなユーモアと映画で描こうとしている失われつつあるブータンの素朴な独自性を留めたいということのバランスが作品全体的にとても心地いいし、期待した以上に映像は美しいし。そしてカルチェン峠(標高)を超えて人口56人、標高4800mのルナナへ。目的地に到着するまでに景色だけで泣ける。

ノースフェイスのマウンテンジャケットに、ゴアテックスの登山ブーツで都会からやってきた若き教師に村中が期待を寄せるけれど、やる気のない主人公。ミチェンの足元は長靴だし、途中で泊まる宿の主人は裸足。ティンプーを出たら、ウゲン以外の人々はみんな伝統的な服装というか、昔ながらの服装をしている。そんな対比をしながらも物語の中でそれが対立するわけではなく、そこが混じり合っているというのもいいな。伝統的なことに興味を示さないウゲンを誰も否定しないし、興味が示されないことを悲観もしない。ウゲンが持ち込む都会的なものを有り難がったり、崇めたりもしない。あなたはあなた、私は私、という心地よさ。お互いを否定せず、受け入れるって大事。

あと歌とヤクも大切なモチーフ。ルナナで流れるヤクへの歌はブータンの伝統的な民謡らしい。それが美しい景色と溶け合うとスクリーンからマイナスイオンが大放出される。そして、教室で草を食むヤク。ルナナの人々に多くを与え、深い絆で結ばれている。人と動物の距離がとても近い。そして、ルナナの村長は冬になると村を離れるヤクにウゲンを重ねたりもするし。
知恵者の村長の「教師は未来に触れることができる。」というセリフがあったけれど、電気はなく、紙は貴重品で、燃料に使うのはヤクのフンという辺境の地で、未来への希望はやっぱり子どもたちなんだなぁと。

最後の方は主人公がどうするのか、色々な想いで祈ってた。人生の選択は時に残酷さも伴うんだなとか考えてしまった。どうするの?そっち?えー、みたいな。とにかくみんなが幸せになって欲しいと思わずにはいられない作品だった。


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