最近のTM NETWORKへの雑感(1) : TRIBUTE ALBUM -40th CELEBRATION-
ここ最近、TMへの気持ちが十数年ぶりくらい再燃していて、聞きあさってライブも行ったりした。
TMのメンバーもインタビューなどで話していたが、40代や50代の昔からの男性ファンが表立ってファンだといえるようになったのは肌でも感じていて、最近は普通にファンとして楽しい状況だった。
そうした環境のなかで、発売されたTribute Albumが告知段階から大きな話題になっていたので、自分としても期待しつつ聞いてみたらかなり良かったので今回は、一通り聞いてクレジットも見たうえでの感想を書いていきたい。
クレジットも把握するためにちゃんとCDで買いましたよ。
レビューは自分がかなり強火なファンなので、そういう内容です。
01. SEVEN DAYS WAR / GRe4N BOYZ
正直、アルバムで一二を争うダメカバー。バックトラックDAMかと思ったくらいに単なるカラオケ。トラックはファンとして公言していてTMのメンバーとの仕事も多いnishi-kenがプロデュースらしいが、なんでこんな無難で原曲を原曲よりも低レベルになぞったJ-POPトラックにしたのか意味が分からん。ボーカルもGRe4N BOYZが気持ちよくカラオケで歌ってるだけ。しかも彼らの一体感のあるボーカルが全く聞けなくて、それはもしかしたら改名を経ての新しいアプローチかもしれないけど、あなたたちの曲で聞きたいのはそういうんじゃないんだと。
02. Self Control(方舟に曳かれて) / CAPSULE
悔しいけど中田ヤスタカはわかってる。TMでこの曲に期待されるものが何かということを。イントロに付け加えたシンセのフレーズがいかにもTMがライブで付け加えそうな感じなのが良い。できるだけボーカルのトーンを無機質にそろえて歌うのにCapsuleは適任としか言いようがない。1コーラス目のあとにぶよぶよしたベースラインをがっつりと聞かせたのもすごく良い。そして、2コーラスの後を少しブレイクさせたのもわかってる感。思ってたより100倍よかったカバー。個人的にはTMが初期のライブ時に付け加えていた鳥の声のようなフレーズが入ってるともっとよかったんだが、独自に良いフレーズを入れてたので納得。
03. Get Wild / B'z
最大の目玉カバー。これ目当てでアルバム買った人多そう。クレジットと参加メンバーコメントで驚いたのは、バックトラックが中田ヤスタカということ。あ、これ、B'zは今の大御所ロックバンドとしてのB’zじゃなくて初期のデジタルビートロックとしてのB’zの再現なのかと気づく。誤解してる人が多いけど、松本はTMのサポートやレコーディングをしていたものの、Get Wildについてはレコーディングは窪田晴男説が強いので、ネットによくみられる「オリジナルバージョンじゃん」というのは明確に間違い。しかし面白いのは松本が今のB’z的なアメリカンロックなアプローチではなく、当時のライブ演奏でのアプローチをなぞった感じにしている点。間奏で今のB’zのギターTak Matsumotoになってるのもよい。稲葉のボーカルはやっぱすごい。ウツとはアプローチが違うけど日本のロックボーカリストとして完璧すぎる。これ、今後、ライブでやってもよろしいんではないでしょうか。
04. BEYOND THE TIME(メビウスの宇宙を超えて) / 澤野弘之 feat. SennaRin
知らなかった人なんですが、ガンダムシリーズの音楽などをやってる方なんですね。もっとアニメ音楽的なアプローチなのかと思ったら、かなり今風のトラックで面白い。サビで一気に音数が多くなる感じがアニメっぽいね。ただ、ボーカルがちょっと好みではない。なんか、最近のJ-POPによくある歌い上げ系女性ボーカルでうまいけど凡庸。この曲はTMの曲の中でもかなり歌い上げ系な曲なのでこのアプローチは間違ってないんだけど想像の範疇を超えないし、女性ボーカルなことで逆にアニソン度が上がりすぎてる。なんか今の劇場アニメの主題歌っぽい。TMアニソンの傑作という解釈では正しいのかもしれんがnot for me。
05. Maria Club(百億の夜とクレオパトラの孤独) / ヒャダイン with DJ KOO
この曲だけリミックス。だけど、これはこのアプローチが正解すぎる。TMファンだと全員知ってる話だが、Maria Clubは福岡の大型ディスコ。ずっとマハラジャ系列と勘違いしてたんだけど、地場の観光産業の経営だったのね。これたぶんDJ KOOは時代的に回してたと思うんだが確証は取れない。ヒャダインのリミックスは現代的なクラブサウンドにするというのがうまくはまってる。TMのリミックスものではかなりの成功作では。そこにDJ KOOがいわゆるディスコラップをしているのが面白い。今時、こんなラップをする人はいないわけで、このDJ的な煽りがすごく時間をすっ飛ばした不思議な感じにしている。正直、今作でも随一のお気に入りである。
06. BE TOGETHER / 乃木坂46
これはTMじゃなくて鈴木亜美のカバーじゃないでしょうか? 乃木坂のメンバーも鈴木亜美のカバーのつもりで歌ってる気がしてならない。これもまた気持ちいいカラオケでしたね以外の感想にならない。ちらほらと言われてる櫻坂でResistanceをやったほうが良かったんじゃないかというのはまあまあ同意。そもそもTMの曲でアイドル向きの曲、かつメジャーな曲ってあんまないんだよな。それこそ、Self Controlくらい? 男性だったらCome On EverybodyとかCome On Let’s Danceあたりもよいと思うけど。あ、Your Songを乃木坂がやったら面白いかも。
07. LOVE TRAIN / 西川貴教
てっきり、これ、プロデュースを浅倉大介がやると思ったら違うのね。時間がなくて断るつもりだったらしいけど、トラック制作をTK SONG MAFIAがやることでOKしたとか。TK SONG MAFIAは久保こーじたち、小室のスタッフチームですね。なので最近のTKっぽいトラックで西川が気持ちよく歌い上げるという点では、まあ、これもまたある意味カラオケなのだが、ここまで強く歌い上げると文句は何もない。選曲的にも彼に一番合ってる曲なのでもうこれはこれでよいんではないでしょうか。まあ浅倉大介のトラックで聞いてみたかったなとは思いつつ。
08. Human System / 松任谷由実 with SKYE
Xなどの感想を見る限り、賛否両論分かれる印象だが僕は好き。TMは多摩エリアでユーミンは八王子なのでそんなに遠くないエリアの仲間ではあるんだよな。まあユーミンはスタートが10年くらい早かったし、そのころの交流はなかっただろうけど。実質、ティンパンアレーであるSKYEがアレンジということで、かなり人の手触りの強いアレンジになっている。選曲もお見事というか、ユーミンが歌ってはまるのってこの曲くらいだよなと。Aメロとか80年代のユーミンみたいじゃん。苗場で歌ってる姿が浮かぶ。2番の後のレイドバックしたギターとかTMが絶対にやらなそうですごく良い。トルコ行進曲の引用はやってほしかったがまあ贅沢は言わない。小室みつ子(西門加里)→松任谷由実(呉田軽穂)におもしろさを感じるのはまあ俺だけでよい。
09. TIMEMACHINE / 坂本美雨
FANKSのミュージシャンという点ではトップクラスの有名人坂本美雨の参加はもう納得以上のものではないが、この選曲はFANKSへ媚びすぎではないだろうかと。たしかに幻の名曲扱いだし、ファン的には4001 DAYS GROOVEで最後に演奏されたという点でも思い入れの強い曲だが、一般の人の認知度は皆無だし、本来的には小品くらいのレベルの曲ではあるので。でも歌の表現力もトラックもすごく良く佳曲な仕上がりになっている。坂本龍一にも聞かせたい良い曲。
10. STILL LOVE HER(失われた風景) / くるり
聞いて一番驚いた曲。くるりがこんなにTMへの解像度の高い理解をしてるとは思わなかった。本人コメントもものすごくFANKSが強いし、当人のXでの曲解説を読むと、ああ、この人、TMの良いところのツボをしっかりと抑えてると感心した。TMの良さのポイントとして見過ごされがちな、3人のボーカルハーモニーや小室メロと合わさったときの木根メロの良さ、この曲の一つの肝である間奏のハーモニカのフレーズをしっかりと使っているのがすごく良い。そして、TMの曲でも生音での構成要素の多いこの曲を、ロックバンドのくるりがあえて全体に打ち込みにしたのが面白い。最後にhumansystemのラスト曲This Nightのフレーズが入ってくるのだが、この2曲ともに作詞がてっちゃんなんだよね。なのでファンの間ではThis Nightの二人の続きがStill Love Herだという解釈が生まれて騒然としてる。それは切なすぎるだろ。そして僕は20年以上ぶりにThis Nightを聞いてネオアコっぷりに気づきびっくりしてる。ほぼAztec Cameraだわあれ。
11. ELECTRIC PROPHET(電気じかけの予言者) / 満島ひかり
ラストをElectric Prophetで〆るのはまあ、そうだろうなと思ったが歌うのが満島ひかりという奇策にびっくりした。しかし、後にトラックがネームドFANKSとしてはトップクラスであるクラムボンのミトだとわかり安心納得。とはいえ、ミトはプレッシャーすごかっただろうなとは心中察する。この曲ほど、お前、この曲をこんなにしたんかいとdisられそうな曲はTMには他にはない。なんといっても本人たちのTwinkle Nightのバージョンですら古参ファンの間では賛否があるのだから。そういう点でGet Wildの方が100倍気楽にできる。ミトなのでエレクトロニカ的なアプローチで来るだろうと思ったがここまで生音エレクトロニカにするとは思わなかったし、すごい出来に感動した。これ、TMのカバー以上に満島ひかりの曲として傑作ですよ。ミトへのインタビューでは舞台音楽のようという声があったが、それに納得なまるで、ミュージカルのエンディング曲のような情景が浮かぶ名曲。ボーカルを俳優としてもトップクラスの満島にさせたのが大成功だと思う。
自分の中での納得感としての勝率は、6勝3敗2分ってところかな。まあこれなら買う価値は十分にあるんではないでしょうか。一緒に入ってる原曲盤もGift For FANKS 2024って感じにTMの入門編としてまあまあツボを押さえてるしおすすめです。そして僕はこれの続きのトリビュートがあるならと妄想してますが、まあ、それはまたの機会に。