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les Plus 開催記念 米国音楽HCFDM100を全部載せる(田中知之編)

友人からやばいイベントがあると言われ、リンクを開いて驚愕する。

えっ、Les Plus復活!!?? DJは田中知之、梶野彰一、小西康陽、HALFBY、セカロイ小山内社長にROMANZAの松山禎弘!!?? まさか、このメンバーを京都メトロでやる日が来るの?? あまりの混乱に思わず、イベントのチケットと京都の宿を予約する。

les Plusとは

1997年2月に東京、中目黒の家具屋オーガニックデザインでスタート(のちに六本木Rougeに変更)したラウンジDJイベント。当時のDJは田中知之、梶野彰一、小柳帝、関口太、ヴィジュアル(当時はVJとまでは言えなかった)がM.&Co.(松浦弥太郎)。家具屋でラウンジDJを聞きながら60'sや70'sの欧米の(エロティックな)ヴィジュアルをスライドショーで映して楽しむみたいなイベントだったのだが、だんだん音楽がグルーヴィになっていき、客がスライドの前で踊りだすようになったという。その後、京都METROで本格的にクラブイベントとして進出。田中知之、梶野彰一にゲストが入る形。京都ではFM αステーションでFM番組もオンエア。Happy Charm Fool Dance Musicを代表するイベントの一つと言われる。

Happy Charm Fool Dance Musicとは

小西康陽がPizzicato Fiveのアルバム「Happy End Of The World」をリリースした際のプレス資料に掲載したことで始まった音楽ムーブメント。

ハッピーで可愛くてバカなダンス音楽。ハッピー・チャーム・フール・ダンス・ミュージック。去年、ベルリンのル・ハモンド・インフェルノやアムステルダムのイージー・チューン、あるいはF.P.M.の田中くんやエスカレーター・レコーズの仲真史くん、そしてコモエスタ八重樫さんなんかといっしょにDJをやっていてわかった。僕たちが探してたり回してたり、作りたいと考えているレコードって結局これなんだってこと。
小西康陽

アルバム「Happy End Of The World」プレス資料より抜粋

 もともと自分たちがかけているものなり盛り上がっているものっていうのに一貫して共通した何かはあるんだけど、それを表す言葉がなかったから。ジャンルはめちゃくちゃだし、そういうところにはまったんですよね。ハッピーでバカで踊れるっていうところ。名前がないとシステム的に盛り上がらないかなと思ってたから(笑)、ちょうどよかった。

GROOVE1998年6月号P35「特集:Neo Lounging 【HCFDM対談】仲真史×梶野彰一」より

ということで、ジャンルというよりムーブメントであり、既存のジャンルからの派生ではなく、任意に様々なジャンルの音楽から抽出されたものという点で、非常に日本人の編集感覚的な音楽ムーブメントだったと言える。

米国音楽 VOL.10 特集「HCFDM100」

伝説の?インディロック雑誌、米国音楽の1997年冬号で初めて掲載されたHCFDM特集。海外勢Le Hammond Inferno、Stereo Total、Easy Tune、Andreas Dorauのインタビュー記事や田中知之×ダギー・ディメンジョナル(Gentle People)対談、当時のシーンについてのコラムに加え、”使える”disc100選(選者は田中知之、仲真史、梶野彰一、小暮秀夫、川崎大助)を掲載したことで、最初にHCFDMを可視化した誌面の一つとなった。

ということで、今回はその中で、田中知之が選出した20枚を、全部Discogsで掲載していく。引用はすべて当時の田中のコメント。
という長い前置きでした。

米国音楽 HCFDM 100 田中知之セレクション

Yello – Flag

80年代後半の混沌とした音楽シーンに君臨(ってほどでもないが)した、イタリアのホモ二人組。今思えば全作モンドっぽい仕上がりなんだけど、本アルバムは特にF1ものってことで、ハモやんよりも10年早かった。

田中はイタリアと記述してるが正確にはスイスの2人組。収録のThe Raceはサイモン・ハリスのブレイク&ビーツ集に引用され、それが小西康陽のGirl! Girl! Girl!のテーマに使われたという点で、HCFDMシーン的にも重要な作品。ちなみにThe RaceのシングルはDerrick Mayがリミックスしてる。

高橋幸宏 – Murdered By The Music = 音楽殺人

数ある高橋氏のソロ作でも僕はやっぱりこれが好き。特に”Bijin-Kyoshi At The Swimming School"って曲がTwo-Tone Skaとサーフィンとテクノががっちり手を組んだ超絶ナンバー

高橋幸宏の名盤。ちょうどこの時期には砂原良徳やSomething Wonderfulが参加したリミックス盤が作られている。Bijin-Kyoshi~はもともとベンチャーズに提供される予定で作られた曲だとか。

Nina Simone – My Baby Just Cares For Me (The Ultimate Dance Mix)

これはニーナ・シモンの超有名曲のエロ・ハウス・ミックス。ブートじゃなく87年に正式にリリースされたもの。スタンダードもリミックスやリアレンジでHCFDMに化けるという良いお手本でしょう。

ダンスミュージック初期のリミックス作品なだけに、かなり強引な作り。ほぼノリは歌謡曲のクラブミックスみたいな感じ。ちなみに筆者は長年WANTリストに入れてるが、まだ持っていない。

The Hardknox – Coz I Can

HCFDMの宝庫(といってもハズレもめちゃめちゃ多いけど)のスキントもの。ハードノックスの1stシングル(恐らく)は、子どもコーラスとリトル・ソニーばりのグルーヴィーなハーモニカをフィーチャーした"Fire Like This"で決まり。

SKINTの中ではかなりロッキンなノリで派手なブレイクビーツの2人組ユニット。シングルはSKINTから出ていたが、のちにアルバムはJIVE ELECTROから出た。ちなみに女性はBeats InternationalのLindy Layton。"Fire Like Dis"のブルースハープは本当にかっこいい。

Combustible Edison – Bluebeard

ハモやんのバンガロー企画のコンバチのリミックス集。エチエンヌのボブとピーター・トーマスとFPMのリミックスが入っている。自分で言うのもなんだが、僕の"F.P.M. OLD FASHIONED MIX"が唯一使える。

アメリカではSubPopからリリースしているオルタナティブラウンジコンボのEP。FPMの初期傑作リミックス。本当にこれはすごい。のちにラウンジダンスと呼ばれる音楽のすべてのひな形になってる。HCFDM初期の傑作。

砂原良徳 – MFRFM (Music For Robot For Music)

電気グルーヴの砂原氏ことマリン氏グレートワーク。僕たちはこの盤からどれだけ多くのことを学んだことか。今度ハモやんのバンガローからも12インチとアルバムのヨーロッパリリースが決定した。

言わずと知れた名盤CROSSOVERからのシングルカット。CROSSOVERと通称まりんDATのこの界隈への影響は非常に大きかった。この曲、本当に知らない人がいないくらいの頻度でかかってた。

コモエスタ八重樫 & His TPOrchestra – Land Of A 1000000 Dances 

忘れちゃならないHCFDMの日本でのパイオニアの一人、コモエスタ氏。ズンドコ・リフに女性スキャットとゲンズブール(?)しゃべりをフィーチャリングした"GO GO DE BB"をよく使わせてもらいます。レディメイドから出る氏の新作も最高。

おそらく、田中が言っている「氏の新作」は5th GardenのPanoramicaと思われる。意外とコモエスタ八重樫は仕事がいろんなレーベルからリリースされてるが、この時期前後から*********からのリリースが中心となり、日本のラウンジDJとしての地位を確立していく。

The Riddler – Ain't No Way

馬鹿・ドラムンベースを量産するジョーカーから出た決定打。アイネクライネナハトムジーク(クラシックの名曲)の超馬鹿ドラムンベース。あまりに変すぎてDJのお客がとまどうことうけあい。クラシックネタは今後要注目。

HCFDMのドラムンといったら、JOKERと即答するくらいネタモノの宝庫だったJOKER RECORDS。特に人気のあったのはこの曲とRock Around The Clock
ネタのやつ。Joker Recordsは一度、サイケアウツの招聘で関西に来日しており、その時はゲストDJで小西康陽が参加している。

Alëem – Why Hawaii ?

曲名どおり、なぜかハワイアンのスチールギターをネタにしたラガヒップホップナンバー。でも、このネタってBRAの"SOMETHING TO KEEP YOUR SANDWICHES IN"と全く同じ(でもALEEMのほうが先)。ハワイでもジャケはペンギンってことで人を食ってます。

この曲はビッグビートシーンでも比較的人気があったようで、向こうのコンピにも収録されていることが多い。HCFDMとビッグビートは聞き方がちょっと違って、HCFDMではどちらかと言ったら、曲全体よりもイントロのサンプル使いの異質さが評価されていた。

Goldbug – Whole Lotta Love

売れすぎて本家レッド・ツェッペリンに訴えられたって話でも有名なカヴァー曲の12インチ・ボーナス的トラック"アステロイド"は大胆なサンプリングといい、バカで大げさな展開といい、実は美味しすぎるビッグビート&HCFDMナンバー。

どちらかと言ったら悪名で有名なGoldbugは、実はAcid Jazzレーベルからのリリース。こういうバカにされがちな流行り物のEPをちゃんとディグって、そのB面曲などをフックアップしていくセンスが非常にHCFDM的でもある。

Pigbag – Papa's Got A Brand New Pigbag

80年代のいわゆるファンカラティーナものもHCFDMとしてもストライクの曲が多いのだけれど、このPOP GROUP一派の天下の名曲もやはり今でも踊れる1曲。後々出たハウスやテクノでのリミックス(カバー)も重宝する。

言わずと知れた有名曲。田中は後に自身のミックスCDでPostfixによるカバーのほうをピックアップしている。のちにはエレクトロシーンでも評価が高まっており、いわばずーっと人気のある曲。個人的には南アフリカでW杯があった時にでたブブゼラ・バージョンが好き。

Danski & Delmund Present: Nakatomi – Sing

詳細は一切不明のオレンジ・ヴィニールの10インチ盤。カーペンターズの名曲のハッピーハードコア・カバー。SL1200のピッチを-8にしてかけると女性ヴォーカルの声がカレン・カーペンターの声に聞こえる。子どもコーラス隊もグレイト!

詳細不明となっているが、オランダのハッピーハードコアアクトユニットの1枚。メンバーに日本人はいない。この曲は大ヒットしていて、向こうのヒット曲ミックスみたいなのにも収録されている。別盤ではDenice WiliamsのFreeをネタに使ってる。

Doop - Doop

オランダのHCFDMものといえば、こちらの方がイージー・チューンより先。アメリカでも日本でもヒットしただけにちょっと敬遠したくなる気持ちもわかるが、僕は仲君達と必死で彼らの12インチをチェックして回ってます。

オランダのユーロダンスユニットの曲で、UKではチャート1位にもなった大ヒット曲。当時、BeatUKを見てたような洋楽好きは一度はPV見たことあるはず。Doopは本当に当時、あらゆるシーンのDJがかけていた。ハウス×チャールストンという発想が完璧な1枚。今、Wikipediaを見て知ったんだが、この人たち、Peplabのメンバーなの!!!???

Various – Meltin' Pot ...Popular, Fashion Music

イタリアのイルマが現地の紳士服量販店の販促用に作った2枚組アルバム。エスカレーターのコンピ「NEW TWO」にも収録予定のDJ RODORIGUEZのお茶の間ドラムンベース"Personality"の為だけに買う価値あり。ORM GURUとかDJ SENSEIとかナゾの参加者多し。

Personalityは後にDJ RODORIGUEZのアルバムにも収録。薄いFPMみたいなラウンジブレイクビーツの愛せる名曲。上記の記述見て、えっ、NEW TWOに入ってるの??と思って確認したが、残念ながら収録されなかった様子。後にIRMAは、FPMや小西康陽などの日本人勢と積極的にコラボを進めるようになる。

Les 5-4-3-2-1 – "bus stop" sur le trottoir

昨年ピチカート・ファイブの小西さんと一緒にヨーロッパでDJした時に一番うけた日本の曲がこの12インチに収録の"les 5-4-3-2-1 et leur style de danse"。レ・ファイヴは残念ながら解散しちゃったみたい。サリー久保田氏のベースは最高!

先日、吉田豪の部屋にも出演して当時のことを少し話していたサリー久保田氏のユニット。"ジャズる心"のカバーが有名。上記曲はマンチェとBetty Booみたいなダンスポップが合体してグラムロック味をつけたような名曲。ベースもギターも打ち込みも直線的な音で、当時の音とは一線を画していた。

Mucho Macho – Bring Forth The Gelatine / She Devils

ムーチョ・マーチョのデビュー12インチ。ショッキング・ブルーの"ビーナス"meetsビッグビートって感じのナイスチューン"She Devils"がとにかく踊れる。2作目は最悪だった彼らだけど、コーナーショップのリミックスは良かったなあ。

まじで、Mucho Machoはこの1枚だけダントツによい。まあ、Venusネタは正規リリースは難しいだろうなとは思うが、メジャーに行ったらこの疾走感を失ってしまったのは本当に惜しい。途中で無駄に出てくる長いApacheのブレイクも最高。

Rampage – Priority One

一度発禁になったと噂の"モンキーズのテーマ"のドラムンベース・カバー収録のアルバム。とにかくみんなこの盤を探しているのだけどかなりレアな様子(僕は渋谷のリバプールでゲット!)。小西さんは12インチシングルを持ってる(ウラヤマシー!)

マジで一時期、みんなこれを探していた。CDで買ってしまったけど、後年12インチをdiscogsでゲット。小西康陽はいまだにDJでたまにかけているが、かけたくなるのもわかる名曲っぷり。つくりがここまで完璧なカバーはない。

Hugo Montenegro – Moog Power

僕なりのHCFDMを考えると、やっぱり立花ハジメ氏もカバーした超名曲"Moog Power"が元祖って気がしてならない。69年という制作時期を考えるとかなりアナーキーな楽曲であろう。ムーグとポップス絶妙なブレンド加減がお見事。

言わずと知れた元祖テクノ的な名盤の名曲。ディガー的なひとならたぶん全員持ってるんじゃないだろうかってくらいのレコード。ヒップホップのDJの家に遊びに行った時にもあったくらい。今、Discogsみたら、7インチもあるのか。ちょっとほしいな。

Bentley Rhythm Ace – Midlander (There Can Only Be One)

期待していただけにBRAのアルバムはいまいちグッと来なかったのだけれど、アルバム直後にリリースされた本12インチ収録の"SOMETHING TO KEEP YOUR SANDWICHES IN"を聞いてやっぱりBRAはバカだと再評価。スカmeetsハワイアンなビッグビート。

Aleemと同ネタと紹介されてるビッグビート。BRA(の1枚目まで)は本当にHCFDMに愛されたように思う。とはいえメジャーに行ったらサンプリング技術が思うように発揮できなくなってしまったのか、全体的におとなしくなってしまって、パワーを失ったのが非常に残念。

ということで、紙面で田中氏が紹介していた19枚でした。たぶんHCFDMと言われて想像するイメージとも日本さんビッグビートとも違う雑食感を感じられるのでは。
まあ、les Plusでこれがかかるとも思えないのだが、もし、この辺をかけるセットになっていたら、僕はむせび泣くと思う。
次回は梶野彰一編をお届けします。なんとか、les Plusまでには…

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