武家の家紋は銭磨き【カタバミ】
「あれ、これうちの家紋だ」
カタバミで10円玉を磨いていたら、Nさんが思い出したように言った。
カタバミは、ハートが3つ重なったような葉と、黄色い花が特徴の小さい野草だ。
カタバミはシュウ酸という成分を含んでいて、黒ずんだ10円玉を磨くとピカピカにできることから、“銭磨き”の別名がある。
理科の実験で、黒くなった10円玉を酢に浸したことを覚えている人もいるかもしれない。
10円玉の黒い汚れの正体は、酸化銅。
黒い10円玉を酢に浸すことで、酸化銅を酢酸と反応(溶かす)させて10円玉を綺麗にする実験だけど、それを道端に生えるカタバミでお手軽に体験できる。
カタバミが自分の家紋だと気が付いたNさんは、家紋の図柄とその名称が片喰紋(カタバミモン)だということを知っていた。
ただ、カタバミという植物を意識して観察したのは初めてとのこと。
片喰紋(カタバミモン)は日本の家紋のひとつ。
カタバミはその繁殖力の強さや、一度根付くと絶やすことが困難なことから「家が絶えない」に通じ、世襲を大事にする武家の間では“子孫繁栄”の縁起担ぎとして家紋の図案に用いられてきた。
カタバミのように、虎杖紋(イタドリモン)、葦紋(アシモン)、撫子紋(ナデシコモン)など、多摩川でも観察できる野草が家紋になっていたりする。
家紋に用いられる植物は、その生態が関係していることが多い。
実際に植物を観察することで、更に深く自分自身のルーツや歴史を知ることができるだろう。
Nさんは、自身のルーツが武家(の可能性がある)ということを知って
「おれ、武家の貫禄がでてるでしょ」と言うようになった。
さっきまでカタバミで10円玉を磨いていただけなのに、片喰紋というだけで現金なものである。
将軍様、その家紋で10円玉をピカピカにしてください。
カタバミ
漢字:片喰
別名:銭磨き
花期:春に黄色の花を咲かせる
生息地:多摩川の広場やグラウンド
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