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4本足の女神との日常∼ふれあいとぬくもり~

女神との日常は、彼女に触れることが多いものだ。
朝起きて、真っ先におこなうのは、「おはよう」のワシャワシャだ。

先ずは2階から彼女を抱きかかえて、降ろす。
朝いちばんからゼイゼイする大仕事。
女神の重さに大きくなったことを実感。
モフモフ具合でトリミングの時期と毛玉ができていないかのチェックになる。

お散歩担当の出勤。
どこか遠い目をしながら、静かに「行ってらっしゃい」と見送る。

遊び担当の出勤。
玄関から出ていこうとすると激しくわんわん。
頭をナデナデしてもらって、時にはワシャワシャしてもらっても激しくわんわん。
これは「行かないで」なのか「気を付けるんだよ」なのか判別が難しい。

さあ、ここからが日がな毎日の始まりだ。
朝一番に庭に出て、お日様にあいさつ。
誰か通らないか、毎日警らを欠かさない。

部屋に戻るとごはんタイム。
女神は嫌いなものは残してでも食さない。
例えお腹がグーグー鳴ろうとも、絶対に食べないことを小さな頃から検証してきた。
フードに好みのものをトッピングしたごはんを待つ間、
食事担当の隣で距離を詰めるので、ぬくもりをもろに感じる。

一日のメインイベント、お散歩タイムは大はしゃぎだ。
こんな力があるのかとばかりに、「早く歩こうよ」と引っ張りまわされる。
しっぽが優雅に揺れる後ろ姿を眺めるのは、至福の時間だ。
歩きながらたまにしっぽに触れてみる。
触れた瞬間は、少し下がるしっぽがすぐにフリフリと楽しそうに横に揺れているのは、こちらも嬉しくなる。

昔話をしよう。
遊び担当が高校生の頃だった。
風邪をひいて寝ていたので、女神も看病しているように寄り添って寝ていた。
食後に病院でもらってきた薬を服用したところ、全身に大きな蕁麻疹のようなものが現われ、そのうち息苦しさを訴えた。
取るものもとりあえず、救急救命に向かったところ、アナフィラキシーショックだった。
もう少し遅かったら…と救命医の話を聞いた時は恐ろしくてゾッとした。
長い時間の治療の末、遊び担当はそのまま入院になった。
後ろ髪を引かれる思いでごはん担当は明け方の自宅に戻った。

自宅には本来いるはずの散歩担当は、この時は海外にいた。
いつも大事な時に頼りにならに事が多い。
ひとりの部屋に戻ったとき、気持ちが緩んだのか恐怖で身体が震えていた。
そんなときだった。
背中に重くて温かいぬくもりを感じた。
そう、女神が全体重を預けて寄りかかっていたのだ。
「よく頑張ったね」
「ひとりで大変だったでしょ」
「おつかれさま」
「もう大丈夫、一緒にいるから」
そう言ってくれているようで、女神を抱きしめながらわんわん泣いた。

女神に触れて幸せを感じる瞬間はたくさんある。
毎日どこかしら撫でまわして、ワシャワシャして、しっぽやら鼻やら触っている。
でもあの日の、あの明け方の女神のぬくもりは、一生忘れない。


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