夏目アラタの結婚 観賞
一 十一
にのまえじゅういち
と読みます。正しく読めたあなたはSPECマニア。ニの前だからにのまえ。普通の一軒家の表札に「一」とだけ書かれていたシーンが印象的。
そんな堤幸彦作品の今作。
カールルイスばりの後半の伸びが素晴らしかった。
品川ピエロと呼ばれた連続殺人犯の女性と獄中結婚をする児相職員、夏目アラタの物語。
前半は正直ぼんやりな感じで進んでいて心配だったものの、中盤以降徐々に徐々に焦点が絞れていき、いわゆる伏線も回収しつつ、満足な着地へ。
自分より大変だったり不幸に見える人を見つけて、この人よりはマシ、と思うことで自分を納得させる。それはきっと大なり小なり多くの人が持っている感覚で、そのことに自分が気付くかどうか、それをどう咀嚼するか。
個人的には、誰かと比べることで自分の幸福を感じることは自然な感情に思える。それは違うと声を上げることのほうが偽善に思える。本気でそう思う人もいるのだろうけど。
ミステリー作品ではなく、人間讃歌作品。発想なんかも含めてジョジョの奇妙な冒険に通ずるような作品でした。
佐藤二郎さんのあのキャラはクセになりますね、佐藤節全開で。