デザイン漫遊記② 仙台箪笥
前回の「デザイン漫遊記① スティックレー家具」で私の推しの家具を紹介しましたが、今回はおふくろが約30年前に知人の骨董屋で一目惚れした家具を紹介します。
仙台箪笥とは
その家具とは、仙台箪笥(せんだいたんす)です。
現代の住宅ではウォークインクロゼットが主流で、箪笥自体を持っている家が少なくなっているかも知れないので、まず「仙台箪笥」とは、何かを紹介します。
仙台箪笥は、江戸末期から製造されはじめ、明治、大正にかけて現在の仙台箪笥のかたちが定着したといわれています。
主に、武士が刀を入れることを目的として作られた箪笥は“野郎型”と呼ばれ、刀の鞘や裃(かみしも)や証文を納めることができる幅4尺(約120センチ)、高さ3尺3寸(100センチ)の大きさに作られていました。
木地は欅(けやき)を主体とし、木地呂(きじろ)塗りで仕上げ、牡丹や唐獅子などの文様の手打ち金具で装飾しており、堅牢で重厚な箪笥で、「指物(さしもの)」「漆塗り」「金具」の3つの熟練した職人技によって生み出されています。
2015年6月18日には経済産業大臣指定伝統的工芸品になりました。
仙台箪笥の特徴
仙台箪笥の最大の特徴である「指物」「漆塗り」「金具」は、現在でも3工程全て分業で、熟練の技が冴える職人の手作業で行われています。
仙台箪笥を語る上で「指物」「漆塗り」「金具」の3工程無しには語れません。また、この3工程の大変さや凄さを知ってもらいたいので、詳細については以下のURLを是非御覧ください。
https://www.thebecos.com/collections/sendai-tansu
http://michinokukougei.com/process.php
「指物」「漆塗り」「金具」の3工程の大変さや凄さを学んだ後で、もう一度実際の仙台箪笥を見返した感想を述べたいと思います。
工程1「指物」
「指物」とは板と板、板と棒、棒と棒を組み、指し合わせる仕事のことを言います。ここで使用される木材は、原木を伐採してから木取りするまで約30年もかけて木材を自然乾燥させます。
効率や大量生産によるコストメリットを重視しがちな現代において、目立たないが非常に重要な工程を大切に継承している事に驚きです。
だからこそ、精密で耐久性に優れ、代々引き継がれて使えば使うほど味わい深さと愛着が生まれてくるのだと思います。
工程2「漆塗り」
「漆塗り」の工程では、木の木目が透けて見える半透明の鏡面のような艶めく光沢が見事な「木地呂塗り」の技術を用いています。
下塗、中塗、上塗すべてに透明度の高い透漆(すきうるし)を使用し、塗師が漆を塗っては磨き、また塗っては磨くという根気のいる仕事を何度も積み重ねることで、指物の木目の美しさをより際立たせており、本当に感銘を受ける美しさです。
工程3「金具」
「金具」の取り付け工程では、職人が一つひとつ文様を打ち出す「彫金手打」の技は圧巻です。
槌と鏨(タガネ)で1.2mmの鉄板に立体的な文様を彫っていくのですが、槌と鏨が一定したリズムを奏でるのは驚きです。
やはり一番目を引くのは、箪笥の正面に据えられた牡丹や龍、唐獅子の「錠前金具」の豪華な文様でしょう。それは、箪笥全体の美しさを何倍も増しています。また、箪笥に美しい表情を与えたのみならず強度も生み出しています。
まとめ
この様に指物師、塗師、彫金師の3者の熟練した職人の技の結晶によって生み出された仙台箪笥は、全国に類を見ない華麗な箪笥となっています。
明治、大正時代に輸出された仙台箪笥は、現在イギリス、オランダでは随分と人気があるとの事です。
木目の美しさや質実剛健な造形は前回「デザイン漫遊記① スティックレー家具」でも紹介しましたが、自然が作り出した美しさは人種の垣根を超えて万国共通で感じるのでしょう。
今、リビングルームのスティックレーのソファに座り斜め左側に見えるおふくろの形見の仙台箪笥を眺めながら、おふくろがそうであったように国内外で仙台箪笥の華麗な美しさに一目惚れしてくれる人々が増える事を願いっています。
筆者経歴
株式会社346 大野 清
米国大学で会計学・機械工学を修学。帰国後、PTC ジャパン、ソリッドワーク ス・ジャパンなどでテクニカルサポート領域の管理職を歴任し、2022 年より株 式会社346に参画。346社では生産管理・CAD システム運用を担当。
提供:株式会社346
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