空気の読めない検事が悪に切り込む ドラマ「秘密の森」 #431
「KY」が新語・流行語大賞にノミネートされたのは2007年のことでした。もちろん、それ以前から「空気を読む」はマナー?的に存在していたけれど、最近では、「空気は読むな!」とも言われていますね。
空気が読めた方が世渡りは楽かもしれない。けど、空気が読めない方が本質をたぐり寄せられるのかもしれません。
幼い頃に脳手術を受けた後遺症で、まったく空気の読めない大人になってしまったのが、ドラマ「秘密の森」のファン・シモク検事です。検察の内部不正を暴こうとするも、自身がスケープゴートにされてしまい……というドラマ。
感情を感じ取ることができないため、他人に配慮したり、上司にへつらったりということができないファン検事。空気の読めない彼は、悪に切り込むことができるのか!?
相手がなぜ怒っているのか、なぜ笑っているのかが分からない。
これは社会生活を営む上でかなりのハンディになりそうですよね。「感情をなくす」とは、言葉以上の試練があるのだなと感じます。
ソン・ウォンピョンさんの小説『アーモンド』では、主人公の少年が表情と感情をパズルのように組み合わせ、「喜」「怒」「哀」「楽」「愛」「悪」「欲」を丸暗記させられていました。
昨日ご紹介したドラマ「サイコだけど大丈夫」には、自閉スペクトラム症のサンテが登場します。サンテは絵を描くことが大好きなのですが、「人間」を描くことができません。なぜなら、表情が読めないから。
ファン検事は司法試験を突破して検事になったものの、後ろ盾もなく、上司に取り入ることもできず、一匹狼でした。それが、ある事件をきっかけに刑事の仲間ができます。彼女のおかげでチームが出来上がっていくのですが、彼自身はやっぱり「無表情」なんですよね。
チョ・スンウは、映画「インサイダーズ/内部者たち」でもスケープゴートにされていました。こちらではもっと熱い検事役です。
俳優として、演技するとき「反応しない」のはとても難しいことです。韓国のテレビ番組の企画で、ファン検事を演じるチョ・スンウの表情をコンピュータ分析したそうです。結果がこちら。すげー。笑
怒り:0%
軽蔑:0%
逆上:0%
怖れ:0%
幸福:0%
無表情:99.7%
悲しみ:0%
驚き:0%
『ガラスの仮面』でオオカミ少女を演じることになった北島マヤは、山にこもって野生動物の表情=無表情の表情を手に入れていました。崖から落ちたり、食べ物がなかったりと、けっこう危険な目に遭っていたんですけど。
天才女優の上をいくチョ・スンウ。すごいぞチョ・スンウ。
そんなチョ・スンウの演技はもちろん、彼を助ける刑事のペ・ドゥナとの掛け合いも見どころです。冷徹な検察官と、破天荒な女性刑事のコンビが追う事件は、すべての出演者に犯人の可能性があるんです。回を重ねるごとに新たな証拠が出てきて、どんどん「コイツ、怪しい!」が変っていきます。
2017年の最高傑作とも呼ばれる「秘密の森」。イギリスのドラマ「シャーロック」や、「スリー・ビルボード」のような推理劇が好きな方には特におすすめ。
10月からNetflixでシーズン2の配信が始まるそうなので、いまのうちにぜひ。
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