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奇跡を願うハートフルなミュージカル 映画「クリスマスの贈り物」 #347

「I Have a Dream.」

「わたしには夢がある」から始まるキング牧師の演説は、1963年8月28日、「ワシントン大行進」の中で行われました。

この時、別の演説原稿があったものの、人々に自分の言葉が届かないことに気がついたキング牧師。途中で演説を止めてしまいます。そこへ、マヘリア・ジャクソンが「あなたの夢をみんなに伝えて」と呼びかけます。そうして、

「I Have a Dream.」

から、17分に及ぶスピーチになったとのこと。

公民権運動に大きな影響を与えたキング牧師。彼からもらった懐中時計を家宝として大事にしていたのに、孫が質屋に入れようとしていたら?

Oh, noooooo~!

そんな叫び声が上がりそうな映画が、「クリスマスの贈り物」です。

<あらすじ>
ボルチモアで母と暮らす少年ラングストン。ローンが払えず、クリスマスなのにアパートを追い出されることに。彼だけニューヨークの祖父母の家で暮らすことになります。ところがラングストンはニューヨークに到着して早々、カバンを捕られてしまい、一文無しに。電話を借りようと入ったホテルで、泥棒と間違えられてしまい……。

ケイシー・レモンズ監督にとって、2作品目の映画になります。デビュー作である「プレイヤー/死の祈り」は、神秘の力と大人の官能が入り交じるサスペンスでした。

が、「クリスマスの贈り物」はほのぼのしたハートフルなミュージカル。祖父との最悪の出会い、窃盗、詐欺と、どんどん落ちていきそうなランドルフ。すべては母のため、ふたりで住む家を確保するための行動です。

映画の中で、ある人物がランドルフにラングストン・ヒューズの詩を読み上げます。

ラングストン・ヒューズは「ハーレム・ルネサンス」の指導者と呼ばれている人物だそう。マンハッタンのハーレムにおける、アフリカ系アメリカ人のアート、文学、音楽、文化、芸術を盛り上げた活動が「ハーレム・ルネサンス」です。

奴隷制と南北戦争、人種隔離政策といった激動の時代を生き抜き、ステレオタイプなイメージに苦しめられていた人々が、芸術によって誇りを取り戻す運動だったようです。

先送りした夢はどうなるのだろうか?
レーズンのように干からびるか
傷のように膿んで流れ出るか
腐肉のように悪臭を放つか
甘い菓子みたいに生地と砂糖に覆われるか
重い荷物のように垂れ下がるか
吹き飛ぶか…

ランドルフにこの詩の魅力を教えた「ある人物」は、実は……という展開で、ほのぼのしたクリスマスの「奇跡」を描いています。

でも、登場人物の中には若くして妊娠し、行き場がないカップルも。出口なし、絶体絶命な歌詞にウルッとしました。

この映画の音楽を担当したのはローラ・カープマン。フランシス・フォード・コッポラの妻エレノア・コッポラの監督作品「ボンジュール、アン」などを手がけています。

「プレイヤー/死の祈り」や「ハリエット」はジャズトランぺッターのテレンス・ブランチャードなので、明るさが違うなーという印象を受けました。

現在劇場公開されている「ハリエット」は、なにより主題歌を歌うシンシア・エリヴォの歌声に惚れたんですよね。こちらもおすすめの映画です。

街角のクリエイティブに書いたコラムはこちら。


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