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【ボタンを紐解く】Albert Parentの人物ボタン
Albert ParentもといA P and Cie社のボタンに関しては以前noteでざっくり紹介したのですが、どうやら人物ボタンなるシリーズがあるようなので調べた範囲でまとめておきます。
前回の記事はこちら。
本来ならば、全種類ラインナップして写真付きで載せたいけれど(そんな一覧があればわたしが欲しい)、100年近く前のボタンにそんなことを求めても無理な話。ちまちま集めた写真を並べます。
帽子を被った女性
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こちらは、わたしのコレクションです。深夜まで粘って海外のオークション経由でフランスから入手しました。後に他の人物ボタンを紹介していきますが、女性をモチーフにしたボタンはこちらしか出会えていません。
羽根飾りの付いた18世紀頃と見受けられる帽子を被った若い女性。フェミニンな服装とは対照的にその目はしっかりと前方を見据えています。
裏面には3本の曲線が伸びており、その交点にボタン穴(シャンク)が付いています。この3本線によるシャンクこそ、Albert Parentの人物シリーズの特徴とも言えるでしょう。人物をモチーフにしたボタンは全て大きさが30mm前後で、背面の作りは調べた限りほぼこのようなシャンクになっています。
3本線にはそれぞれ「PARIS(パリ)」「A P&CIE(Albert Parent Company)」「DEPOSE(登録商標)」と書かれています。
大きさは28mm。
アーサー王
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アーサー王は、5世紀後半から6世紀初めのブリトン人の君主で、6世紀初めにローマン・ケルトのブリトン人を率いてサクソン人の侵攻を撃退した人物として有名です。実際に実在したかどうかは不確実であるものの、その活躍は現代でもアーサー王伝説として語り継がれています。
見る者が思わず怯んでしまうような鋭い眼差しに頑丈な甲冑を装備したその姿はまさに歴戦の兵士。
こちらのアーサー王のボタン、実は色々なバリエーションがあります。以下はそのデザイン違いたち。
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こちらはまさかの3本線のシャンクではないパターン。真鍮製のアーサー王の板が周辺を彫られた木製ボタンに嵌め込まれています。
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こちらも背面が3本線シャンクではなく、19世紀後半〜20世紀初頭のヴィンテージボタンに多く見られる、黒い金属板にステンレスのボタンシャンクが飛び出た形になっています。
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上のボタンの3本線シャンクバージョン。
やや小さめです。
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珍しいスクエアバージョン。
背面は3本線シャンクです。
ちなみにAlbert Parentのボタンでここまでバリエーションが豊かなのはアーサー王のみです。何故にアーサー王だけここまで種類豊富なボタンが製造されたのか謎ですが、海外では人気なデザインなのかな?
トロイの木馬のヒーロー
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訳しながら「トロイの木馬のヒーローとは!?」と思ったのですが、こちらは持ち主のオーナーが付けた名前なので正式名称は不明です。トロイの木馬のヒーローということは、つまりトロイ戦争で巨大な木馬に隠れて戦ったギリシャ兵のことですね。
直径36mmと、他と比べて断トツで大きなボタンですが、背面はお馴染みの3本線シャンクです。
笑うピエロ
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こちら「laughing Caino the crown」という名称で販売されていましたが、Cainoが誰を意味するのか不明でピエロとして紹介します。
37mmという大きさは最早ボタンというかブローチでは?という感じ。3本線シャンクですが、こんな小さな穴一つで安定して縫い止められるのか疑問です。
バイキング
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特徴的な兜を被ったバイキングのボタン。こちらはボタンをブローチに加工したものですが、絵柄が分かりやすいので参考までに。
人物の背は木製となっています。
乃木希典
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すみません、実はわたしこのボタンを見るまで乃木希典が誰なのか存じ上げなかったのですが、日清戦争や日露戦争で活躍された陸軍大将の方なのですね。
乃木希典の残っている写真を拝見しましたが、本当にこのボタンの方...?というぐらいあまり似ていない。しかし、多くのオーナーが乃木希典として紹介しているボタンなのでおそらく製造元もそのつもりで作られたのかなと。
わたし的には乃木希典というより七福神の福禄寿のようにも見えますが......
まとめ
このように様々な人物ボタンがAlbert Parentの作品として残っています。中には1800年代のものとして紹介されているものもありましたが、Albert Parentが製造元であるならば1912年〜1939年の間に作られたと考えるのが妥当でしょう。
また、新たに見かけたら更新するか、新しくnoteを書いて紹介します。
もしかして、都内にあるボタンの博物館に行けば他の人物ボタンにも出会えたりするのかな?
〆