アクリル絵具でミニチュアペインティング④防御力UP! アクリル特有の弱点と対策 #Warhammer
導入(省略可)
こだわりの配色でペイントした自分だけの作品! できるだけ長く、良好なコンディションを維持したいものですね。再塗装という道も、あるにはあるけれど………
この記事は、ミニチュア作品の塗膜保護について、水性アクリル塗料やアクリル絵具などの水性塗料を愛用する諸姉諸兄に向けて簡便にまとめ、ご紹介するものです。
通りすがりの方々にも、何らかの助けとなりますように。
水性アクリル塗料&アクリル絵具の弱点
変色・変質のリスクファクター
ホビー塗料にもアクリル絵具にも共通して、変色や変質のリスクが付いて回ります。それらの原因で特に大きいと考えられる要素は、以下の二点です。
対象側(樹脂製品全般)に含まれる可塑剤・離型剤・汚れなどの付着に起因する変色・変質(黄変・加水分解)
塗料・絵具(アクリル樹脂エマルション)に含まれる不飽和炭化水素・紫外線・熱・酸素に起因する変色(黄変・黒ずみ)
変質のリスクファクターはざっくり挙げても身近なものばかり。それでも、いくつかの対策を組み合わせることで防御力UP(物理)を狙うことができます。ぜひ可能な範囲で試してみてください。
アクリル絵具は蛍光色・鮮やかなピンクレッド系に注意
アクリル絵具の多くは耐光性に優れることを売りにしていますが、どのメーカーの絵具にも耐光性の低い色が存在します。中でも気をつけたいのが蛍光色(Fluorescent)。これらの色材は、分子結合の弱い化合物に由来し、光(特に波長の短い紫外線)によって損傷しやすい性質を持っています。つまり「耐光性が低い」というわけです。
これに関連して、「オペラ」「ローズ」といった系統の名前を持つ鮮やかなピンクレッド系の色にも気をつけて。これらは複数の色材から構成されますが、その中に蛍光ピンクの色材が含まれる場合があります。鮮烈な色彩は、光で飛びやすい弱点とのトレードオフから成り立っているのです。
耐光性ほか色材に関する情報は、絵具の各メーカーサイトのカラーチャートで確認することができます。お買物前にチェックしてみてくださいね。
参考: ホルベイン アクリリック ガッシュ カラーチャート
https://holbein-shop.com/?mode=grp&gid=1439790
参考: ターナー色彩 アクリルガッシュ カラーチャート
https://www.turner.co.jp/art/gouache/
………とはいえ!
耐光性皆無でも! 光らせたくなるワンポイントがある! ゆえに選んでしまう蛍光色!! わかる!!!
「耐光性が低いからその色は選ぶな」とは申しません。きっと運命のカラーというのもあるのでしょう。Ok, 大丈夫! たかだか数日直射日光に当てたところでどうということはないはずです。それに、先人達は敵ユニットのみならず、紫外線とも闘ってきた歴史があります(本当か???)。
対策していきましょう。
コート剤で塗膜を保護しよう! バーニッシュ探訪カタログ
ペイント完了後にできる事は、塗膜を保護すること。アクリル絵具で仕上げた作品には、アクリル絵具用のバーニッシュ、またはウレタン樹脂系のトップコート剤がよく合います。
注意: コーティング完了後は、コート剤を除去するまで加筆ができなくなります。再塗装を行う可能性があるならば、コーティングなどせずに自然の経過に任せるのも一考です。
ターナー色彩のコート剤(耐光性優位)
U-35 グロスバーニッシュ(980)/マットバーニッシュ(982)
水性アクリル系のコート剤です。その強みは、全工程を室内で完結できること。水やペンチング・ソルベントで希釈すると楽に筆塗りすることができます。弱点は、耐光性を樹脂そのものに求めていること。ゆえに、紫外線吸収剤が配合されたコート剤ほどの高い効果は期待できません。
ちなみに「U-35」は、ターナー色彩アクリル絵具のハイエンドラインです。名前がちょっとね…その年齢をとうに過ぎちゃった私は使っちゃダメなのかなって…
商品ページ(一覧の末尾近く): https://www.turner.co.jp/art/u35/medium/
水性UVカットクリア(全ツヤ/半ツヤ/ツヤ消し)
アクリルウレタン系のコート剤です。エアブラシで吹き付けるタイプ。その強みは加工対象の広さ。紙からプラまで、幅広い素材に使用できます。弱点は、厚生労働省の定める危険有害物質が含まれること。SDS(Safety Data Sheet=安全シート)をしっかり確認の上、慎重に取り扱わなければなりません。作業へのハードルと単価の高さがネックだな、と感じます。
商品ページ: https://www.turner.co.jp/brand/uvcutclear/uvcutclear-hantsuya/
ホルベインのコート剤(耐水性・強度優位)
アクリリックメディウム AM492,493 屋外用トップコート
主成分はシリコン変性アクリル樹脂。品名に「メディウム」とありますが、絵具に混ぜるものではなく、上塗り専用です。品番の違いは内容量(AM492=200, AM493=1000cc)。塗膜はツヤ有です。UVカット効果については不明ですが、耐候・耐水性が売りとあって、防御力(物理)はあります。強みは丈夫な塗膜。弱点はツヤ消しの扱いがないこと、乾燥時間が一晩程度かかることです。
商品ページ(AM492): https://holbein-shop.com/?pid=145385866
アクリリックメディウム AM570番台 バーニッシュ(ボトル)
水性アクリル系のコート剤です。クリスタルはツヤ有り、マットはツヤ消し。前述U-35で説明したそれと同等に、全工程を室内で完結できることが強みです。弱点も同じく、耐光性を樹脂そのものに求めていること。紫外線吸収剤が配合されたコート剤ほどの効果は期待できません。
優先したいものがUV対策であればターナー、耐水・傷防止であればホルベインのバーニッシュを選ぶと良いでしょう。
商品ページ(クリスタル): https://holbein-shop.com/?pid=105212254
アクリリックメディウム AM590番台 バーニッシュ(スプレー缶)
アクリル系スプレー形態のコート剤です。グロスがツヤ有り、サテンが半ツヤ、マットがツヤ消し。とても容易に満遍なくコーティングできることが強みです。弱点は先述のアクリル系バーニッシュ各種と同じく、耐光性を樹脂そのものに求めていること。紫外線吸収剤が配合されたコート剤ほどの効果は期待できません。
商品ページ(グロス): https://holbein-shop.com/?pid=105212262
ペイント前の段階からできる対策も
ペイントの対象側(樹脂製品全般)に含まれる可塑剤・離型剤・汚れなどの付着に起因する変色・変質(黄変・加水分解)への対策は、ペイントに着手する前の段階からの対策実施がおすすめです。
その対策とは単純明快、「ペイント対象・器具・手指を清潔にすること」!!
タバコの煙、手指の脂、このあたりが最も想定されるリスクファクターです。その都度洗ったり拭いたりすれば簡単に落とせますが、時間が経てば沈着しやすく、その上にペイントやコーティングなどが重なれば、益々除去しづらくなってきます。
喫煙後、同じ空間で作業する場合はよく換気を行いましょう(というか、禁煙を全力でおすすめします)。
適時ハンドソープで手を洗いましょう。
中性洗剤(食器洗い用など)でペイント対象を洗浄するのも良いでしょう。
作業中のオヤツには、ポテトチップス以外のものを検討しましょう。
〆(省略可)
お疲れ様でした! 今回も、長々とした記事にお付き合い頂き、ありがとうございました。
制作中も、ゲーム中も、ながらポテチはやめておいたほうが良さそうですね。そしてぜひ、適時の手洗いを! 可能であれば禁煙も!! (やかましい)
冗談みたいに思われるかも知れませんが、塗膜の中や表面に不純物を寄せ付けないことこそが、塗膜を良い状態に保つ対策の肝となってきます。この記事でご紹介した対策以外にも、要注意ポイントが見えてくるかも知れません。今日の作業も代り映えのない工程かも知れませんが、ちょっと視点を変えて観察してみてはいかがでしょうか。
………さて、ここまで一連の記事は、私の自学自習・試行錯誤の全容のつもりで共有してまいりました。皆さんのお役に立てているでしょうか?
私のnote記事について、お気づきの点やリクエストなどありましたら、Xアカウント( https://x.com/335_p )までご連絡ください。また、ミニチュアペインティングにまつわる失敗談・武勇伝・こだわりポイント、ご愛用のアイテムについての情報などなど、ゆる~く募集しています。いつでも気軽にお寄せください。
それではまた!!
(次回更新未定………でも、遠くない内に)