背景
児童手当の所得制限撤廃が、自民党幹部から国会の質疑で出されるなど、日本でも普遍的リベラリズムに則った福祉政策がついに生まれるかと期待されたが、既に縮小傾向にある。自民党は元来保守政党であり、これ自体はおかしな話ではないが福祉国家として後発国であることによる社会の閉塞感は限界に達しているに思える。
しかし、国民の間では、所得制限撤廃も単純な世代間対立つまりデモクラシー民主主義と揶揄されて話が進展しないが、今の日本に必要なのはポスト日本型福祉社会をリベラリズムに基づいて再構築することであると考える。
そのための研究領域とおすすめ書籍をまとめてみる。
(1)政治経済学_福祉レジーム
概要
日本を世界の中で位置づける際に、「かつてGDP2位の経済大国」「ジャパン・アズ・ナンバーワンと称された国」と、過去の栄光を起点に考えることが多いが、率直に不毛な議論であると思う。単純な経済規模で見るのではなく、国家としての質を見るべきで、福祉レジームはそのための有用な視点を提供してくれる。まず福祉レジームの観点で日本を国際社会の中で位置づけることが、日本の未来を考える上で極めて重要に思う。
国家は福祉国家として収斂していくという考えのもと、国家や地域単位での類型化を試みる研究。ベースの類型化は以下の3つで、日本はどれに当てはまるか?等の研究が進んでいる。
①自由主義レジーム:イギリス、アメリカ
②保守主義レジーム:ドイツ、フランス、南欧
③社会民主主義レジーム:北欧
日本は?
なぜ北欧は昔から福祉国家?
日本を始めアジア諸国をどのように捉えるかは多様な議論がされている。福祉レジームはデンマーク出身の政治学者であるエスピング-アンダーセンが作った理論であるが、欧州初の理論をそのままアジアにも適用できるのか、独自の理論がアジアから生まれるのか等まだ議論が続いている。
おすすめ書籍
(2)家族社会学
概要
上記の福祉レジームの中でも、家族や働き方により焦点を当てた研究領域
欧州諸国でも人口減少に歯止めをかけることに成功した国とそうでない国があり、日本との相違はなにか。
アジアNIESは日本よりも少子化が急速に進んでいて、その共通項はなにか?
一方、人口減少自体は経済成長と必ずしも相関しないこと、人口増加よりは予測がつくので対処が行いやすいなど、人口減少そのものをネガティブに捉えない議論も多い。(マクロ経済学や都市工学の領域なのでここでは割愛)
おすすめ書籍
(3)日本的雇用システム_労働法、労働組合
概要
おすすめ書籍
(4)日本的雇用システム_雇用・教育・福祉の歴史社会学
概要
おすすめ書籍
(5)日本的雇用システム_労働経済学・人事管理
概要
「遅い昇進、ブルーカラーのホワイトカラー化」等日本企業の人事管理の特徴を研究する分野では、製造業など中長期の事業ライフサイクルが求められる業界においては、独自の強みとしてうまく作用したことはわかっている。その限界も近年は指摘されている。
しかし、日本では欧米式のジョブ型こそ目指すべきものとしてメディアでは報じられているが、欧米はジョブ型からのシフトを目指している。
なぜ欧米は脱ジョブ型を目指すのに、日本はジョブ型を目指すという矛盾が生じるのか。
おすすめ書籍
メンバーシップ型・ジョブ型の提唱者である濱口氏を尊敬する人事コンサルタントの海老原氏による日本企業が人事をどう作るかを歴史や国際比較も踏まえて現実解を記したもの。
「日本ではジェネラリスト・欧米ではスペシャリストの育成が主である、年功序列は日本でのみ見られる特殊な事象」などの通説を各国比較から真実に迫る。通説を批判的に検証しながら、小池氏が日本企業に特徴を見出すのが、「ブルーカラーのホワイトカラー化」である。日本企業の人事管理や組織を世界の中で位置づけたい時におすすめの1冊。
(6)財政学
概要
おすすめ書籍
(7)財政社会学
概要
おすすめ書籍
(8)複雑怪奇な社会保障と税の仕組み
概要
日本の健康保険の歴史は1922年まで遡る。そう、戦前の枠組みを未だ維持している。日本は社会保険をベースとしながらも、実態は税に近く、それが自分たちの税金が何に使われているかわからないことに繋がり、政府への不透明感と繋がっているといえる。
日本の医療保険制度を理解するにも、メンバーシップ型の概念が必要になる。日本は大企業の企業別組合から始まり、それを残存させたまま、中小企業の被用者、地域保険と拡大させていった。
おすすめ書籍