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一月の星々、ふりかえり|140字小説

140字小説コンテスト「月々の星々」
一月のお題は「結」でした。

結、どれもこれも大変な難産でした!
書や光はすらすら書けたんですが、この違いは何だろな……? 一文字では使用しづらい文字だったから? 単に「結」という字を混ぜ込むだけでなく、「結」というお題を生かした話を書こう、と自分で目標を設定してしまったためにさらに首をしめてしまった気がします。

(追記)
no.5が予選通過しました。煩悶しながら捻り出した甲斐がありました…!
ではふりかえり。

no.1
舞が結髪したのは十五の時だった。結い手は祖母が務めてくれた。当代きってのかんなぎの手で束ねられた髪は濡羽色に輝き、芯から淡く発光した。髪結いとは神結い。天地と人を結ぶ触媒。生まれたままの無垢の髪は舞の鼓動にあわせてしゃらんとふるえた。冬だった。舞はまだ十五で、恋も知らなかった。

真夜中にむにゃむにゃと「結」のネタを考えて「舞の結髪」という謎単語をメモ帳に残して寝落ち。そこから生まれた作品。結髪は「けっぱつ」と読みます。たぶん結のつく二字熟語とかを検索していて思いついたんじゃないかな……。
何がしかの小説の冒頭のような雰囲気になりました。「恋も知らなかった」という締め方が個人的には気に入っています。

no.2
ばば様は口伝えで物語る。じじ様は星を結んで夜空を彩る。文字もなく筆もなく、羊飼いの私達はそうして一族の歴史を紡ぐ。天の大河より産まれ、草原をめぐり、子をもうけ、老いて死ぬ。魂はあの青い星に、肉体は土に。「次はお前が物語り、お前が結ぶのだよ」かわいた風がささやき、杖が天を指し示す。

これも真夜中むにゃむにゃメモの「星を結んで夜空を彩る」から生まれました。「結」のイメージが一番強く出たかなと思います。

no.3
妻の故郷では指切りを指結びというのだと、初夜の床で教えられた。そして指を結ぶのは、結婚という縁を結んだ相手だけなのだ、と。「指切りは約束破ったら一万回殴って針千本飲ますけど、指結びは?」問うても妻は微笑むだけだ。大事にするよ、と結んだあの日の指と指。幸い、答えはまだ知らない。

これもむにゃむにゃメモから。
結婚相手との指結び。約束を破ったら指切りより酷い罰を受けそうです。
大人になると、なかなか指切りもしないですよね……そんなことない?
小指同士を絡ませるって、すごく親密で厳かな動作だと思います。

no.4
結晶病の少女は僕を睨む。足先まで硬化が進みベッドからおりることも叶わぬ彼女の、患者特有の辰砂のような眼が炎を孕む。「狂ってるわ」「褒め言葉だね」肩甲骨から生えた幾本もの結晶柱が肺を刺すのだろう、彼女の息は細い。君が完全な結晶になったなら、両眼を砕いてつくった絵の具で君の絵を描く。

このあたりからさらに難産の度合いが高まってゆきます。
結晶をテーマに何か書こうとして、雪の結晶? 宝石の結晶? とこねくりまわし……いつもと違う雰囲気のものが出来ました。ちょっと無理してる感じですね。これが出来上がるまでに三作くらい没にしています。

no.5
だれも知らない。窓に結んだ露の美しさなんて。だれも知らない。露に反射した夜の街灯が、まるで銀河みたいだなんて。だれも知らない。家人が寝静まった深夜、窓辺に立つ私の心が宇宙に遊んでいるなんて。冷たい窓硝子を指でなぞる。星が流れる。露を結んで文字を書く。綴るのは、だれも知らない物語。

ザ・手癖!
お題を生かそうとして考えすぎて、なんだか自分らしいものが書けてないな……と思い。お題へのこだわりを低めにして書きたいように書きました。


こちらは没作。

見える?あの糸ね、垂らしてるのはお釈迦様じゃなくてあんたの同類。皆なけなしの情けの糸を持ち寄ってさ、一本ずつ結んで、長ーくして垂らしてるのね、せめて一人を救う為に。で、あんたは結ぶ?それとも登る?もっと下の奴の為に結ぶか、自分が天に届く方に賭けるか。長さが足りなきゃ真っ逆様だぜ。

蜘蛛の糸をイメージ。
最初はこれを五作目にしようかとおもっていたんですが、どうにも中途半端だなぁと思ってやめました。



他にも、結ならぬ糸と吉の物語とか、結と結びつく二字熟語をいっぱい盛り込んだ話とかを考えていたんですが、とうにも面白く仕上がらず……。
そういう言葉のセンスが必要な作品を書くのは難しいなぁと思い知りました。
以上、一月の星々のふりかえり、おしまい。

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