140字小説まとめ2 石森みさお 2021年9月19日 00:13 夢でいつも訪れる場所がある。山の中の小さな村。底抜けの青空に輝く緑。何故こんなところにいるんだろうと、迷子の心細さと僅かな冒険心を頼りに探索し、ああ此処は…と何かに気づいて目が覚める。そしてまた思うのだ。何故こんなところにいるのかと。あの眩い世界にずっと迷っていたかった。#twnovel— 石森みさお (@330_ishimori) August 10, 2021 世界が終わればいいと願ってた頃は平和だった。本当に終わった今となっては。8月の始めに私以外の人類が謎の病で死滅して13日目、奇跡の抗体を持つ私は一人宿題と格闘している。「終わらん、滅びろ」世界は多くを喪い、けれどこの悪態と宿題が終わらない限りは、まだ少しだけ続いている。#twnovel https://t.co/yVE20TpAjj— 石森みさお (@330_ishimori) August 12, 2021 #twnvday 掌サイズの硝子ドームに星を入れ生物を育成する。コモノートから細菌へ、アンモナイトへ、魚へ、途中までは順調。問題は「こいつらだよ」他生物を食い荒らし、時に共食い、進化の舳先を御せずに破滅を目指す異端の群れ。「またリセットかな。ワンチャンあるかなぁ」迷う指でドームを撫でた。 https://t.co/m1UwNPenSH— 石森みさお (@330_ishimori) August 14, 2021 この裏カジノのオーナーの味覚と人格は壊れている。兎に角スパイスが山程ないと何も感じない。荒んだ生活が憐れで私は時折手料理を振舞うが、感謝された事はない。「すいとん?貧しいねえ」文句をたれても手料理にスパイスはかけない。そのなけなしの人間性が、余計憐れなのだ。#ノベルちゃん三題 https://t.co/wlbJGEAgtj— 石森みさお (@330_ishimori) August 15, 2021 #ノベルちゃん三題神の御使いである動物は色々いる。稲荷の狐、白蛇に烏。でもペンギンって何神様?「少年よ、禁じられた神域の封印を解いてしまったな……かくなる上は妖怪封じに付き合うてもらうぞ」「相棒がフンボルトじゃちょっと」「失敬な!儂はイワトビペンギンじゃ」怒るとこ、ソコ? https://t.co/nuA4xYE9HW— 石森みさお (@330_ishimori) August 18, 2021 私には姉がいた──だいすきで、だいきらいな姉が。一人暮らしの女子大生・亜紀の元に一通の手紙が届く。七歳の頃に川で溺死したはずの姉、奈津から。「会いたい」見知らぬ文字で書かれた一言に、記憶の蓋がこじ開けられる。それは夏から秋へ移る季節の、いたいけで、忌まわしい罪の記憶。#twnovel https://t.co/kBOrUO4y7h— 石森みさお (@330_ishimori) August 18, 2021 「世界の脚本は決まっている。1ページ目で誕生、2ページ目で繁栄、3ページ目で戦争、そして4ページ目で滅亡だ」戦場と化した東京。小学校に立て篭もった子供達に、未来から来た男は告げる。「書き換えられるのはお前達だけだ。来い!」少年少女は時空を飛ぶ。滅亡のシナリオを、回避せよ。#twnovel https://t.co/zqxEmYhuSY— 石森みさお (@330_ishimori) August 18, 2021 3日で世界が滅ぶとしたら、どう過ごす?竹草千紘は退屈だった。憂鬱な家路は何も変わらない。葛原由真は泣いていた。生きた証を、この小説を、最後の部誌に!椎名晃は奔走していた。滅亡前に、この文化祭を成功させるのだ。帰宅部・文芸部・生徒会──世界最後の文化祭まで、あと3日。#twnovel https://t.co/zHfLvh6vNw— 石森みさお (@330_ishimori) August 20, 2021 恥の多い人生何するものぞ。書いては消し書いては消し、それでも俺は書くしかないのだ──。北斗新人文学賞受賞で話題となった《還暦の新人》、古希目前の初エッセイ。手書き原稿の流儀、締め切り前夜の逃亡記、担当編集者殺害疑惑?など、赤裸々すぎるエピソード満載!幻の未発表詩も収録。#twnovel https://t.co/lMsIHXZ0YR— 石森みさお (@330_ishimori) August 20, 2021 #ノベルちゃん三題沈黙が痛い。蚊がぷーんと飛ぶ音だけが俺と彼女の間に響く。「栄養バランスも考えて、サラダのドレッシングも全部手作り。どうして食べてくれないの。嫌なら言ってよ…」彼女の聲が痛い。言えないよ。俺は吸血鬼で、今君の腕に止まった蚊みたいにただ君の血を吸いたいだけなんて。 https://t.co/b3wz2Y2bPI— 石森みさお (@330_ishimori) August 20, 2021 どうしたって太陽の下を君とともには歩けない──。山奥の寒村で起きた殺人事件。容疑者として逮捕されたのは美月の幼馴染。彼は村の『透明な子ども』だった。夜の片隅でひっそりと生きていたはずの彼に何があったのか?美月は十年ぶりに訪れた故郷で、村の醜い《因習》を知ることになる。#twnovel https://t.co/gG1uSfsuCN— 石森みさお (@330_ishimori) August 21, 2021 祖母の遺品の中から、祖母が幼い頃の写真が出てきた。大きな木馬にまたがる父娘。これは《遊園地》の写真だろう──今はもう写真や映像でしか見られない遺跡。信じられない、こんな大勢の人がマスクも無しに密着して……。眉根が寄ったが、写真の笑顔は憧れるほど無防備で幸せそうだった。#twnovel https://t.co/7syJHcsSaq— 石森みさお (@330_ishimori) August 21, 2021 紙に書かれた文字を認識できなくなる病、白紙病。白紙病に冒された少女・清香は煩悶する。紙がダメなら電子がある、だけどそれは私が読みたい小説じゃない!紙の手触り匂い色佇まい気配──狂気に近い懊悩の末に清香は気づく。《白紙の白紙による白紙のための小説》を、私が書けばいい、と。#twnovel https://t.co/vucJC6vOT8— 石森みさお (@330_ishimori) August 22, 2021 最初は両手足。事故で重症を負った私は手足を機械化し生き延びた。次は皮膚。火災に巻き込まれ全身火傷。培養皮膚を移植した。そして内臓。病んだ臓器を捨てて人工物を埋め込んだ。「生身が残ってるのは脳だけね」苦笑する私に主治医が言う。「脳も交換済みですよ。今の貴方はお忘れのようですが」— 石森みさお (@330_ishimori) August 23, 2021 二度と辿り着けない思い出の場所、というものがある。旅行で海沿いの街を訪れた時に偶然出会った書店。佇まいが気に入り本を買い、帰宅後、もう一度訪ねたくてブックカバーに印字された電話番号にかけるが繋がらない。あの書店は潰れたのか、それとも私の記憶違いか。あの店の名は……はて、#twnovel https://t.co/oO4gJubRxq— 石森みさお (@330_ishimori) August 24, 2021 祖父の残してくれた地球儀と望遠鏡と言葉が私の武器だった。女の子らしくしなさいとか将来のために勉強しなさいとか、そんな事ばかり言われる場所でだだそれだけが。「世界は大海原で、自分は自分という船の船長なんだよ」目的地を指差せ! 両の眼で前を見ろ!何処へだって行ってみせる。#twnovel https://t.co/QDzpDgjMKL— 石森みさお (@330_ishimori) August 24, 2021 その市を訪れる人間は二種類いる。『忘れられないモノ』を探す者と、『忘れたいのに忘れられないモノ』を手放しにくる者。萩本は後者だった。彼が忘れたいモノは人形──彼が忘れない限り何度捨てても彼の元へ戻ってくる、恋人の形見だった。忘れえぬ罪と記憶が交差する連作短編集。#twnovel https://t.co/F4oXQCuOEm— 石森みさお (@330_ishimori) August 25, 2021 異能力を持った文豪たちが華麗に戦う和風ファンタジー『文豪月花』の現代作家コラボ第一弾!洋食屋『浪漫亭』の料理を口にした客が怪死した。死因は──試作のなぽりたん?《すべてをSFにする》探偵・桂五郎が捜査に乗り出すが、容疑者として上がったのは稀代の美食家・森鴎外で……?#twnovel https://t.co/RgnkI78A8n— 石森みさお (@330_ishimori) August 25, 2021 夢の中でこれは夢だと気がついた。ラッキー、夢だからやりたい放題。願えば空も飛べるし魔法も使えるし大量虐殺もできる。ああ楽しかった、さあ目覚めるか。夢から覚めてもまた夢だった。夢の中の夢、良くあるよね。また好き放題やって目が覚めた。あれから何度も目覚めたけど、まだ覚めない。#twnovel— 石森みさお (@330_ishimori) August 27, 2021 私は動物の剥製を眺めるのが好きだ。ティーポットから注いだ茶を口に含むように、流線的な手脚を鑑賞する。美しいものもあれば醜い生き物もいるが、それはそれで複雑な茶葉のように味わい深い。今のお気に入りは宇宙の片隅の小惑星で見つけたニンゲンの雌。つるりとぬめる肌が奇怪で癖になる。#twnovel https://t.co/ea5bvSaaWV— 石森みさお (@330_ishimori) September 1, 2021 あの人は誰だったのかしら。故郷の山で迷子になった私に手を差し伸べてくれた彼。木漏れ日の下、輪郭は黄金色に輝いて、雰囲気は優しげだけれど顔は逆光で見えない。手を繋ぎ里への道に出た。私の手を離した彼の後姿は山の緑に溶けていった。お盆の頃の思い出。彼が迷っていないといいけど。#twnovel https://t.co/rL7fUYBc89— 石森みさお (@330_ishimori) August 31, 2021 選ばれし少女だけの聖歌隊は、王様の愛妾候補だって本当はみんな知っていた。一番歌が上手かったマリヤはまるで恋してるみたいな頬で歌う子で、ある日突然姿を消して足跡すら見つからない。あの子が賛美歌を捧げたのはきっと神様でも王様でもなかったのね。お幸せに。天の国か、地の果てで。#twnovel https://t.co/sfVdqqMf0r— 石森みさお (@330_ishimori) September 1, 2021 「僕は今から君を消す。それで誰かの人生が変わる程の影響が出れば君の勝ち、何も変わらなければ僕の勝ちだ」母親から《いないもの》として扱われた少年は、人の繋がりを試すように無関係の人間の拉致監禁を繰り返す。歪んだ孤独を抱え東京を徘徊する魂に、心理療法士・香の手は届くのか。#twnovel https://t.co/qc4YTujjw5 pic.twitter.com/66KIeYdLKA— 石森みさお (@330_ishimori) September 1, 2021 地球が無重力の星になって随分経つ。何でも浮き上がって最初は困ったけれど、今は固定したり繋いだりして人類はうまくやっている。困ったのは髪型で、長髪はどうしても邪魔になる。俺の前の席の藤堂のツインテールみたいにね。授業中、彼女の髪はゆらゆらと水草のように揺れている。#twnovel https://t.co/IgwNNcbjGN— 石森みさお (@330_ishimori) September 3, 2021 この森はかつて海の底だったのだという。その証拠に、樹の根元を掘ると貝殻が見つかる。僕の仕事はその貝殻を磨いてランプをつくること。海の記憶をもつランプの灯りは水面のように揺れ、森しか知らない僕らは、そのゆらめきにとっくにこの世から失われてしまった海というものの夢をみる。#twnovel https://t.co/Gv4iJ6MQf3— 石森みさお (@330_ishimori) September 3, 2021 明け方の住宅街の空気は澄んでいる。吸い込むと肺から透明になっていく。しんと沈んだ静けさに息を吐いて、かなしいのも、痛いのも、癒えてなくなれと願う。死人のように歩いても夜明けは咎めない。やがて藍色の空に光がさし、世界はきらきらと目覚め、ようやく私は生きかえり、家へ帰る。#twnovel https://t.co/l3TMz1tciZ— 石森みさお (@330_ishimori) September 3, 2021 ダウンロード copy #140字小説 #掌編 #140字SS #twnovel #ss名刺メーカー #ノベルちゃん三題 #twnvday この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか? サポート