子供達に知って欲しいアニマルウエルフェア:セミナーで知った現状と授業
1 知らなすぎる子供達 ~昔の記憶から~
「どうしよう。怖くて入れない。」
九州の山奥で育った私にとって
家畜がいる暮しは
当たり前のものでした。
ただ、親から用事を頼まれた時に
一軒だけどうしても
行けない家がありました。
玄関の前で
大きな牛を飼っていた家です。
小学生の私よりはるかに大きく
しっぽを振り回す牛は
今にも襲ってくるかもしれな
恐ろしい生き物に見えました。
小学校の通学路には
鶏をさばく場所があり
皮をはがれた鶏が
ぶら下がっているのを
見ながらの登下校だった事を
覚えています。
家から少し離れた場所には
養豚場もあり
その臭さと汚さにはうんざり。
「田舎はこれだから嫌!」と
当時は都会での
暮しを夢みたものです。
こんな風に昔は
場所によっては
子供達の生活圏内に
家畜が飼われ、
その様子は自然に目に入り
共存していたように思います。
でも今はどうでしょう?
多分、
特別にどこかに足を運ばない限り
家畜が飼育されている現場を
目にする事は
ほとんどないのではないかと
思います。
スーパーに並んでいる
食べ物の生産のプロセスや
現場を想像できない子供達がいるのは
仕方がない事ですが、
それにしても家畜に関しては
知らなすぎる…。
というか、私も含めて
大人がブロックしている部分が
あるのかもしれません。
だって、
あまりに感受性が強い時期に
今の家畜の扱われ方の
現状を知ってしまうと
その後、鶏や牛や豚肉などを
ずっと食べられなくなってしまう子も
出てくると思うから…。
ベジタリアンやヴィ―ガン等の
菜食主義になる人のきっかけも
家畜の扱われ方の現状を
知ったからと聞いた事があります。
その家畜などの動物の福祉
”アニマルウエルフェア”についての
セミナーを受講し考えた事を
まとめさせてもらえればと思います。
2 向き合って来なかった自分 ~海外暮し体験から~
20年程前、主人の駐在について
カリフォルニアで生活した時、
一番驚いたのがスーパーでした。
その広さや
今では日本でも当たり前の
カート(大きさは段違い)
の存在に加え
ほとんどのものが
包装されていなかったのです。
野菜も果物も
積み上げてある山
から選び袋に入れる。
肉や野菜は
ガラスケースにの中の
モノから選び
注文してから包んでもらう。
ナッツ類も好きな量を袋詰め。
アメリカに渡る前に
日本の生活で食品トレーや
ラップに包まれた食品に
慣れていた私にとっては
戸惑う事が
多かったのが事実です。
Plastic?」
(紙袋それともビニール袋?)
買い物の時にまず始めに
慣れなければならなかったのが
店員さんからの
この言葉でした。
ある小売店で
「Plastic, please.」と答えて
環境にとって
いかにビニール袋が悪いか
お説教された事もありました。
だからこそ
それから3年後に
日本に帰国した時の
スーパーでの
違和感はすごいものでした。
その時は
日本は小奇麗でコンパクトで
買い物はしやすいけど
すごい過剰な包装の仕方…と
罪悪感のようなモノを
感じたものです。
それなのに
快適な暮らしと
子育てに追われていた忙しさを
言い訳に
私は自分が感じた
罪悪感から目を背けました。
それは一つの後悔として
残っています。
3 つきつけられた現実 ~採卵の現場から~
その後、
食と環境問題について
向き合う事になるのは
通信制高校から普通校に
仕事の場を変えてからです。
特に
中学生を受け持つようになった時。
何とか食の生産現場の
現状を知って欲しいと
エビを取り上げて
エビ好きな日本人に向けて
エビを養殖し輸出する国の
自然破壊の状況や
土壌汚染の問題
エビに使われる抗生物質や
それがエビを扱う労働者に
与える影響などを扱いました。
ただ、
それらは一方通行の
講義で生徒達にとって
どれだけ自分事として
とらえる事が出来たかは
分かりません。
ここで養鶏場を
扱わなかったのは
あまりに現状が酷い事を
見聞きしたからです。
私がざっくりと知っていた
現状より
はるかにひどい内容を
セミナーでは聞く事が出来ました。
全ての養鶏場に
あてはまる事では
ありませんが、
こういう現状があるという事を
箇条書きにすると
次のようになります。
・1羽A4用紙1枚程の大きさの
広さの檻の中での飼育
(毛づくろいも出来ず
便や尿は垂れ流し
この方法は禁止している国もある)
・何匹か集めて檻で飼育する時は
他の鶏をつつかないように
口ばしを切断する。
(これはEUでは禁止)
・集団の飼育では他の鶏に
つぶされて死ぬ事もある。
・病気や感染予防のために
抗生物質をえさに混ぜて
与えられる。
これを読んで分かる通り
いかに効率よく採卵するかが
大切で動物福祉など
おかまいなしです。
でもね
卵は物価の優等生。
他のものに比べて
価格はほとんど
変わっていません。
その中で生産業者さんの事を
考えるとこれも仕方ないのかと
思います。
この辺のバランスを考えると
授業でどう取り入れるか
悩ましい所です。
もちろん
そんな養鶏をする所ばかりではなく
スーパーの卵コーナーで
”平飼い”という文字を見つけたら
それは狭い檻でなく
広さのある場所で
自然な飼育をしている鶏から
採卵したものです。
4 今を変えられない理由 ~家庭生活の現場から~
では、なぜ”平飼い”卵が
広がらないのでしょう?
それは一つは価格の高さが
要因と考えられます。
広い土地で自然の飼料で
鶏の好きなタイミングで
生んだ卵を採卵するのは
コストがかかるという事です。
それを消費者が受け入れて
「価格の高い卵を
みんなが買えばいい?」
それは難しい所です。
実際にスーパーなどで見比べた時
やはり安い卵の方に目が行きます。
特に栄養価が高く
いろいろな料理に使える卵は
消費量も多い食材の一つ。
食べごろの子供達のいる家庭では
どの卵を選ぶかは難しいと思います。
さらに鶏肉。
これも飼育のされ方が
欧米と日本では大きく違うと
セミナーで聞きました。
肉質を柔らかく
出来るだけ短期間に
鶏肉を生産するにはどうするか?
・運動させず
ひらすら太らす
・24時間照明をつけて
早く育てる
(EUでは一日最低
6時間暗くするよう義務づけ
られているそうです)
・日本は3kgまで飼育OK
(EUは2kgまでだそうです
そうでないと
鶏が自分の足で体重を
支えられないらしいです)
こういう現状を知ると
鶏肉の見方も大きく
変わってくるかもしれません。
5 知る事の意味 ~授業現場から~
このセミナーを受けて
改めていろいろな現状を知り
「さあ、どうする?」
となった時
考えてしまうのは
生徒達の精神的な成熟度と
家庭環境などです。
特に食に関わる事は
へたをするとその子の
一生に影響するかもしれません。
ただ一方でこういう事が
あるという事実を知る事には
とても意味があると思っています。
こういうテーマを
自分自身で調べたり
社会的な課題として
対策を考えたりする
する時間を取れればと考えますが
導入に慎重さも必要だと
痛感しています。
SDGsが広まり
社会全体の意識が変わってくる中
工業製品化する食は
どうなっていくのでしょう?
長い文章をお読みいただき
ありがとうございました。
私の勝手な解釈で
間違っている所も
あるかもしれません。
そうであれば
申し訳ありません。
ただ、
これを読んでいただいた方が
自分の食生活を
見つめなおしていただく
きっかけとなってくれたら
とてもうれしく思います。