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自分らしく生きる事の大切さに気づかせてくれたマイクロスクールでのインターン体験

1 はじめに

この記事では定年の少し前に早期退職した元家庭科講師がマイクロスクールにインターンとして採用してもらい、2か月のインターン体験を経て得た事、インターンを終了した今感じている事をまとめています。

本来なら今年〈2022年〉の3月までインターンとしてスクールの活動に参加させてもらう予定でしたが、昨年の秋に義母が交通事故に遭い状況は一変しました。長い入院生活で認知症を発症した義母の事を考えインターンは昨年末で終了させてもらう事にしました。

還暦に近い50代後半という年齢と”マイクロスクール”というものがちゃんと理解出来ないままにスクールにインターンとして通い始めた事で、いい面でも悪い面でもいろいろな事を感じた2か月でした。

その辺りの事は下記の記事にまとめていますのでよろしければご覧下さい。

1つのスクールでの短い期間での経験に過ぎませんが、マイクロスクールやオルタナティブスクールなどに関心をお持ちの方やお子様の学びの場として考えていらっしゃる保護者の皆さん等に何かのお役に立てればうれしく思います。

2 透明な存在の私

マイクロスクールでの日々は今思い出すと、どれだけ存在感を消し子ども達の学びの邪魔にならないようにするかに気を遣い続けた日々でした。

自分が学校で授業をしていた時に生徒以外の人間がいるとどうしても子ども達に集中しにくくなった経験から、そうする事が必要と思いスタッフにも子ども達にも迷惑をかけないようにする事だけで精一杯でした。

その中で自分に出来る事を探し、掃除や整理、プリントの配布など出来る事をしようと自分なりに気をきかせたつもりでしたが、スクールでは子ども達が自主的に掃除をするし、少人数なのでプリントの配布なども手間は不要で何もする事がない状態が続きました。

「そこの子ども達と一緒に遊べばいいじゃん!」インターンとして何をすればいいか悩み、娘に相談した時に返って来た答えです。「そうだね…。」と返事はしたものの、子ども達に話しかけたり何かを一緒にしたりする勇気が持てないまま時間だけ過ぎて行きました。

その頃の私は学校時代のプライドというか先生気質を引きずっていて、スクールの子ども達と同じ目の高さで子どもの頃に戻って接するという事がどうしても出来ませんでした。

そして、どんどん透明な存在になっていき「私は何をしているんだろう?」「誰にも必要とされず何の役にも立たない自分がここにいる意味は何だろう?」と考えるようになりました。

3 スタッフからの提案

1か月程、そんな状態が続いた時、スクールスタッフの方々からインターンとしての振り返りの機会をいただき自分の不甲斐なさを反省し、少しずつ子ども達に働きかけるようにしたのですが、小学校高学年から中学の10代はじめの子ども達に心を開いてもらうのは容易ではなく最後まで場になじめないままでインターンを終わる事になりました。

「一体何が正解だろう?」「どうする事が正しい?」授業や午後の探究の時間に子ども達と接する時や何か声をかけようと思う前に、いつも頭で考えていたのは”正解”は何かという事でした。

今考えると情けないのですが、その頃の私は「あるべき姿」や「なすべき事」にとらわれて動けずにいたのです。そこは探究中心のマイクロスクールで正解なんかなくても良かったのに、自分らしさを出して素顔で接したらいいだけだったのにです。

皮肉な事にようやく少し自分を出せたかなと思えたのはインターン最後の日。子ども達が人生ゲームをしている場にいさせてもらった時でした。

それは、その頃スタッフから「3学期に授業を手伝ってみませんか?」という提案をいただいていてインターンではなく授業を担当する講師の目線で子ども達を見るようになっていたからかもしれません。

4 砕かれた自信

「これは子ども達には合わない」授業担当の話をいただき、家庭科関連のテーマで授業案をつくりスタッフに見てもらった時に言われた言葉の一部です。

「子ども達が自分事に出来ない内容」など厳しい事も言われショックを受けました。家庭科の授業づくりに関しては自分なりに自信があったからです。

授業案については年末の多忙な時期と義母の事故後の入院騒動などで時間が取れずスクールの理念や子ども達の事をしっかりと考慮して考えた内容というより自分が出来そうな事や一般的にテーマとして取り上げたら良さそうな事に終始していて採用してもらえなかったのも当然だと感じています。

3学期の授業の準備は冬休みという短い期間でしなければならず、スタッフの方々に迷惑をかける事になってしまった苦い思い出となりました。

5 年末の出来事

「3学期のインターンでは授業担当ではなく手伝いという形で参加しませんか?」という提案をいただき、マイクロスクールでの授業の進め方をインターンという外側からだけではなく進める側から勉強させてもらおうと考えていた年末、恐れていた事態が起こりました。

入院中の義母の認知症の発症です。オミクロン株の事が言われ始めた頃で面会制限も緩和されていて〈1日1人15分〉の許可が出ていた時、久しぶりに面会した義母は変わり果てていました。

「家もお金もみんな盗られた」「わたしは死んだことにされている」そう涙ぐんで繰り返す母の背中をさすりながら「そんなことないよ」と繰り返すしかありませんでした。

「あんた達には迷惑をかけないうように自分の事は自分で出来るから大丈夫」と口ぐせのように言い、90近い年齢でも気丈で1人暮らしをしていた身ぎれいな母とはとても思えません。

認知症の発症で、これ以上1人暮らしを続けられない事が決まってしましました。そうなると夫と私の暮らしも変わらざるを得ず「このままインターン続けてもいいのだろうか?」という気持ちが沸き起こって来ました。

6 自分らしく生きる

さらに義母の変わり果てた姿を見て「あれほど元気で穏やかだった母がこんな事になるなんて」という気持ちと同時に「人生には何が起こるか分からない、今を大切に生きなければ」という気持ちが私の中に次第に強くなっていきました。

スクールの中で特別な役割もなく休むのも自由な立場のインターンは続けようと思えば続けられたかもしれません。
でも「本当にそれでいいの?」「それが自分のしたい事?」「インターンの経験は何につながるの?」と繰り返し自分に問いかける日々が続きます。

そんな時、思い出したのはスクールで出会った子ども達の事でした。写真や動画、絵本や生物、いろいろなテーマに真摯に取り組む子ども達。とても静かで黙々と取り組んでいるのに楽しそうな姿。スタッフ達と自分の探究について話をしている時の生き生きとした表情。今でも目に焼き付いています。

インターン中、自分自身が過ごした小学校・中学校時代とはあまりに違う姿に「自分は人生の中で本当に自分らしい生き方をして来たのだろうか?」と考える事もあったのですが、その問いが大きく膨らんで来たのでした。

「じゃあ自分らしい生き方って何?」「本当にしたいと思う事は何?」それを真剣に自分に問いかける事が出来たのはスクールと出会い、子ども達と出会い、インターンという透明な自分を経験したからこそだと思います。

7 自分にとって大切な事

問い続けて出した答えは「インターンはやめる」「今の自分に出来る範囲で本当に大切にしたいと思う事をする」でした。

インターンに応募した頃は、昔々英語教室を主宰していた経験と灘中の家庭科の授業を通して探究学習の面白さを知った事から、小さい子どもを対象にした探究をベースにした体験中心の場を作りたいと夢のような事を考えていました。週1~2回、定期的に開催しママやパパも一緒に探求を楽しめるような場とコミュニティを創れたら!なんてことを考えていたのです。でも子どもを対象にした定期的なイベントやレッスンを行う場つくり今の自分には出来なくなってしまいました。

(灘中での取り組みについては下記のサイトからご覧いただけます。)

「では今の自分に出来る事は何?」記事や動画などを使った情報発信なら出来る。オンラインのイベントも可能だし不定期になるかもしれないけどリアルのイベントも出来るはず。そう気持ちを切り替え、学校に勤めていた時の経験を生かしたいという気持ちや子ども達の学びの場に関わりたいという気持ちに区切りをつけて違う方向に舵を切る事に決めました。

昨年の退職後から細々とやって来た子育て支援。ママ達のサポート活動をサポートという形でなく”ナビ“という形で、対象にする方も〈働く女性〉に広げる事にしました。
これもマイクロスクールでお世話になったおかげです。スクールではスタッフの事をナビゲータと呼んでいて、その側面支援という考え方がとてもいいと思ったからです。

当スクールでは、私たちのような存在を子どもの学習を側面支援するという意味で、先生でなくナビゲータと呼んでいます。
https://www.sensei-no-gakkou.com/article/no0040/

「先生の学校」より

ナビは私の解釈では情報の提供などはしても何を選択してどう行動するかは相手に任せるというサポートの仕方。押し付けがましさがなく側面から見守りもしながらサポートするという感覚はスクールで見ていて感じていた良さでした。学校ではあまり見かけた事がない接し方でとても勉強になりました。

ナビの内容は”働く女性”を対象にした暮らし方や生き方をテーマにする予定です。社会人になった20代の娘を見ていても、いろいろなSNSで仕事をしている女性の発信を読ませていただいても、仕事とプライベートのバランスがうまく取れず身も心もすり減らし大変な思いをしながら暮らしている女性が多いように思います。

その暮らし方は、元家庭科教師の私から見ると、ちょっとした工夫や心の切り替えで自分の心と体にとって優しい暮らしに変わるように思います。そのための情報やアイデアなどを働く女性とシェアしていければと考えています。「働く女性の心と体に優しいナビ」については下記のサイトからご覧いただけます。よろしければご覧ください。


8 最後に

私にとってインターンをさせていただいたスクールは振り返ると精神的につらい時もありましたが、とても学びの多い場所でした。

今、他にも様々なスクールが出来ていてカリキュラムも理念も実施形態も多様化しています。子ども達の学びの場の選択肢が増えるのはいい事だと思いますが「どのスクールがどの子に合うか?」とか「どのスクールが子どもにとって一番いいのか?」などの判断はとても難しいと思います。

ただスクールを運営したり授業を受け持ったりしているスタッフの方々や講師のみなさんは本当に真摯に子ども達と向き合い、その時々の子ども達の様子や全体の雰囲気をとてもよく見ながら授業や場の運営をされています。

これはスクールの中に入らないと多分見えない部分だろうと思いますが、一つ所にとどまる事なく子ども達の成長に合わせ、より子ども達に合う授業内容を考え実践している姿にインターンという責任のない立場の私は頭が下がる思いでした。
これからもインターンをさせていただいたスクールを含めいろいろなマイクロスクール(オルタナティブスクール)が子ども達の成長を支える場となり、ますます発展していってくれればと願います。

長文をお読みいただきありがとうございました。ここで書かせていただいた事はあくまで私の考えです。ご了承下さい。(終わり)