子供に必要な調理経験とは?:これからの調理実習について考える
1 消えた調理実習
「えー、やりたかったのに…。」
今年の調理実習は
取りやめになった事を
授業で伝えた時の生徒達の言葉だ。
男子校の調理実習は微妙。
ちゃちゃっと調理してくれる女子が
いない実習は不安が募るらしい。
それでも、いざ調理が始まると
ワイワイがやがや言いながら
食材に向かう姿を
見るのが好きだった。
その姿を見る事が出来ないまま
年度を終えていくのは
とても寂しい。
でも、私にとっては
今年ほど、
調理の仕事をした年はなかった。
なぜなら、休校期間中
中学高校合わせて
教科書のレシピ通りに
40を超える調理動画をつくり、
google classroomにアップしたから。
これは私にとっては
とてもいい経験になったけれど
生徒達にとっては
どうだったのだろう?
少しでも役に立ったと信じたい。
学校再開後に
まず考えたのは
実習を伴わない調理実習を
どういう形で実施するか?
これは休校期間中に
自宅で録画しておいた
調理実習に特化した動画を
視聴してもらい
その動画についての
課題を提出させる事にした。
動画の時間が長すぎると
(長くて7分程度)飽きてしまう。
自宅でスマホで録画したが
置き場所が悪かったようで
まな板で食材を切る音が耳障り。
短く編集した時に説明の
末尾が切れてた。
反省点はいろいろある。
ただ、自分で撮った動画を
授業に差し込むだけで
生徒達にとっては
分かりやすかったようで
興味も持ちやすい事は分かった。
2 難しい環境づくり
今日オンラインで受けた
家庭科教員研修では
調理学校での
コロナ禍の
実習の取り組みを
見せていただいた。
飲食業のプロとなる人材を
育てる場所での
衛生管理は徹底している。
実習場所だけでなく
個人でも感染リスクを避ける
ように指導されていた。
グループ全体で今年の春から
約5200件あまりの実習を
実施してきた実績はすごいと思う。
ただ同じ事を学校で出来るか?
それはかなり難しい。
今年は
被服実習は実施したが
やはり調理実習は
特別な注意が必要と痛感した。
3 出来た料理の扱い方
一番、問題になるのは
出来た料理を食べる時だ。
試食するなら向き合わずに
並んで座り
食べる時だけマスクをはずして
短時間で黙って食べる。
ネットで調べると
ある学校ではクラスを
半分にして
片方が調理で
片方は課題の取り組みとして
密を避けていたが
これは指導と監督で
2人必要という事で
実施は難しい。
あるいは
最初からテイクアウトにして
容器を持ってくるように
指示するか
こちらで準備しておくか…。
ただ、この場合は
食中毒などのリスクや
持ち帰りがしやすい献立など
いろいろ配慮が必要となる。
研修では
手打ちうどんやピザ、
肉まんなどが紹介されていたが
うどんやピザは生地の
寝かせの時間が必要で
自分の勤務校では無理。
ただ、
年の功で
手打ちうどんもピザも
昔、指導した事があり、
懐かしかった。
4 中継授業の可能性
今日の研修でご紹介
いただいたのは
調理学校のプロの方からの
直接指導のプログラム。
学校と調理の現場を
中継でつなぎながら
調理を進める形式らしい。
これは調理の道に
進みたい生徒や
選択でフード関連を
とっている生徒達には
とてもいい内容だと思った。
久しぶりに
プロの技を見せていただき
とても参考になった。
ただ、普通校で
進学校となると話は別で
教科書に載っているレベルで
動画を使って説明する方が
やりやすいと感じた。
5 実践例とアイデア
研修の中で
これは可能かもと思ったのが
肉を使った調理実験。
鍋とビーカーと
フライパンがあれば出来る。
肉の柔らかさの実験なので
試食も一口ずつ。
試してみる価値はありそう。
その他のネットにあがっていた
実践例としては
1人クッキングがある。
完全に1人で作らせる方法だ。
これは人数が
少ないクラスのみ可能。
これ以外に頭に浮かんだのは
単一食材を使った
いろいろな料理を1人でする実習。
これは以前
採用試験で
卵を使う調理が出題されて
印象的だったモノ。
コンロは一口しか使わないし
制限時間を決めて
交代制にする事も出来る。
また、
防災食もいいかもしれない。
缶詰や乾燥食品で
簡単に1品作る時に
節水や省エネを
意識させる事も出来る。
逆に
弁当に向く料理を
3人組位で
個別に1品ずつ作らせて
用意した弁当箱に
詰めさせる方法もありそう。
これなら1つの
調理台でも
あまり接する事なく
調理が出来そうだ。
6 自立に向けた実習
ざっくりと
まとめて来たが
どうすればいいかの正解は
多分ないのだと思う。
調理実習は
本来、グループワークで
班の中での
コミュニケーションの取り方や
役割分担の仕方での
リーダーシップの取り方や
協力の仕方など
学ぶ事が多いと思う。
さらに
単に調理の体験でなく
配膳や皿洗い、片付けまで
学校という場だからこそ
気づく事も多い。
だからこそ
調理実習は出来るだけ
取り入れていくべきだと思うが
それは安心出来る環境が
整う事が条件。
生徒達に食生活で
自立できる力を
どうつけてもらうか?
食そのものに関心を
もってもらうか?
調理を楽しみ
自分の食を自分で
つくる事が出来る大切さを
感じてもらうか?
それぞれの学校や
環境に合わせて
目的意識をはっきりさせて
ウィズコロナ時代の
調理実習について
しっかり考え
試行錯誤していく事が
大切なのだろうと感じた。
最後に
このような研修の機会を
いただいた事に
心から感謝致します。
〈終わり〉