1月17日 電車の中で書いた文
冬の夜6時、電車が止まった。
アナウンスを聞くためにイヤホンを外し、周りの様子を伺う。遅延が発生しています、と言っている。
金属の部品が軋む音や線路を車輪が走る音、いつもは聞こえる音が全くしない。
隣の人の呼吸のリズムが聞こえる。遠慮がちに鼻をすする人がいる。コートが擦れる音、生地が厚いことがわかる。小さな咳払い。髪の先がジャケットを滑る音。靴底が床に当たる音。遅延の連絡をしているのだろう、液晶を指が叩く音。
誰も何も言わず、張り詰めた空気だけ満ちている。夢の中みたい。私はこの空気と時間を覚えておこうと携帯にメモを取っていた。
電車がしゅう、と小さくため息をついて、またゆっくり走り出す。人間も、ホッとしてため息をついた。
細長い部屋は乗り物にもどり、静けさはどこかにいった。
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