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長いようで短く、とも
短いようで長く、とも言い難い
まさしく過ぎ去った数字と合致するようだった9ヶ月間の話をしようと思います。

休校明けの6月から本格的に始まったわたしの受験生としての生活、ほかの受験生に比べれば驚くほど勉強をしなかったでしょう。わたしは音楽や本や映画が大好きなのです。努力する才能がないなと思ったり、努力のキャパシティが恐ろしく小さいなと思ったり。みんながやってることが出来ないわたしも、そこに焦りを全く感じない能天気でパッパラパーなわたしも全然嫌いじゃないからこそ、遣る瀬無い気持ちで過ごしていました。

そんななかで痛切に感じたのは、
わたしは音楽が「フツーに」好きだということ。
この曲に励まされた！と高らかに言うにはあまりに努力が足りていませんが、した努力の大きさはどうであれ、楽観的過ぎるわたしにも大変なことや苦しいことはありましたので、その時間を共に過ごしてくれた音楽を紹介します。

LIT / Polyphia

間違いなく‘お世話になった’という意味で頂点に君臨するのはこれ以外有り得ない、です。
インストは勉強しやすいというのはわたしのなかの定説で、Polyphia大先生には、受験期のみならず高校3年間の集中しなければならない数々の局面で、何度も何度も助けてもらいました。
ここにある光は決して閃光ではなく、はたまた無気質な灯りでもなく、まるで木漏れ日のように暖かくて、わたしにとっては紛れもなく希望でした。観たいと思わせる光でした。この曲に唆されて春の暖かな日の光を目指していたんだと思います。

on my own way / Tohji

〈全部が全部うまくいくように/やることやるだけ〉というリリックがあります。なんてシンプルで的を射た言葉だろう、と、初めて聴いた時に感動したのは懐かしい思い出です。
Tohjiはわたしにとってなりたい人そのもので、抱くのは安っぽい尊敬なんてものでなく、寧ろ畏敬の念に近いと感じていますが、その理由がこの詞に詰まっています。Tohjiは間違いなく奇才なのに距離を感じさせない。きっとリリックが、Tohjiにとってのリアルだからなんだろうと思います。かのカリスマのようにまっすぐ生きるのは綺麗だけれど難しくて、わたしに出来るかわかりませんが、全部が全部うまくいくようにやることやるだけ！ただそれだけ、です。

Orange / TAEYO

抑えられずに夏に一度レビューを書いたほど好きな曲。以前は
『頑張った向こうに見える、というかむしろ向こう側に見たいと切に願ってやまない光を、オレンジを目指して。わたしも負けないよ。』
という言葉で締めましたが、今でも気持ちは変わっていません。
LITと通じる部分もありますが、本当に光を見せてくれる曲。夜明け前が一番暗いとはよく言ったものですが、音も詞も仄かに明るいこの曲では、既に外は白み始めていて、なんだかワクワクするような予感に胸が躍るのです。明るいけれど、ただ明るいだけの曲ではないところが惹かれるところ。今いる場所には満足していないなかで見る光だからこそ、より美しく映るんだと思います。彼が弱さを見せながらも光を掴もうとするものだから、わたしもつい手を伸ばしそうになります。

27 / SUPER BEAVER

SUPER BEAVERは、わたしにとって努力の指標でした。彼らの音楽は、もがき苦しむ人間にこそ響く優しい音だと信じています。これが沁みるうちは、わたしは大丈夫だ、きちんとやれてる、と持ち堪えていました。真っ直ぐな言葉をどう感じたっていい、わたしのことだと嬉しくなったって、痛いところを突かれたと目を背けたくなったって、なんだっていいけれど、とにかく彼らの作り出す音や言葉をわたしが飲み込むうちは、きっと曲がりなりに生きています。
大人になりたくないわたしにとって、18歳のいま、気持ちに相反して嫌でもその兆しを感じざるを得なくって、正直かなり苦痛です。いつまでも親元で可愛がられぬくぬく生きていきたいし、決断とか責任とか、そういう重苦しいものからは出来るだけ逃げていたい。けれど、わたしが大人になったとき、そこに彼等が居てくれるのなら、きっと大丈夫なんだろうと、漠然と思うのです。

tonight / Kings and Queens

わたしを可愛がってくれるひとが、「夏はポップパンクでしょ！」とケラケラ笑いながら言ったことがありました。そのときは何だかなあと思いましたが、今になってようやく分かるのは、夏はポップパンク、ではなく、ポップパンクが夏を作るのだということです。今日を夏にしたい日にポップパンクを聴くのです。これがわたしの流儀。異論は認めます。思えばこのバンドに出会わせてくれたのもそのひとでした。
キングスはわたしを励ましてくれますが、それは決して圧でなく、尻を叩くかのような強烈なものでもなく、わたしが背負う大きな荷物を何も言わずに持って横を歩いてくれるようなもの。一緒に歩いてくれるから頑張ってみようかな、いざとなったら帰る場所はあるからな、という、緩くてアツい、最高のパートナーです。

LEAVES / Earthists.

暗闇というか雑踏というか、とにかく欲しいものを探すにはしんどいような、そんな中の一筋の光のようなサウンドが、ほんっとうに、堪らなくって、その洗練された音とリリックとの間には全くギャップがないのも大好きなところで、曲と歌詞のズレの気持ち悪さを英語で誤魔化すようなことは絶対しないから、わたしはEarthists.を信じています。
諦めたいけど諦められないのが人間の性。どうしたらいいのか分からなくなって、道に迷ってしまった時、LEAVESです。100%ポジティブかと言われればそうではないけれど、わたしにとっては間違いなく一歩を踏み出すための曲でした。
受験生の秋に将来の夢がガラッと変わり、それに伴い進路も大きく変えました。
〈でも、目の前にあるものだけが、人生の全てなんかじゃないから。〉
という言葉がなければ、わたしはそのままズルズルと、適当に進学していたような気がします。

Flower / Anatomia & 釈迦坊主

Anatomiaくんの曲はほんとうに耳に心地が良くて、その点に関してはPolyphiaを聴くのと同じように聴くこともありました。
Flowerはすごく時代に合った曲で、だからこそ今を象徴して長く廃れずに聴かれる音楽になるという確信があります。
過去も全部背負って歩き出すのです。夢は必ずしも叶うわけではありませんし、むしろ叶わないことのほうが多いでしょうが、そんなことは全然重要でないのです。自分を失わずに、失ったとてきちんと取り戻して、生きることのほうがよっぽど大切なのです。
わたしはFlowerを聴くと、盲目的にありふれた個性を探し求めて奇を衒うことすら愛しく思えます。何をしてたって結局わたしはわたしですし、あなたはあなたで、それ以上でも以下でもありませんが、そのこと自体が素敵で特別だと感じます。

Free / Paledusk

Paleduskを好きになったのは中学生のときで、念願かなって初めてライブを見たのは高校一年生の時でした。そのときカイトくんに『Freeがいちばん好き、ライブでやらないの？』と聞いて、『リリースのとき一回やったきりだしもうやらない！』とあっけらかんとして言われたのは良い思い出で、もうやらないと言うのならばこちらもFreeを聴くまでは死ねないなと妙な対抗心を燃やし続けて今に至ります。
結局、こうして肩の荷を下ろしてくれるような曲が好きなんだろうと思います。わたしたちは自由になっていいし、体裁なんて気にする必要もないし、しんどかったら何も考えなくても良い。努力することは美しく、正義のように語られることが多いけれど、自分を殺してまで頑張る必要なんてどこにもないですし、ましてそれを強いられるなんてことがあってはならない、と、周りを見ていて思うことが多い年でした。
Let's be free. さて、好きに生きましょう。

Stay Pure / See You Smile

See You Smileを聴くと無限ハッピータイムを迎えるわたしです。
彼らの音楽を聴いていると、空間が広くなったように感じます。目の前がグッと明るくなり、急激に視界が開けるような感覚があるのです。
Stay Pureは間違いなくはじまり、再生の歌ですが、いままでのわたしが新たなわたしを作るのだな、と、ハッとさせてくれる曲です。昨日までのわたしと今日のわたしは繋がっています。全部わたしです。生きるうえでリセットなんか無くて、いままでを無かったことに出来たら楽なこともたくさんあるけれど、それでも積み重なった自分で生きていくしかないなかで、Stay Pureがあれば、わたしたちは、きちんと、わたしたちのままで新たな一歩を踏み出せるんじゃないでしょうか。

口に出さない事 / PRAISE

受験を通して切に感じたのは、わたしが如何に家族に恵まれたか、ということです。愛されて育った自覚はもとよりありましたが、受験期にはそれを改めて実感させられました。上京に反対していたはずなのに、いつしかわたしよりもずっと志望校について詳しくなっていたパパも、こっそりわたしに「パパだって寂しいけどいちばんは希望通り進学することなんだよ」と零しながらパパを説得してくれたママも、東京泊めてよとか卒業旅行どこに行こうかとか、終わってからの楽しみを作ってくれたお姉ちゃんも、みんなわたしのいちばん大切なものでした。そんな大切な存在に、きちんとありがとうと言いたいと思わせてくれるのは、常にこの歌です。ひとりじゃないのは他でも無い家族のおかげなのに、環境にも家族にもこれ以上ないくらい恵まれたのに、それを当たり前に受け入れてしまっていたわたしですが、高校卒業を機に今までの分も全部込めて、大きなありがとうを言いました。
全部教えてくれたPRAISEにも、そろそろありがとうを言いに行きたいものです。

総括

さんざ書き散らして思ったことですが、わたしはきっと希望やはじまりが好きなんですね。思い返せば新学年とか新学期とかも大好きだったな。友達は全然いなかったけど、空気が新しくなる感じがすごく好きだった。
特に春は、うざったいくらい晴れていても風だけがツンと冷たいような感じが、すごく好きだった。
きっとそこに希望やいろんな兆しや変化を見出しては、縋っていたんだろうと思います。

あとがき

やっぱり、音楽にキツさを乗せるのが好きでどうしようもありません。いつだったかはもう覚えてないけれど、テレビで「すごく辛くて、大好きだった音楽も聴けなくなったんですよ」と話すひとを見てショックを受けたのが懐かしいほど。あのときから、辛い経験と音楽の関係はわたしの中でのちょっとしたテーマになっています。音楽が大好きだと思っていたけれど、キツい経験もそれなりにしたと思っていたけれど、それでも音楽が好きなわたしはまだまだ甘ちゃんなのかな？と思ったりもしました、少しだけ。
受験を、乗り越えたと言って差し支えないかはさておき、乗り越えたわたしが思うのは、

苦しい時「こそ」音楽

です。
苦しいものは苦しい、どうやったって苦しい。だけどそこに音楽が流れているだけで、後から思い返したときの景色はまるで違うものになると思います。苦しみを音楽を楽しむための要素に成り上がらせてやることでしか、わたしのような弱い人間は困難に打ち勝てないのです。その音楽を特別にする作業、というと伝わりやすいかもしれません。音楽は絶対にわたしだけのものではありませんし、いくら独り占めしたくたって、わたしが聴いてるように誰かも聴いています。音楽は、基本的には誰にとっても平等だし、わたしは才能も無いし、それはありふれたトクベツですが、その音楽と生きた日だけは絶対に、絶対にわたしだけのものだし、あなただけのものだと思います。
いつか来るかもしれないもっと苦しい日や、大仰なものではないけれど日常的に感じなくちゃいけない嫌な気持ちとか、そういうものに出会った時に、いつかを共に乗り越えてくれた音楽が信じられないわけがありません。
やっぱりわたしは音楽に嫌な気持ちを担ってもらうのが好きだし、それは思い出と武器を増やすことに他なりません。