そっちの水はあまいか?
秋物の服を買いに行った。
しばらく着ていなかった柄物のワンピースにカーディガンを羽織り、あてもないまま街へ出た。
駅に着いたものの、さて、どこへ向かおうか、しばらく迷う。
ルミネは年齢層が若そうだし、丸井でもしばらく服を買った記憶がない。
どんなお店で服を買ったらよいのだろう。
服がほしいと思ったとき、いつも直面する問題だ。
40代を半分以上過ぎてから、これまで着ていた服がことごとく似合わなくなり、服選びに迷うようになった。
ファッション迷子期、まっただ中なのだ。
ひとまず、ルミネに入って、気になったお店をまわってみることにした。
今年の秋はピンクが流行りなのか、どこのお店でもピンク色のスカートやパンツが目に入ってくる。
ミルクティー色のニット、淡い茶色のトップスに合わせたら映えそう。
手に取って、鏡の前で合わせてみる。
自分だったら履けるだろうか。
いやいやいや。
可愛い色だけど、私には甘すぎる。
もっと紫寄りの色だったらアリなのかも、頭の中で自問自答し、諦めてラックに戻す。
何軒かのお店で、そうやっていくつかの服を手に取り、鏡の前で合わせては戻した。
そんなことを一人繰り返すうち、無性にさびしい気分が湧いてきた。
なぜか。
何軒かお店を廻っているのに、一度も店員さんから声を掛けられていないから。
よかったら試着もできますので、的なアレ。
気のせい?
それとも、お店のテイストと私が合ってないってことなんだろうか。
そう感じはじめたら、ほかのひとには声を掛けているのに、私だけスルーされてるような気分になってきた。
今日の服がいけてないからだろうか。
さびしさがこじれ、被害妄想的な感情が次々にふくらんでくる。
まずい。
このままではいけない。
ひとまず、場所を変えよう。
エスカレーター脇の鏡に映る自分が、ひどくダサく思えてつらかった。
何でこの服を着てきてしまったんだろう。
しばらく着ていなかったワンピースを、どうして今日着ようと思ったのか。
家の鏡の前ではまぁまぁ見られたはずなのに、外へ出たらなんだか冴えない。
あぁ、早く着替えたい…
機嫌よく買い物が出来ていないのを、着てきたワンピースのせいにして自分をせめた。
こんな気持ち、サッサと手放さなければ。
切り替えるんだ。
そう自分に言い聞かせる。
ルミネを出て、横断歩道を渡り、アウェイだった世界の向こう岸に出てみた。
今まで何かとお世話になっていたルミネ、もう卒業なのかもしれない。
気持ちを切り替え、大人のアメカジ風のお店へ向かう。
次に入ったそのお店は、お客さんの年齢層も国籍もさまざまで、甘さはないけれど大人っぽい雰囲気があった。
店員さんの年齢層も、ルミネよりお姉さん。
フレンドリーに声をかけてくれて、何となくホッとした。
気を取り直し、買い物再開。
秋らしい、深いオレンジ色のブラウスが見つかり、希望がわいてきた。
試着して、即決で購入。
気に入ったものがひとつ見つかるだけで、さっきまでのいじけた気持ちは消え去ってしまった。
あぁ、私に合うのは、こっちだったのか。
行く場所を間違えてたんだなと思った。
ある場所に身を置いて、アウェイ感に打ちのめされそうになったら、そこは自分の居場所じゃないのかもしれない。いじける前に、次の場所を探して動くべし。
そんな教訓めいたことを感じた一日だった。
【今日の手放し】
アウェイ感に負けそうになったら、手放して次へ行こう。
ほかに合う場所があるってことかも。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?