食事の変化
認知症の義母の食事が進まない。
自分でお箸を持って食べることは完全にやめてしまった。
スプーンで食べさせているが、口に入れた物がなかなか飲み込めない。
「モグモグして、ゴグッと飲み込んでや。」と声をかけ続けるが、普通のご飯を一時間半~二時間、時間だけはフルコース並みにかけて食べていた。
だんだんと、‘噛んで飲み込む’という動作ができなくなってきている。
口の中に食べた物がそのまま留まっている、あるいは、噛んで噛んで噛んで、飲み込めない。
なるべく噛まなくてもいいように、おかずは細かく刻んでみた。
すると、食べるピッチは上がったものの、お粥ならもっと滑らかに飲み込めるので、おかずもミキサーにかけてドロドロにした。
煮炊きした食材と、だし汁をミキサーにかけて、とろみ調整食品を加えてトロッとさせると、スムーズに飲み込めるようになった。
ドラッグストアには、レトルトの介護食が種類豊富に売られているし、ムース食といって、一度柔らかくした食べ物をゼラチンやゲル化剤などを使って本来の形に成形された(例えば、見た目はハンバーグそのものだけれど、舌で容易に滑らかにつぶれる)ものも市販されている。
それらも利用しながら、食事時間が30~40分で済ませられるようになった。
このまま食べられなくなって、身体がどんどん弱っていくんじゃないかと心配だったが、なんとか食べられる方法のコツが掴めてホッとした。
一方で、美味しそうなお寿司を見ても、義母はもう食べないんだ、と思うと胸がギュッとなった。
あんなに食べることが好きだったのに…。
…いや、義母は本当に食べることが好きだったのだろうか?
かつての義母の言葉のアレコレを思い出す。
「美味しそうやし買ってきてん、食べや。」
「なんちゃらクッキングでやってたんを真似して作ってみてん、食べて。」
「今年もいかなごがいっぱい買えてん、くぎ煮炊いたし、あんた、持って帰って冷凍しとき。」
「ムッちゃん、バッテラ買って半分こしよっか。」
「あんた、バッテラもう一個食べとき。」
元来、お世話焼きだった義母は、食べさせることが大好きで、自分自身が食べることにはそれほど興味がなかったのではないだろうか。
バッテラが好きなのは私の方で、義母はそれほど好きでもなかったのではないだろうか。
そんなわけないけど、そう思うことにして、この現実を私が受け入れるしかないのだ。