書評:『日本の「非核」神話の崩壊』(日高 義樹)
日高さんの2019年7月の本。
安全保障の環境がかなりアップデートされている。
最初に、核兵器の使い方についての話がある。広島・長崎に落とされた爆弾は市民を全部殺すような使い方をした戦略核兵器であった。何万、何十万という人を殺戮する残酷な核兵器である。最近は、ミニ核兵器というべき戦術核兵器というものがあり、それだと放射能の影響は残るだろうが、同じようなことは起きず、戦場でも使えるという判断を米国やロシアはしている。また、中国が日本を狙うなら、核兵器を日本上空1万メートルで爆発させるという話。それによって、電磁波攻撃をして、日本のコンピューターを全部壊し、経済を麻痺させる。(人が放射能の影響を受けるという話は一切本には書いていなかったが・・・)そういう広島・長崎よりはましな核兵器の使い方をすることがあり得るという話。
次に、米国はミサイル戦争で破れたという話。ロシアが超音速ミサイルを整備していて、これは米国には迎撃できない。米国の宇宙の衛星も、中国の衛星攻撃システムに狙われていて、無効化されるかもという話。ここの巻き返しをしないと米国はまずいので、INFなどを破棄して、米国もミサイルを許可せざるを得ないという話。
次に北朝鮮の核の話。今までは平和な核の時代だったけれども、これからは「異常な核の時代」になるという話。北朝鮮は独自に核兵器の技術を開発してしまった。例えが非常に悪いが、ホンダが独力で自動車エンジンを開発してしまったようなもので、北朝鮮の技術開発能力は侮るべきではないという話。また、誰でも核兵器を持てるようになってしまったので、米国ロシアがお互いに牽制するという時代ではなくなったという話。核に対する抑止力は、核しかないので、核兵器を持って反撃能力のない国は、核兵器で脅されて終わってしまうという話。それが、「異常な核の時代」。
ちなみに、日本を守るために米国は北朝鮮に核ミサイルを撃つかというと、おそらく答えはNoだ。米国本土が核ミサイルで狙われるなら、米国は日本を守るために核ミサイルを撃たない。これが、「異常な核の時代」という現実。
核ミサイル・宇宙軍以外の中国の海軍、空軍は弱いという話。米国同盟国に、日本・台湾・フィリピン・マレーシア・インドネシアと連なる島々に地対艦ミサイルを整備され、中国の海軍は、無効化されたという話。中国空軍は、ステルス戦闘機の運用能力がないので、戦えないという話。ステルスは偵察機で、後ろのミサイルを管制するシステムや、ステルス戦闘機同士が秘匿通信する技術が必要なのだが、それが中国空軍にはないという話。
あとは、米国の分裂。結局、米国のマスコミが御用聞きに成り下がって報道じゃなくなったよねという話。amazonとか、民主党系の機関が、札束でマスコミのほほを叩いて、好き放題。ロシア疑惑なんで嘘八百という話。オバマ大統領は国家反逆罪であるという話。政治的に任命した官僚は、政権が変わればやめるのが今までの仕組みだったが、それをオバマ大統領は、自分の子分たちを試験を受けた一般の官僚と同じにする制度に変更。つまり、民主党のスパイを、米国の官僚にもぐりこませたわけだ。そのオバマのスパイたちが、政権内部から情報漏洩をし、ロシア疑惑とか、ウクライナ疑惑などを演出し、マスコミに書かせている。「一体、米国の報道はどうしちまったんだ。男気出せ」という、元NHKらしい職人気質で、日高さんは嘆いている。
その後、核戦争が始まるまであと2分、という話になっている。
「核兵器は使えない兵器」という石原慎太郎元都知事の考えはもはや現実的ではなく、核兵器は使える兵器になってしまい、そして、異常な核の時代がきて、どこの中小国家も核兵器を持つ時代になってしまった。相手に核兵器を使わせないためには、こちらも核兵器を持つしかない。軍事力の不均衡が侵略を引き起こし、戦乱の世の中を作るのだから、侵略を受けたくなければ、日本も核武装するしかないんだけど、核兵器に対するアレルギーが日本に蔓延しているからまずいよね、と、日高さんは現状を大いに懸念している。
さて、感想。
私も核兵器は嫌なのだが、これはもう、しょうがないと。原子力潜水艦を作り、潜水艦発射型の核ミサイルを持つしかない(中国に侵略されたら嫌だもの)。香港で起こっていることが、日本で起きてしまうということ。お金があっても、軍事力で侵略されれば、カツアゲされますよ。
常に、安全保障 > 経済 である。命あってのお金。
そして、新しい脅威。中国の空母はどうでもよくて、恐るべきは宇宙兵器とミサイル。テーマは宇宙。宇宙で戦争やっちゃうと、デブリが広がって、地球が宇宙不毛の土地になってしまう。とても残念なことになる。
北朝鮮。核ミサイルのインパクトは大きい。私も北朝鮮をなめていたが、世界の安全保障に関係する大きな問題だったのだと大いに反省した。
こちらも、結論は同じになってしまう。結局は、日本は核ミサイルを持つしかない。そうしないと、中国に侵略される。米国は日本をある程度守ってくれるが、多くの米国民の命を張ってまでは(LAに核ミサイルを打ち込まれるリスクをとってまでは)日本を守ってくれない。ウクライナもクリミアもそうだった。
残念ながら、我々は、戦後とは、根本的に違う世界を生きているのだ。
安全保障をちゃんと考える政治家が出てこないと、本当にまずい。安全保障の政策提言もしっかりやらないといけない。これは、もはや、防衛省だけの問題ではなく、国家の安全保障の問題である。米国が日本の安全保障を代わりにやってくれる時代は終わったのである。
さようなら、パクス・アメリカーナ。
我々は、「異常な核の時代」に生きていかねばならないのだ。
大変残念ながら、それが現実である。