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科学が料理を革新する! 地球物理学がもたらす新感覚レア天丼 (元教授、定年退職198日目)

大阪には、土佐料理を提供する名店が数多く軒を連ねています。皿鉢料理をはじめ、クエ鍋、鯨料理、土佐ジロー、四万十ポークといった多くの名物が楽しめますが、中でも私が愛してやまないのは「鰹のたたき」です。特に今の時期は「戻り鰹」の旬で、脂が乗ってまさに絶品です。さらに藁の高火力で一気に焼き上げた「たたき」は、香ばしくいぶされた皮のパリッとした食感と、凝縮された旨味が広がります。タマネギやニンニク、大葉などの薬味をたっぷりと添えていただくと、ご飯にもお酒にも合う最高の逸品となります。

鰹のたたき(注1)


さて、「たたき」のだいご味はお刺身と焦げ目のある外側の皮のハーモニーですが、「銀座 三(みつ)よし」では「お刺身だけど周りは天ぷら」という独特のレア天丼が提供されています。前回、「がっちりマンデー!!」の「フライヤー」特集を取り上げましたが、今回もその中から、この斬新な美味しさで評判のレア天丼(下写真)を生み出すフライヤーをご紹介します。一見、料理に関する話のようですが、最終的には科学に繋がっていきます。

斬新な美味しさで評判のレア天丼(注2)


店主に美味しさの秘密を尋ねると、「魚は少し火を通すだけで旨味が増すため、うちの場合は衣で包んで周りだけ揚げています」とのこと(注2,3)。つまり、お刺身を数十秒だけ揚げることで、水分がほどよく飛び、旨味が凝縮されるのだそうです(タイトル写真:注2)。


しかし、お刺身を揚げるのは至難の業で、通常、水分の多い食材をフライヤーに入れると、食材の水分が蒸発して爆発し、高温の油が飛び散る危険性があります。そこで、秘密兵器「クールフライヤー」を導入することで、油が飛び散ることなく、中はしっとりとしたお刺身、外側はサクサクの衣に仕上げることができたそうです。(下写真をどうぞ)

通常、食材の水分が蒸発して爆発し、高温の油が飛び散る危険性(注2)
クールフライヤーで調理(注2)


では、なぜお刺身のまま揚げられるのか?

クールフライヤー(株)は、熱い上層部(180℃)と低温の下層部(40℃)に分かれた構造のフライヤーを開発しました(注2,4)。上の高温の油で調理しながら、水滴は比重が大きいため低温の下層に落下する仕組みです(下写真:水分は40℃の場所に留まり、蒸発や爆発しません)。ただし、この方法では熱い部分と冷たい部分が近接しているため、全体の熱効率が下がると考えられ、他社はこの開発を見送ったようです。

クールフライヤーのメカニズム概要(注2)


ところが、同社の山田会長によると、地球物理学では、温度の異なる層がある場合、各層ごとに対流があると層と層の間で熱が混ざりにくいことが知られています。実際、地球には内核、外核、下部マントル、上部マントルが存在しますが、下写真に示すように、各層の対流のおかげで地球が冷えにくいとされています。この原理を応用し、マグロのお刺身に衣をつけてフライヤーに入れるだけで、お刺身と天ぷらの良いとこ取りをしたレア天丼が誕生したのです。

地球物理学とフライヤーの関係(注2)


さらに、番組では最後に名前が紹介されただけでしたが、量子力学と流体力学の応用で揚げ物の油切れを改善する「BBFRY」という製品にも触れていました。(株)BBラインのウェブサイトによると、球体バイオセラミックスをフライヤーに入れるだけで、長時間の使用で劣化(会合)した油をBBFRYの共鳴共振波で解離させ、油をサラサラな状態に戻すことができるそうです(下写真)。これによりフライヤーの油の使用量を削減できるだけでなく、吸油率が低下するため、冷めてもサクッとおいしく揚がるとのことです。

フライヤーに入れるBBFRYと効果のメカニズム概要(注5)


このように、科学は一見関係なさそうな料理の世界にも革新をもたらす可能性を秘めています。今後は、科学者は料理を、料理人は科学をぜひ見直し、互いの知見を交換・融合させることで素晴らしい新料理が生まれることを期待しています。


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注1:高知市 観光情報サイトよりhttps://www.city.kochi.kochi.jp/site/kanko/gurume.html
注2:TBS テレビ「がっちりマンデー!!」より
注3:銀座 三(みつ)よし、インスタグラムより https://www.instagram.com/rare_ten_mitsuyoshi/
注4:クールフライヤー、ホームページよりhttps://coolfryer.co.jp
注5:(株)BBライン、ホームページより
https://www.bbfry.net



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