アメリカのご家庭に招かれて: 米国流おもてなしの記憶 (元教授、定年退職217日目)
前回は、アメリカでの同僚たちとのカジュアルなパーティーについてお話ししました。トルティアチップスやバッファローウィングを囲んで、ビールを片手にリラックスしたひとときでした。今回は、もう少しフォーマルな招待パーティーの様子をお届けします。と言っても、数は多くありませんでしたが、どれも心に残る 30 年前の特別な思い出です。
ワイン1ケースで温かく迎えられた夜
最初に自宅に招いてくださったのは、温厚で優しい研究室 No.2 の先生でした。渡米直後で、数日後の研究発表のことで頭がいっぱいだった私にとっては、救われるようなタイミングでした。初めての招待に戸惑っている私に、先生は「自分の家のようにくつろいで下さい」と声をかけてくださり、そのおかげで緊張が和らぎました。
最初のうちは何を話せば良いかわからなかったのですが、研究の話を始めるとたちまち盛り上がりました。しかし、その様子を見た先生の奥様とうちの奥様が「これだから男の人たちはダメなのよね」と顔を見合わせて笑っていたことを覚えています。
ヨーロッパ出身の先生は、地元のワインを1ケース用意してくださいました(ほとんどはご自身のためだと思いますが(笑))。「いくらでも飲んでください」という言葉に甘えて、美味しいワインを堪能しました(翌日は、二日酔いで大変でした)。酔っ払ってからの記憶は曖昧ですが、美味しい料理と楽しい会話に本当に楽しませていただきました。
感謝祭のご招待パーティー(奥様)
次は、私ではなく奥様がお呼ばれしたパーティーの話です。サンクスギビング(感謝祭)のパーティーに、日本が大好きな英語の先生から招待されたそうです。感謝祭は日本では「七面鳥を食べる日」として知られていますが、本来は収穫と前年の幸せに感謝を捧げる国民の祝日だそうです。アメリカ人は、実は敬虔な人が多く、このような日をとても大切にしています。
「祭」という名が付いているものの、メインイベントは当日の夕食で、親族や大切な友人と共に祝うのだそうです。メインディッシュは、野菜やハーブなどの詰め物をした七面鳥を切り分けて、クランベリーソース(やグレービーソース)とともに食べるのだそうです(酢豚にパイナップルが入っているような感じ?かと思いますが、とても美味しかったそうです)。そして、付け合わせのマッシュポテトや煮込み料理、最後にデザートのパンプキンパイが出てくるという、伝統的なメニューが振る舞われたそうです。(タイトル写真、下写真をどうぞ)
その先生のお宅には、日本の古い絵画がたくさん飾られていました。その中の一枚について「由緒が分からなくて…」と相談された奥様が見ると、明らかに「鉢の木」の物語(<追記>)を描いた絵。そのことを説明すると、先生は「長年の謎が解けました!」と、大変喜んでくださったそうです。
ボスの教授宅で味わった心温まる夕べ
最後は、研究室のボスの教授から招待を受けた際のエピソードです。日本からの来賓を迎えるということで、私たち夫婦も正式な招待状をいただきました。フランス出身のボスですが、この時は典型的なアメリカ式のおもてなしで私たちを迎えてくれました。まずご家族を紹介していただき、リビングに通されアペリティフ(食前酒とおつまみ)をいただきました。その後、お庭が一望できるテラス席に移り、ボス自らバーベキューグリルでお肉を焼いてくれました。お肉が焼けるまでは、緑豊かな庭を眺めながら、皆様とお話しを楽しみました。ボスは研究室での厳格な表情とは打って変わり、終始ニコニコしてジョークを交えながら私たちを楽しませてくれました。(下写真をどうぞ)
後日、ボスの奥様から丁重なお礼状が届きました。特に感激したのはその内容で、私が息子さんたちに日本のレターオープナーをお土産に持参したのですが、「息子たちがレターオープナーを使いたくて、毎日自分宛の手紙を楽しみに待っています」と書かれていました。なんとおしゃれなお手紙ではないでしょうか。その心遣いに感激しました。
(30年経った今になって気づいたのですが、もしかしたら私から息子さん宛てに手紙を書いて欲しいという意味だったのかもしれません(汗))
前回の同僚たちとの気楽なパーティーも、今回の緊張感がありながらも心温まるパーティーも、どちらもアメリカの人々の優しいおもてなしだと感じました。
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