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ボルドーでの懐かしい思い出(その3、鳩の料理と恐怖の夜): 元教授、定年退職 119日目

昨日は、ボルドーの国際学会最終日に行われたエクスカーションについてご紹介しました。今回は、その晩に起こった出来事をお話ししましょう。


2003年、初めてのフランス渡航を前に、私にはいくつかの心配がありました。中でも最大の不安は、フランス人が英語を話さないという噂でした(実際に現地に行ってみると、もちろん研究者たちは流暢に英語を話しましたが、街中では頑なにフランス語以外で話そうとしない人もいました)。

そのような心配もあり、研究室の院生に簡単なフランス語をレクチャーしてもらい、基本的な数字や会話ができるようにしました(私たちの学生時代は、化学系は第2外国語としてドイツ語が必修でしたが、最近は自由に選べるようになりました)。結局、挨拶以外でフランス語を使う機会はほとんどありませんでしたが、薬局でバンドエイドを買ったり、タクシーの料金を支払う時に少し役立ちました。


さて、エクスカーションの話に戻りましょう。サンテミリオンとラスコーを巡った後の夕食会と宿泊の様子についてお話しします。それまでも簡単な食事は皆で楽しんできましたが、本格的なフランス料理は初めてでした(タイトル写真)。意外なことに、フランス人自身もフォーマルなフランス料理を食べる機会は少ないらしく、彼らも少し緊張していると言っていました(もしかしたら、私たちの緊張をほぐすためだったのかもしれませんが)。

席に着くと、メニューは当然全てフランス語で書かれており、フランスの研究者に説明をしてもらいました。概要は把握できましたが、メイン料理だけは彼らも英語がわからないとのこと。どうやら鳥類であることはわかりましたが・・・、特徴を聞くと「鳩」のようです。日本人グループも「きっと鳩だよね」と顔を見合わせましたが、困ったことに「鳩」の英語が出てきません。誰かが「クルックー」と鳴き声を真似したら、フランス人研究者が「それだ!」とにっこり。ようやく全員の認識が一致しました。そして隣のテーブルに尋ねて「pigeon」と英語がわかり、安堵したのでした。ちなみに、鳩の料理は非常に美味しかったです。


夕食後、サンテミリオンのワインセラーで購入したワインを飲みながら(下写真)、宿泊部屋の割り振りをしてもらいました。宿泊先は小さな城のような場所でした(下写真)。当時最年少だった私は、見たこともないような大きな鍵(かんぬき?)を渡され、「いい部屋だよ」とフランス人委員長からニッコリされました(何か不穏な雰囲気?)。

小さな城のような宿泊先
サンテミリオンのワインセラーで購入したワイン


実際に部屋に向かうと、本館とは別に建つ大きな円筒状の建物でした(下写真)。なんと、この建物全体が私の部屋とのこと! いやいや、これは怖い、映画で見たことがある、夜中にジェイソンがやってくるやつだ、と。案内人もおらず、一人で建物に入ると、中は2階建て構造になっており、いくつもベッドがありどこで寝ても良さそうです。しかし、怖さのあまり、結局1階の入り口に椅子でバリケードを作って寝ることにしました。ワインのおかげですぐに眠ることができましたが、恐怖に震えた夜でした。

本館とは別に建つ、私が宿泊した大きな円筒状の建物
1階の入り口にバリケードの椅子を!


眠りが浅かったのでしょう、朝早く目が覚めました(下写真)。外に出て改めて建物を見てみると、全く夜の恐怖は感じられず、むしろ素晴らしい眺めで、自分が最も優遇されていたことに気がつきました。「それならそう言ってくれたらよかったのに・・・」とつぶやきました。

早朝、建物の周りの様子


周囲は牧場になっており、囲いの中で鹿や羊が走り回っていました。なんて気持ちの良い自然なのでしょう。爽やかな朝の散歩を楽しみ、今度は、清々しい気持ちで部屋に戻りました。


今回の執筆を通して、懐かしい旅の思い出を振り返ることができました。多くの写真も発掘でき、このような機会をうれしく思います。私の初めてのフランス旅行記でした。




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