元教授のパリオリンピック観戦記、最終回:レスリングの魅力と「明鏡止水」での復習(定年退職135日目)
一昨日、パリオリンピックでレスリングの試合を観戦しました。清岡幸大郎選手と鏡優翔選手がそれぞれ決勝戦に勝利し、金メダルを獲得しました。しかし私は、いずれも決勝のみの観戦だったことに加え、ルールや試合のポイントを十分に理解していなかったため、やや消化不良気味でした。
私は昭和世代で、プロレスが大好きでした。その後の総合格闘技のブームにも影響を受け、様々な格闘技の試合を観戦してきました。しかしレスリングは、柔道も含め、実際に競技をした経験がなく、試合のポイントなどを十分に理解していなかったのです。<追記> もご参照ください。
さて、話をレスリングに戻します。観戦後の消化不良を解消すべく、NHKの番組「明鏡止水 武の五輪」の「レス力(りょく)を磨け」の回を、改めて見てレスリングの復習をすることにしました。「明鏡止水」は、以前、オリンピックのフェンシングの時に「武士と騎士」(7/31, note)、馬術の時に「馬と弓」(8/1, note)で紹介しました。司会は岡田准一さんとケンコバさんの二人で、武術に関する非常に興味深い番組です。岡田さんはアイドルグループに属しながらも、武術に精通している方です(<追記> 参照)。
「レス力」の回では、参加したメンバーがとても豪華でした。格闘技界のレジェンドである桜庭和志選手(タイトル写真:注1)、リオオリンピック女子金メダリストの土性沙羅選手、そして同じくグレコローマン男子銀メダリストの太田忍選手(下写真)などが登場しました。
土性選手は「タックル」のポイントとして、タックルに入る前のフェイントと突進力の鍛錬の重要性を説明しました。その鍛錬として「二人おんぶ」で坂を走るという過酷な方法を紹介し、番組でも司会者二人を同時に背負って見せてくれました。
桜庭選手といえば、世界最強のグレイシー一族を次々と破るなど伝説の選手でしたが、その代名詞ともいえる「片足タックル」を実演してくれました。まず上半身への意識をさせて下に潜り込み、足首を押さえ、肩で膝をロックするという手法でした。その解説は非常に論理的で、関節の逆方向に体重をかける、まさに「てこの原理」で簡単に相手を倒す様子を見せてくれました。
太田選手は、まず「投げ」とは力で投げるのではなく、重心やバランスを見て相手の力を利用するものだと強調しました(下写真)。特に得意な「がぶり投げ」において、相手の反応に応じてどの方向にも投げられることを披露しました。そのためには、相手をホールドする力(クラッチ力)が必要で、引きつけ、締めつけ、胸を出すという三段階の連携を示していました。対して桜庭選手は、そのクラッチを外す方法として、体の仕組みを巧みに利用した手法を見せてくれました。
この番組を通じて、レスリングは力任せではなく、体の仕組み、重心、バランスを系統的かつ論理的に活用するスポーツであることを実感しました。そして、この知識を得た上でオリンピックのレスリングを観戦していれば、もっと深く試合を楽しめたはずだと後悔しています。次回の観戦では、今回得た知識を活かし、新たな楽しさを味わえると期待しています。
では、また。
−−−−
注1:NHK「明鏡止水 武の五輪」「レス力を磨け」ホームページより https://www.nhk.jp/p/ts/4VK9LM36J8/episode/te/RNG8M87LR1/
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?