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修理職人のプロフェッショナルな仕事術: 匠の技が救う窮地 (元教授、定年退職326日目)
豊中市の北部に位置する千里中央駅は、大阪北摂の主要ターミナルとして長年親しまれてきました。かつては北大阪急行(御堂筋線)の終点であり、大阪モノレールも通っています。周辺には、トイレットペーパー騒動で注目されたピーコック(当時は千里大丸プラザ)、千里阪急デパート、千里阪急ホテル、そして屋外コンサートで賑わったモールなどが軒を連ねていました。しかし近年、大規模な再開発プロジェクトが始動し、現在は一時的に寂しい印象を与えています。このエリアは大阪のベッドタウンとして、多くのマンションが建設され、地域全体の成長を見据えた計画的な大改修が進行中ですので、数年後には再び新たな活気を取り戻すことでしょう。
思い出の詰まった服に新たな命を吹き込む「マジックミシン」
この風景の変化の中で、古くから洋服の修理を行う「マジックミシン」があります。小さな店舗ですが、中に入ると熟練の女性従業員たちが常にミシンをかけていて活気があります。私自身は長い間こうした店と縁がありませんでしたが、ある特別なワイシャツの修繕依頼をきっかけに、この店の常連になりました。いただいた生地を使ってデパートで誂えた特別なバーバリーのワイシャツは、重要な日に袖を通す勝負服でした。5年ほど愛用するうちに袖がほつれてきたため、「マジックミシン」に相談しました。
迎えてくれたのは経験豊かな年配の女性で、修理方法について様々な選択肢を提案してくれました。最終的に、袖を少し詰めることで解決しましたが、そのプロフェッショナルな技術と広い視野にすっかりファンになりました。いつ訪れても新たな修理法を提案し、それぞれの長所短所を挙げて候補を絞っていくのです(<追記> 参照)。
<追記> ズボンのお腹回りを広げる時は、前の部分ではなく後ろを少しずつ広げる方法を提案してくれるなど、いつも私では思いつかない手法を考えてくれました。
「有吉のお金発見」で知る修理職人の矜持
以前、NHK「有吉のお金発見」で「修理職人」の特集を視聴しました。昭和レトロ家電や管楽器の修理(<追記> 参照)が紹介されましたが、この番組で特に興味を引いたのは成田空港を拠点に活動するスーツケースの修理職人でした。(タイトル写真、下写真もどうぞ:注1)
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<追記> 管楽器の修理で難しいのは、管は非常に薄く、少しの変化で音が微妙にずれてしまうためです。特に感心したのは、管の凹みには硬い鋼鉄製の球を中に入れ、凹んだところにもっていき、逆さを向いて何百回も優しく叩くところです。金属球の方が管より硬いので、球を揺らす衝撃で凹みを戻すことができました(下写真)。
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旅先で壊れた“重い箱”を再び「相棒」にしてくれる匠の技
空港ではトラブルがよくあります。私の友人は、スーツケースのタイヤが旅先で壊れるといかに大変かという話を力説していました。彼が言うには「タイヤがあるので重い土産を山ほど入れていたが、それがある時から単なる重い箱になるんだよ、それはすごい衝撃だった!」とのことでした。そのような困った状況を救ってくれるのが空港のスーツケース修理職人です。
鍵が開かない? タイヤが外れた? 旅人を救う空港の最後の砦
成田空港で活躍している中村さんは、この道10年の職人で、多くの旅行者を助けてきました。搭乗時間に追われ大慌ての中、迅速に対応する「旅行者の最後の砦」として、毎日 20 人ほどが助けを求めてやってきます。(下写真もどうぞ)
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番組で紹介されていたのは、 (下写真もどうぞ)
・これから日本に長期間滞在して東京や札幌に行くアメリカ人老夫婦は、夫が暗証番号を忘れて困っていましたが、中村さんは、特殊な工具で1分で解決しました。
・5年ぶりにアメリカから帰ってきた日本人女性は、お土産を入れすぎタイヤのネジが外れましたが、7分ほどで修理。
・ファスナーが剥がれた女子学生のスーツケースを、針と糸で生地を丁寧に縫い直す手際の良さ。
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このように、本当に困った人たちを黙々と熟練の技で直していく中村さんは、さすがプロだと思いました。
新しいものだけが正解じゃない ─古き良き「直して使う」喜び
アメリカやヨーロッパでは、古いものを大切にし、壊れると直して使うことがスマートだと思う文化があります。かつての日本でも、物を大切にし、長く使うことが当たり前でした。バブルが悪かったのでしょうか、時代の流れで変わってしまいました。近年、その価値が再び見直され、修理を楽しむ若者が増えているようです。直して使うことの喜びを再認識し、この文化が広がることを願っています。
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注1:NHK「有吉のお金発見」で「修理職人」の特集より