崩壊し続けているんだよ

いや心も崩壊し続けているんだよ。
原子核が崩壊し続けているんだよ。

カンブリア爆発の後に生物が海から陸へ上がる。
そのときの、いやに親密な磯臭さが鼻腔の奥に今も張り付いているのがわかりますか。
そういったものが崩壊し続けているんですよ。
これは宇宙全体がそうですよ。
一階の次は八階でそのあとは全部の天井がすぐに迫り来る臨界にあるんだよ。

そうなったら次はどうしていくんですか。
深淵を削り出していくんだよ。
無量大数の命が剃り落とされた果てにそういったものが浮かび上がってくるんだよ。
膨大な循環が根拠として階層的に立ち上がってくるんだよ。血潮が流れ去った痕跡が見えるよ。

海岸沿いに恐ろしい数のイルカが死んでいる。
我々が食べて殺しました。すべては最初から腐敗していました。有機的であろうと抵抗を続けた人類は滅亡しました。

「むなしかった味が見えるのですか」

かつての残響に耳骨を滲ませて、いまなにか、思うところはありますか。戦争をしますか。わたしの視力は、この辺りでもう尽きてしまうようだ。
残念です。あなたの顔が見たかった。
洗われることのない魂を拙いまま磨こうとしているのです。白い手首が水底の石に触れる。拾い上げようとしては流されていく尖った骨の破片が全ての最後に笑うものだよ。乾いた血の色が空を描いている。空を裂く銀鋏の尾翼からは毒が出ている。

骨を洗っているんだよ。
死んだ魚は空を飛ぶよ。
我々も空を飛ぶよ。
目を閉じたら飛んでいるのがわかるよ。
ほら肉体が消えたよ。

目の前であなたが崩壊し続けているんだよ。