【体験談と日記】おめでとう後輩、ありがとう先輩(2)
上の続き。
数日前、その先輩(以下、A先輩と称す)からラインがきた。
内容は、部活のある後輩の大学卒業を祝ってあげようよ、とのことだった。
嬉しく思った。
「やりましょ!」僕は返信した。
メンバーは、大学三年の時に一番一緒に過ごした四人だ。
当時、四年の二人、三年の僕、二年の後輩だった関係だ。
当日。
A先輩と早めに集合して、プレゼントを探すことになっていた。
もう一人の先輩は、仕事があるため、主役である後輩と一緒の時間に合流するらしい。
A先輩と二人で池袋の西武とかパルコで後輩にあげるプレゼントを探して回った。
事前にラインで話し合い、時計をプレゼントに渡すことが決まっていたのだが、実際に価格を見るとめっちゃ高かった。
ちなみに、予算は一人1万で、三人いるため3万だ。時計を買うにはちょっと無理があった。
そもそも、先輩たちから「時計」という案が出た時、心の中で「三万でいい時計あるのか?」とは思っていたが、僕自身、代替案を全く考えていなかった。
僕たちは、目星が消えて途方に暮れた。
「え、なにあげよう。」
計画性のない二人が池袋の西武百貨店の高級店が並ぶ空間で頭を抱えた。
そこからが長かった。
3時間もプレゼントを探す旅が始まった。
2時間悩みながら歩き続けたあたりで、だいぶ疲労が溜まってきた。
先輩「もうプレゼントたわしにしよっか。」
僕「え、絶対喜びますよ、たわしにしましょ」
と、ふざけた会話にも至ったが、最終的にGUCCIのキーケースに行き着いた。
たわしからGUCCIになったのだから、相当喜んで貰わねば困る。
予算は少しオーバーしたが、まぁ社会人になる門出だし奮発してやろう。
と、A先輩は優しさを発揮していた。
先輩はプレゼント探しの3時間、禁煙していたため、プレゼントが決まった瞬間、一人で小走りで煙を吸いに行った。
僕は代表で会計をして、GUCCIの店内を見ながら商品が包装されるのを待った。
しばらくして、商品を受け取った。
そこで、少し気になることが浮かんだ。
このGUCCI !!と書かれた紙袋持って合流したら、プレゼントが一瞬で分かっちゃう。
僕は、GUCCIの紙袋をカモフラージュしたい旨を恥ずかしながら店員さんに伝えた。
すると、店員さんは「たしかに、バレちゃいますよね!西武の紙袋あるか確認してみます、ちょっと待っててください!」と言って、何処かへ取りに行ってくれた。
しばらくして店員さんは、紙袋を持って来てくれた。そして、めっちゃ申し訳なさそうな表情で「これ、11円かかっちゃうんですけど、大丈夫ですか…?」と言った。
「あ、全然大丈夫です、お願いします」
と言って紙袋を買った。
GUCCIの店で11円だけ現金を払って紙袋を買うことは、非常に面白い体験だった。
いずれにしても場違い感は半端なかったが。
店員さんから、西武の紙袋に入ったGUCCIのキーケースを受け取り、お見送りされた。一時的な金持ちになった気分だった。
その後、喫煙所にいるA先輩と合流し、予約されていた居酒屋に向かった。
集合時間少し前に、居酒屋にて全員が集合し、「久しぶり〜」とばかりに盛り上がった。
飲み会が始まり、近況報告や昔話をたくさん話した。しばらくしてお祝いのプレートが出てきて、同時にキーケースのプレゼントを渡した。
結果、後輩は喜んでいた。
入社おめでとうではなくて、卒業おめでとう。
大学時代を振り返りながら、四年間部活で戦い抜いたことを労ってお祝いした。
その中で、その後輩に「四年生の時期はどうだった」のかを訊いた。
部活面では、コロナで剣道の大会が全部なくなったため目標がなくなり、楽しくなかったらしい。
生活面では、合宿や行事がなくなり、後輩との思い出が作れなかったと残念がっている一方、たまに飲みには連れて行っていたようだ。
特に、コロナ禍前までは、飲み会を開いて一気に人を集めて奢っていたらしい。
そんな話をする中で後輩がこんなことを言ってきた。
「先輩たちは、後輩に奢る時、どんな気持ちで奢ってましたか?自分、途中から奢るのに疲れちゃって、奢りたくなくなってきたんすよね。でも先輩たちがしてくれたことを後輩に流したくて、一応奢り続けてはきたつもりなんですけど…」
僕自身、自分を見ているようだった。
その後輩としては、安い店に連れて行こうとすると「え、そこ行くんですか」と嫌な顔をする後輩がいたり、「おごってくださいよ」と見え見えで近づいてくる後輩がいたりで、時々不満があったようだ。
「お前も二年の時はそんなもんだったよ?」とA先輩はその後輩を笑っていた。
A先輩はその会話を流したので、話題が移ってしまったのだが、僕だけはA先輩がどんな気持ちで奢っていたのかを知っているつもりで、微笑ましく思った。
そして、時間が過ぎ、会計の時間になった。
その後輩以外の三人が会計を済まそうと財布をいじる。
すると、後輩が、「自分も出しますよ」と財布を出した。
その後輩は、三年の時、吐き捨てるように「ごっさでぇーす」と言って、すぐにタバコをねだってくるタイプだったのだが、今回は謙虚に財布を出した。
「主役が何を言う。」と先輩が制していた。
そんな光景を見て、僕は「え、珍しいじゃん、【その後輩】が財布出すなんて」とバカにしながら、良い後輩になったじゃんと上から目線だが嬉しく思った。
「反面教師ですよ、自分も学びました」
と後輩は言っていた。
偉い。
卒業おめでとう。
後輩から先輩になる経験を経ることで、とても多くのことを学んできたのだなぁと改めて実感させられた。
また、僕自身、そういうことを学ばさせてもらった先輩には感謝しかない。
いずれにしても、奢る立場、奢られる立場。
これからどちらの立場に立ったとしても、相手を楽しませたり、感謝を表せるような相応しい態度をしていきたいと思う。
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