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ナナメ円錐は楕円錐か?

 (きょうの数学の記事は、発想としましては中学の数学ですが、計算としては高校の数学を使いますので、そういう予備知識がある程度いるお話であることを最初にお断りしておきますね。でも、いわゆる高校数学などのお好きなかたには楽しんでお読みいただけるのではないかと思っております。よろしければ最後までお付き合いくださいませ。)

 2015年、中学1年生の教科書を読んでいて気がついたのです。「円錐」の定義です。ふつう、円錐という図形は、底面である円の中心を通って底面に垂直な直線上に頂点があります。(その直線を「軸」と言います。)しかし、中学の教科書を読む限り、頂点はそこにはなくてもよさそうです。つまり、頂点が、底面である円の中心を通って底面に垂直な直線上になくても「円錐」と言うのではないか。こういう図形を以下、「ナナメ円錐」と呼ぶことにいたしますね。図は省略いたしますよ。だいたいわかりますでしょ?(このご説明でわかるかたを読者として想定した記事です。)

 さて、いわゆる「まっすぐな円錐」は、側面が展開できることは中学の教科書に書いてあります。つまり、切り開いて「まったいら」になるということです。円錐の側面を展開すると、扇形になるのでしたね。そこで私の疑問。「ナナメ円錐」の側面って、切り開いてまったいらになるのか?

 これは、だいたい以下のように考えました。まず、「ナナメ円錐」の正体とはなにか。私は純粋に幾何的に考えて、これは「(まっすぐな)楕円錐」であろうと判断しました。その楕円錐を、ナナメに切って、その切り口がたまたま円になったものが「ナナメ円錐」の正体だろうと。そして、おそらく「ナントカ柱」と「ナントカ錐」の側面は切り開いてまったいらになり、そして、切り開いてまったいらになる曲面は、「ナントカ柱の側面」と「ナントカ錐の側面」に限られるのではないか。最後の問いはオープンプロブレムですが、経験的に言えることは、われわれ、まったいらな紙をまるめてできる曲面って、ナントカ柱の側面か、ナントカ錐の側面だけではないですか?それから、少なくとも私の大学院で得た知識から「球の表面」や「2人乗り浮き輪(種数2の曲面)」は切り開いてまったいらにならないことは知っています。

 さて、数日前、noteのネタを考えていて、このことを書こうと思いました。少なくとも、「ナナメ円錐というものは、(直の)楕円錐なのか」というのを計算してみる気になりました。$${xyz}$$座標空間のなかで円錐の式を立ててみると以下のようになりますね。
 $${x^2+y^2=z^2}$$

 よろしかったでしょうか。これは楕円の側面の式ですね。演習問題。この式をさまざまな平面で切ってみて、切り口が、円や楕円や放物線や双曲線になることを確かめてください!これ、高校で習いますけど、こうやって式を立てて習うことは(先生によってはするかもしれませんけど)なかなか習いませんよね?より簡単な演習問題。ためしに、$${x}$$軸に垂直な平面で切って、断面が双曲線になることをお確かめになってはいかがでしょうか。

 さて、最初に白状してしまいますと、以下の議論には間違いがあります。どうしてもうまくいかなかった私は、翌日(これを考えたのが今週の日曜の夜、その翌日)、最近、私の固定記事をお読みになって連絡をくださった「物理のかぎしっぽ」さんという賢いかたにご相談して、解決されました。たしかにナナメ円錐になります!では、まず以下に、私の「間違った議論」をさらしますね。恥ずかしいですけど。どこが間違っているか、見抜いてくださいね!

 さて、ナナメ円錐の式を立ててみよう。軸の傾きを1にして、$${z}$$軸に垂直な平面で切ったら切り口が円になるようにすればよかろう。そして、「ナナメ」の傾きを適当に設定すると、ナナメ円錐の式は、以下のようになるのではないの。

$${(x-z)^2+y^2=(\frac{z}{2})^2}$$

これを$${45°}$$、回転して、軸を$${z}$$軸に重ねよう。回転する前の点の座標を$${(x_0,y_0,z_0)}$$として、以下のような式になりますね。行列っていま高校の範囲じゃないのでしたね。私が教員だったころは、行列は高校で習ったのですよ。これ、「高校までの範囲」ということにしてくださいね。ダメ?ごめんなさいね。

$${\begin{pmatrix}x\\y\\z\\ \end{pmatrix} =\begin{pmatrix}cos45°& 0 & -sin45°\\ 0 & 1 & 0 \\ sin45° & 0 & cos45°\\ \end{pmatrix} \begin{pmatrix}x_0\\y_0\\z_0\\ \end{pmatrix}}$$

つまり、$${x=\frac{1}{\sqrt{2}} x_0 - \frac{1}{\sqrt{2}} z_0}$$、$${y=y_0}$$、$${x=\frac{1}{\sqrt{2}} x_0 + \frac{1}{\sqrt{2}} z_0}$$ですね。ここで$${(x_0,y_0,z_0)}$$は回転前のナナメ円錐上の点なので、$${(x_0-z_0)^2+y_0^2=(\frac{z_0}{2})^2}$$ですね。ここから$${x_0}$$と$${y_0}$$と$${z_0}$$を消去すると、


$${x^2+\frac{y^2}{2}=\frac{(x-z)^2}{16}}$$という式になります(演習問題。いま私が飛ばした計算をやってみてください。まあ間違った議論ですけどね笑)。ふうむ。左辺はなんとなく楕円っぽいですね。しかし、なんで右辺に$${xz}$$の項が残るの?

 ここでヘルプをしました。教員の時代なら、職員室の同僚に聞いたでしょうけど(こういうのが好きな人は多い)、いまの私にはそういう人がいない!そこで、私の固定記事をご覧になって、共通の知人を通してつながった「物理のかぎしっぽ」さんにご相談!その日の夕方に返信をくださっていて、解決!

 さあ、上の私の議論はどこが間違っていたでしょうか?演習問題。この議論の間違いを見つけて、直してください!

 答えを書いてもいいですか?

 いいですか?

 書きますよ?

 その前に、「物理のかぎしっぽ」さんのサイトのリンクをはりましょう。


 さて、いよいよ正解です。

 ナナメ円錐の式は間違っていなかったのですね。$${45°}$$というのが間違い!てっきり、傾き1で「軸」を作ったものだから、$${45°}$$まわしてしまった。それではうまくいかないはずですよね。ちょっと考えればわかることです。言われてみればそうだ。当たり前です。なさけないなあ。(演習問題。なぜ$${45°}$$ではダメなのか、よく考えてみてくださいね。)

 物理のかぎしっぽさんに教わったやりかたは以下の通りです。回転させる角度を$${\alpha}$$として($${\alpha}$$は定数ですよ。きれいな値にはなりません)、$${xz}$$の項を消えるようにするのです!すると、たしかに(まっすぐな)楕円錐になりますから!

 最後の演習問題。この計算をやってみてくださいね。それほど難しくないですよ。

 終わりに。物理のかぎしっぽさんの力を借りましたが、やっぱり「ナナメ円錐」は「楕円錐」でした!7年前の幾何的な「中学生向け直観」は正しかった!このたび、これが式で確かめられて、うれしかったです!(これというのも、私の「算数・数学教室」(固定記事参照)の驚異的な理解者で、現在、リライトをしてくれている大切な仲間が「もっと算数・数学の記事をたくさん上げるべき」というアドバイスをくださったからこれはネタになったのです。ありがたいですね!固定記事は以下です。)


 本日は以上です。それではまた!

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