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本を通して感じた震災
東日本大震災から10年。
10年で子どもたちも大きくなって、私の周りの環境もだいぶ変わった。
ただ、関西にいた私は当時の地震や津波の被害を直接知らない。原発事故の影響による計画停電の不便な生活も経験していない。
地震と津波が東日本を襲ったとき、私は3歳の娘と8か月の息子を連れて近所の耳鼻科待合室にいた。
そこにあった大きなテレビを、居合わせた多くの人と一緒に見た。ある人は悲鳴に似た声を上げていた。
濁流が車や家を流していく姿に言葉を失った。現実のことではないような気がしていた。
記事や本を読んだり、報道を見聞きしたりして何となく大変だったであろう当時の様子を想像するけれど、私は何も語ることができない。
むしろ、軽々しく語ってはいけないのでは、とも思っている。
震災に関する本の中で印象に残っているのが
「孤塁 双葉郡消防士たちの3.11」吉田 千亜 著。
2020年に出版、震災以来9年たってからのこと。
私は何かで紹介されていたのを見て、気になって読んでみた。
長い間語ることができないでいた人々の心に寄り添い、当時の知られていなかった状況を丁寧に書いている。
帯の「きっと特攻隊はこうだったのだろうと思った」という文字が心に刺さる。自分の一番身近な守りたい人・守るべき家族のもとには行けず、不眠不休で救助活動を行った消防士。
自衛隊や東京消防庁ハイパーレスキュー隊の活動は新聞などでも報じられていたので何となく知っていた。しかし地元の消防士たちが情報のない中、必死で戦っていたのだ。そのことは、もっと知られるべきだと思った。
そして彼らの活動は、コロナと懸命に戦う医療従事者とも重なった。
また、見えない汚染物質を避けようとする差別も、コロナの差別と通じるところがある。
自分がそんな立場になった時にどう動くか。
自分のこと、家族のことだけ優先してしまう気がする。
私にとって、多くの人に読んでほしい本の1つだ。
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