甘球必打!!
宮川理論の実践の心構えの教えである。
なぜ?難しいボールを狙うのか?
実は、私も20年前までは難しいボール、苦手なボールをどう打つかばかり考えていた。投手は、打たせないために難しいボールをなげてくるのだから、それを狙って打つ。これが一般論であったように思う。
しかし、指導をしているとなかなか難しいボールを攻略はできない。一つヒントになった出来事がある。広島カープの新井選手は私の教え子であるのだが、彼が2年生の秋に島根県へ遠征をし、当時江の川高校の投手で浜崎君(広島出身)という甲子園投手に挑んだ時のことだ。球速は130kh後半でスライダーがよく切れている右投手だ。その浜崎投手が新井選手に対して、外のスライダーを見せてのインハイ勝負を挑んできた。私は新井選手に踏み込んでスライダーを狙って打てと指示をした。しかし、インコースのストレートを意識されているので、なかなか踏み込めない。そこで、私は新井選手が怖がっているとおもって、「愛のある身体接触by野村先生」で、新井選手を打席に送り出した。その時インハイから入られて、0-2とボールが先行した。つぎこそ、スライダーだとばかりに踏み込んだ新井選手ワンバウンドしたボール球をスイングした。次のボールも見事に新井選手は踏み込んで外のスライダーを指示通りに打ちにいったがやはり、空をきった。その次のボールもスライダーであったがかろうじてファールにして粘った彼は、結局外のスライダーを左中間に打ち返したのだ。踏み込んで外のスライダーを流すのではなく、引っ張ること。このことを新井選手に教えてもらったわけだ。
また、次の打席は今度、彼は前の打席スライダーを打ったので、インコースを狙って見事に左中間に打ち返したのだ。
つまり、彼は苦手なスライダーを引っ張り、見せ球のインコースを打ち返したのだ。このことが私の思考に残っており、投手も投げそこなうし、アウトコースは流す、インコースは引っ張るという概念を捨てないといけないことに気が付かされたわけだ。
そこで、色々な捕手経験者に聞いてみると、
「投手は、10球投げたら、何球狙ったところに来るか?」と質問したら、ほとんどの捕手が2割くらいしかコントロールされない。と答えたのだ。8割がた投げそこなっていると言えるわけだ。もちろん、プロの一線で活躍されている投手はそうではないのかもしれないが、案外投手は狙ったところに投げられないことがわかった。また、投手に聞いても、ほとんどの投手がコントロールに自信を持っていないこともわかった。
それから、動画サイトでホームラン集などをみてみると、確かに投手の失投を打っているのだ。9割がた真ん中あたりのいわゆる「甘い球」なのだ。私自身も現役時代を振り返ると、「アウトコース低めに来るのか?と迷っているとド真ん中にズドーン」って見送ることが何度かあった。それからは、選手たちに「甘い球を打ち損ねるな。三振を恐れるな。」と教えるようになったのである。それを裏付けるように落合博満氏は、「外のスライダーを度も打ったことがない。また、2-2からが勝負だと、2-2からが投手が一番投げそこなう確率が高い」といっている。落合博満氏は流し打ちの代名詞ような選手であったはずが、実はアウトコースを流していたのではなく、どちらかというインコースから真ん中低めを流し打ちしていたのである。
このことも目からうろこであったように思う。だから、日々の練習でも長打の打てるボールをしっかり打てるように練習をすべきなのであるし、実際にイチロー選手は、練習のフリー打撃ではほとんどスタンドへ打ち込んでいるらしい。右中間のスタンドにはイチロー用の看板があり、それにものの見事に当てるそうである。
このことから、練習は練習。試合は試合。という発想が生まれたのである。
次回につづく。
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