最後の一枠
3月1日の東京マラソン、そして本日終了したびわ湖毎日マラソン、名古屋ウィメンズマラソン。
これらの大会は東京オリンピックのマラソン代表選考レースとなっており、びわ湖が終わった今日、ついに最後のひとりが決定しました。
まずは東京マラソンから振り返っていきたいと思います。
東京マラソン2020と新たな歴史
東京五輪を目指す多くの有力選手が凌ぎを削った東京マラソン2020。
この大舞台で見ている人たちを興奮、感動させ、日本記録更新という新しい歴史を作ったのはやはり、大迫傑選手(ナイキ)でした。
レースは序盤から3、4分台を狙えるハイペースで進み、後続集団であっても多くの日本人選手が日本記録を狙えるようなペースでレースが進められました。
高速の先頭集団でレースを進めたのは日本人では大迫選手と井上大仁選手(MHPS)だけ。
特に井上選手は序盤からずっと先頭集団で攻めながらも落ち着いた走りで4分台も狙える快走を見せていました。
一方で25〜30kmで集団から遅れてしまった大迫選手でしたが、32kmで前の井上選手の集団に追いつき、そこからギアを上げ、自身の日本記録を21秒更新し、全体の4位でゴールしました。
大迫選手に追いつかれてから井上選手は失速してしまい、結果的には大きく順位を落としてしまうのですが、あの舞台で自身の限界に挑戦し勝負した姿は本当にすごいと思いました。
この時の大迫選手の走りは、ペースで見れば途中遅れてしまっているのですが、終始冷静だったという感想を持ちました。
遅れたポイントでは大迫選手自身もキツかったと言っていましたが、そこで自分のペースをコントロールして少し休み、その後のペースアップにつなげたところがすごいなと思います。
長距離は長丁場ですので状況に応じて自身をコントロールすることが勝つためには必要だということを学びました。
大迫選手の日本記録更新により代表設定タイムも短縮され、他の選手にかなりのプレッシャーを与える形となりました。
ラストチャンスのびわ湖毎日マラソン
そして今日、男子マラソンは五輪代表選考最終レースのびわ湖毎日マラソンが行われました。
雨が降り、厳しい寒さの難しいコンディションの中、日本人トップの4位に入ったのは作田直也選手(JR東日本)。
記録は2時間8分59秒でした。
様々な報道やメディアでは日本記録には届かなかったということがどうしてもクローズアップされてしまっていますが、2時間8分59秒という自身の記録も大きく更新する好タイムで見事な走りだったと思います。
一方、名古屋では
名古屋ウィメンズマラソンでは女子マラソン代表を賭けて熾烈な争いが繰り広げられていました。
代表内定には1月の大阪国際女子マラソンで松田瑞生選手がマークした2時間21分47秒を切ることが条件。
雨の中でしたが非常に良いペースでレースが進みました。
30kmを過ぎて一山麻緒選手(ワコール)がペースを上げると日本選手が遅れていき、さらには海外の選手も置き去りとし独走状態でなんと2時間20分29秒という日本歴代4位のタイムで優勝しました。
一山選手は他の日本人選手や海外の選手に比べて、とてもフォームが安定しているという印象を持ちました。
腕をしっかり振り、きれいな足の接地のスピードが出せるフォームで最後まで安定して走りきることができるのはすごいと思います。
女子マラソンの日本記録は長く破られていないので、今後とても期待の選手ですね。
最後の一枠は
昨年夏のMGCが終了してから、残り一枠を多くの選手が競い合い、ついに決着しました。
男子マラソン代表最後の一枠は東京マラソンで日本記録を更新した大迫傑選手に決定しました。
本当に日本のエースの走りを見せてくれましたね。とても感動しました。
そして女子マラソン代表の最後の一枠は今日の名古屋ウィメンズマラソンで日本歴代4位の快走を見せた一山麻緒選手です。
まだ若い選手ですので、まだまだ今後の飛躍が期待されます。本当に興奮しました。
ということで東京五輪マラソン代表全選手が出揃いました。
今後の日本長距離界
今回から導入されたMGCシリーズという代表選考システム。
そして代表になるには日本記録を更新しなければいけないという設定は選手にとってはやはり大きな目標だったと思います。
いろんな段階の選手がいる中で、MGCシリーズのレースに出場する選手はどうしても日本記録を期待され、それを目指さなければ五輪には出れないという状況で、各選手は全力を尽くしたと思います。
大迫選手や一山選手の記録はやはりすごいですし、そこには及ばなかったものの、それでも多くの選手が代表に選ばれてもおかしくないような好記録を出しています。
どこを目標とするかは各選手それぞれだと思いますが、少なからず日本記録というものを意識するようになって、そして代表争いという競争の中で間違いなく日本長距離界のレベルは上がったと思います。
ここまで培ったマラソン熱を冷まさずに、またマラソンに限らずトラックで戦う選手もいるので、長距離界全体がさらに盛り上がっていけたらいいなと思います。
五輪は東京の次もあります。若い世代も含めて、これからもどんなレースを見せてくれるのか、そしてレベルアップした日本のランナーたちが世界で戦っている姿を見るのが楽しみです。