見出し画像

アレをアレしたやつ保存委員会

ある晩の食卓にて、夫との会話。

「小さい頃、お家のごはんで何が好きだった?」

ふたりの口をついて出るのは、創意工夫で発明された名もなきおかずばかりだった。ソーセージ入りのバター味のご飯、白菜と卵を煮た透明のやつ、豚とじゃがいものやつ、ほうれんそうにマヨネーズと醤油のやつ。記憶に残っているのは「アレをアレしたやつ」なのだ。

たぶん本当の「家庭の味」には名前がないのではないか?

インターネットがない時代、本や雑誌のレシピを参考に、子供の好みに合わせてアジャストされていったであろう、名もなきおかずたち。尊く愛しい本当の家庭の味。名前がないからこそ、今「アレをアレしたやつ」は絶滅の危機に瀕しているように思う。

夫が危機感を覚えたのは、久しぶりに実家に帰った時のことだったという。慣れ親しんだ家庭の味が、白ごはん.comのレシピに置き換わっていたのだ。言うまでもないことだが、白ごはん.comは本当に素晴らしい。古くからある和の家庭おかずの作り方を、初心者にもわかりやすい手順の解説付きで、高クオリティの写真とともに無料公開されている。そして作ってみると、今までの作り方はなんだったのか?というくらいマジで美味しい。いつも大変お世話になっております。

そんな風に、インターネットに無料公開される数々のレシピがあまりにも優れているからこそ、名もなきおかずは生きる場所を奪われてしまった。これは良し悪しではなく、自然淘汰の話だ。美味しいものが広くシェアされていくことは、基本的には良いことだと思うし。

それに名前がないものは検索できないのだ。「アレをアレしたやつ」はSEOが弱すぎる。材料名でand検索すると、出てくるのは名前のついた優れたおかず達。名もなきおかずは、インターネットで生き残る術がない。

それでも食卓には名もなきおかずの居場所があってほしい、と思う。メインのおかずは美味しくて有名なレシピを検索してつくろう。でも副菜には、冷蔵庫にあるアレと、昨日のアレの残りをアレしてみよう。そうやってアレをアレしたやつを保存していきたいと思うのだ。

・ ・ ・

夫のご家庭の味から、名もなきおかずをここに保存する。我が家では「豚肉とじゃがいものやつ」と呼ばれている。

材料
・豚肉かたまり
・じゃがいも
・にんにく
・バター
・お好きなハーブ
・塩胡椒

画像1

豚肉はこのくらいの幅に切る。

画像2

じゃがいもも同じくらいに。

画像3

にんにくはつぶす。

画像4

それらをこういう感じに並べる。鍋は重い方が良い(気がする)。

画像5

バターと塩胡椒、お好きなハーブ(今回はローズマリー、タイム、ローリエ。袋入りのブーケガルニなどでも)を入れたら、蓋をして蒸し焼き。
弱火で15〜20分ほどして、じゃがいもに火が通れば完成。

画像6

焦げた。しかし問題ありません、美味しいので。

これが本当にほんっとうに美味しいのだ。名前がないのが信じられないくらいに。そういやじゃがいもあるな〜、というタイミングがあったら試してほしい。そしてもし良ければ、あなたのご家庭のアレをアレしたやつも、ぜひ教えてください。