李禹煥さんの虜になった日の話。
なんとなーく気が付いている人もいるかもなのですが、わたし美術館が好きなんです!よく行く美術館は豊田市美術館。年間パスポートを持っているので、ふらふら〜っと何も考えずに1人の時間が欲しいときや、仕事終わりなんかに行ったりしています。今年の美術館はじめも豊田市美術館でした!
この時はゲルハルト・リヒター展がやっていました。豊田市美術館は谷口吉生さんが設計した建物で、坂道を登ると水の音が聞こえ、迫力のあるこの建物が見えてきます。わたしは毎回この坂道を登った先で立ち止まる。それは一瞬にして空気が変わり、違う空間にワープしたような気がして、建物だけでなく空にも近付いているような、そんな感覚にさせられるからなんです。
どの角度からみても美しい豊田市美術館。時間が止まっていると思えるくらい時の流れがゆっくりで、建物が静かに息をして、この場所で生きている気がする。そのせいか、どの美術館よりも展示されている空間や作品と向き合える不思議な場所です。
あと豊田市美術館とは生まれ年が同じなので、どこか親近感があったりもします。
と、豊田市美術館の話はおいといて... 実は先日「兵庫県立美術館」に行ってきたので今日はその話をします。兵庫県立美術館は2002年に開館した美術館で、安藤忠雄さんが設計した建物です。( 昨年で20周年だったみたい!めでたい!)
いやあ、格好良すぎる…さすが安藤忠雄さん…あと個人的なあれかもなんですが、安藤忠雄さんの建築物に足を踏み入れると必ず迷子になるんですよね! 行き止まりだったり、どの階段を登ったか分からなくなったり、そうこうしているうちに体力を奪われて、疲労を感じてくると安藤忠雄さんの建築の世界にやっと入れた気がしてうれしい気持ちになる。
今回、兵庫県立美術館に行ったのは「李禹煥(リ・ウファン)」さんの展示を見たかったからです。李禹煥さんは日本を拠点に活動されている韓国の方で "もの派" を代表する美術家さん。香川県にある直島に李禹煥さんの美術館があります。(この李禹煥美術館も安藤忠雄さんが設計しています!)
李禹煥さんについては、美術館のホームページをよければご覧ください。
李さんは子ども頃から絵や文字を習い、音楽や文学などにも触れて、色んなことを楽しんで学んでいる素敵な人です。韓国で美術大学に進学し、夏休みに日本へ来日したことをきっかけに、日本に残って大学で日本語や哲学について勉強されています。演劇などもされていたんだとか…!表現することに向かい始めたのは大学を卒業してからで、高松次郎さんや、関根伸夫さんらの錯覚を用いた作品に影響を受けて、こうした立体的な作品を作るようになったのだそう。
ちなみに"もの派" とは何か?
今回の展示を見に行くまで、わたしも" もの派 " と呼ばれる人の存在を知りませんでした。そこで自分なりに調べ、また展示作品から感じたことも含めて簡単に言葉にしたのがこれです。
"もの派" とは
石や木材、紙、鉄などの自然物や人工物をほとんど手を加えることなく、そのままに組み合わせた作品をつくる人のこと。物と物、物と人、物と空間などが互いにどのような影響を与え合っており、どのような関係であるかを作品に語らせている。見ていると重さや温かさなんかが伝わり、不思議とそこから何かのエネルギーを感じさせてくれる。
何とな〜く伝わったでしょうか…?
きっと、わたしのまとめた言葉から想像するよりも、実物をみた方が伝わると思うので、是非写真をご覧下さい。
じーっと見ていると身体が重く感じたり、じんわりと温かくなったり、壊さないように慎重になったり、不思議な感じがしてきませんか?
場所によって、身体の感覚や空気がガラッと変わるのが面白かったです。素材が実は似ていたり、強いや弱いみたいな正反対何かだったり、置かれてる物との位置関係やバランスを感じて考えるのも楽しかった。
こちらは李さんが世界旅行で色々な物をみて刺激を受けたときに、もう一度絵画をやってみよう!となって作成した作品だそうです。点や線を描くときは失敗が許されないため、10何時間も休まずに描き続けることもあったんだとか… そのうちに李さんは描こうとすると、拒否反応で手が震えてしまい、点や線が描けなくなったそうです。しかし、その反応によってできた作品があります。
李さんは手が滑って書いてしまった線がいきいきとしてることを気が付き、それから点と点、線と線の間にある空間を意識するようになり、厳しい規則から離れるようになりました。次第に余白の部分が面白くなり、少しずつ描く部分が少なくなっていたのだとか。
李さんの作品をみるたびに起こる身体の反応や、何よりも李さん自身を知りながら作品をまわるのがとても楽しく、あっという間に時間が過ぎてしまいました。中谷美紀さんの無料音声ガイダンスも素晴らしかったです。
あの有名な螺旋階段と李さん作品がぴたっと合ってるんです。この空間が本当に良すぎて、息をすうっと飲み込んで目を瞑ってしばらくここにいました…建物と作品の関係やバランスが良いとはこういうことなのだと最後の最後で学んだ気がします。
暗くて少しだけ怖さみたいなのを感じるこの螺旋階段が、鏡を置いてるためか、いつもより明るく感じて、まだここにいたい感じ、直島の美術館に尚更行ってみたくなりました。もう完全に李禹煥さんの虜ですね…!
「自己は有限でも、外部との関係で無限があらわれる。表現は無限の次元の開示である。」という李さん言葉を聞いて、わたしも何かを表現したいなと思いました。
いつか釜山やフランスにある李さんの美術館にも行けたらいいな。あとはこれくらい大きな石を自分も持ち帰れる日が来ますように!
それでは、また
もーにんぐ、か
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