津田梅子の動画配信が始まりました
先々月、拙作『梅と水仙』の文庫版が発売になり、いよいよ彼女の顔の新5千円札が発行されたので、本の版元であるPHP研究所が、動画を配信してくれました。
「5分でわかる」という歴史のシリーズが好評だということで、同じ形式で依頼を頂いたのですが、最初、ちょっと戸惑いました。5分という短時間で話せることは限られているし、だからといってウィキペディアに載っているようなことを話しても意味がないし。
それで「なぜ、わずか6歳で留学することになったのか」ということに、前半の重点を置いて話してみました。留学させた開拓使の事情とか。後半では、梅子が帰国してからの苦労に触れました。
↓こちらで見ていただければ幸いです。
新札の顔といえば、1万円の渋沢栄一が関わる作品も、拙作の中に2冊あります。ひとつは『繭と絆 富岡製糸場物語』で、富岡製糸場の工女第一号、尾高勇(おだかゆう)が主人公。富岡製糸場は渋沢栄一が創った官営工場で、彼の従兄弟だった尾高惇忠が初代場長を務めました。尾高惇忠は工女を募集した際に、とても集まりが悪かったために、まず自分の娘である勇を工女にしたのです。つまり勇にとって渋沢栄一は、ごく身近な親戚のおじさんでした。
もう1冊は『帝国ホテル建築物語』です。帝国ホテルも渋沢栄一が最初の経営者のひとりでした。ニューヨーク5番街の東洋系古美術商で働いていた林愛作を、帝国ホテルの支配人に向かえるべく、穏やかに口説く場面に登場します。
『繭と絆』を書く前に、東京北区の飛鳥山にある渋沢栄一記念館を、初めて訪れたのですが、ちょうどスーツ姿の若い人たちが、団体で見学に来ていました。どうやら渋沢栄一が創設した一流企業の新入社員らしく、創業者を知るための研修みたいでした。
渋沢栄一は、ものすごくたくさんの会社を作ったから、こういう人は大勢いるんだろうなと思いました。だから大河ドラマで「晴天を衝け」が始まったときとか、お札の顔になることが決まったときには、きっと彼らも誇らしかったことでしょう。
『繭と絆』は文春文庫で、『帝国ホテル建築物語』はPHP文庫。引き続きPHP文庫の『梅と水仙』も、よろしく!