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サンタの洗礼

クリスマスが近づくと、どの現場も準備で慌ただしくなる。

我が社の倉庫も例外ではなく、先日サンタ関連の資材が到着するということでK先輩一人ではさすがに大変だと思い、僕も手伝いに行くことにした。

事前に先輩から「大した量じゃないよ」と聞いていたので、
「まあ、一時間もあれば終わるだろう」
と軽い気持ちで倉庫へ向かった。

ところが、資材の到着を待っていると運送業者から電話が入った。

「倉庫の前までトラックで行けません。道が細すぎます。」

えっ?思わず先輩と顔を見合わせる。そんな馬鹿な…大した物量じゃないって聞いてたのに。

急いで現場に向かうと、想像をはるかに超えた光景が待っていた。
10トントラックが堂々と停まっており、中にはサンタ関連の資材がぎっしり詰まった160ケースが。

僕たちは言葉を失った。

「…嘘でしょ?」

しかし、運ばないわけにはいかない。
先輩がトラックを倉庫にできるだけ近づけられるよう誘導し、
いよいよ搬入作業がスタート。

トラックから倉庫までは約30メートルの距離。
往復60メートルを、ひたすらカゴ車や台車を駆使して運び続ける。
最初はテンポ良く進めていたものの、山積みのケースは一向に減らない。

次第に腕は疲れ果て、カゴ車を押すのもやっと。
冷たい風に吹かれながら、汗だけが止まらない。
僕も先輩も、心が折れかけていた。

最終的に作業は3時間に及んだ。

あの「大した量じゃない」という言葉は一体なんだったのか…

と恨めしく思いながらも、
すべての資材を無事倉庫に収めることができたとき、
不思議と達成感があった。
苦労した分、満足感もひとしおだったのだ。

ふと、「サンタだけに、苦労する(クロース)ってか…」と、
どうでもいい駄洒落が頭をよぎる。

そんなことを考えながら、疲れ切った体を引きずって帰路についた。

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